出雲神話 (講談社現代新書 444)

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061158443

作品紹介・あらすじ

国引き、八岐大蛇、国譲りなど日本神話のなかで出雲の果たす役割はなぜか大きい。大和朝廷にとって幽界の地出雲とは、どのような意味を持っていたのか。本書は、記紀、風土記、神賀詞などの文献資料と歴史学、神話学の蓄積を縦横に駆使しながら、巫覡祭祀説によって出雲神話の実像を明らかにする。スサノオ、オオクニヌシ、スクナヒコナなどなじみぶかい神々の世界をとおして日本神話に新たな視点と生命を与えた。

2つの出雲神話の食い違い――『出雲国風土記』の多くの伝承の中で、記紀に共通もしくは近似の伝承があるかというと、ほとんど見出せない。また逆の場合もそうである。また記紀と共通して登場する神格にも、同じ物語は、ひとつも見あたらない。これは不思議なことである。簸の川の上流のできごととされるスサノオの有名な八岐大蛇の話も、『風土記』の大原郡斐伊郷の条を見ても、触れられていない。『古事記』のオオナムチの生い立ちの話にある、八十神によるさまざまな迫害や、根の国での試練の話も、『風土記』にはない。神々の神統譜も、どうやら記紀のそれとはかなり異なったかたちで考えられていたらしい。――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 『古事記』『日本書紀』『風土記』などにえがかれた出雲神話について、歴史学の観点を中心としつつ、多角的な解釈をおこなっている本です。

    記紀神話のなかの出雲にかんする物語と、『出雲国風土記』におけるそれとのあいだに大きなちがいが存在することから、一方では、出雲神話をヤマト王権の支配者たちによる創作とみなす立場があり、他方では民俗学的な観点から事実が語られているとみなす立場があります。著者はこれらの説を手際よくまとめたうえで、出雲神話には「虚像」と「実像」の両方が含まれており、日本古代の政治的・社会的状況を踏まえ、とりわけヤマト王権と出雲国造一族との交渉関係を解明することで、出雲神話のなりたちについての正しい理解に到達することができると主張しています。

    1976年に刊行された古い本ですが、この分野における代表的な学説がわかりやすく紹介されているので、一通りの知識を得るための入門書としては有益な内容であるように感じました。

  • 八雲立つ、根の国、とも称された出雲は神話のふるさとである。
    その出雲ゆかりのスサノオ、オオナムチといった「神」たちがどこから来て、いかに神となりしか、が論考される。

    筆者は斯界では権威ある人のようだ。初版1976年と古い本ではあるけど、それまでの研究がここに評価集成されていて、出雲神話に関しては定本と言っていい内容のように思われる。

    が、多少の考古学的・民俗学的な傍証や歴年の学問の成果はあっても、結局「原典」は記紀と風土記くらいしか残っていなくて、その上に立って推論を重ねているだけだし、そもそもその原典が現代に伝わるまでに、言葉や価値観の遷移も含めて相当な紆余曲折があることは否定できないだろう。なので、論考が正しいとは限らず(なにが正しいかもわからないし、正しくなければいけないわけでもないが)、神話はどこまで行っても現代の妄想の域を出ないのである。

    もちろん、目覚ましい人や事績が語り継がれてやがて「神」になるプロセスや、人間には「神」が必要であり、支配者には統治や権威づけのためにまた「神」が求められるという古今東西変わらないと思われる「原論」抽出には意味があるのであって、書物の価値の高さは明かである。

  • 出雲神話の謎
    二つの出雲神話
    出雲国造家の台頭と自家の売りこみ
    スサノオの神話
    オオムナチの神話
    国譲り神話と諸氏族
    出雲土着の神々

    著者:松前健(1922-2002、韓国木浦市、宗教学者)

  • 1976年刊行。著者は立命館大学教授。

     日本古代国家成立において、欠くことのできない出雲の存在。そしてそれが文献として現れる出雲の神話。その神話を非常に丁寧に解読した一書。

  • 訳がわからない個所もあったけども。
    「スサノヲのヤマタノオロチ伝説はアンドロメダ型の説話の他の説話の影響を受けて生まれた」とするのではなく「既に『怪物を退治し、いけにえにされていた乙女と結婚』の形が出来上がっていた。それが、後から来たアンドロメダ型の説話と結びついただけ」とする説は斬新だった。
    しかし、初めて見たということは、↑はあまり支持されていない説なのかしらね。

  • ○ 出雲神話には虚像と実像とがある。前者は記紀における出雲を舞台とする説話群であり、後者は「出雲国風土記」に記された出雲の風土伝承すなわち原出雲神話である。
    ○ 虚像としての出雲神話は、出雲以外の多くの地の国つ神をもこの神系に含む、全国的なスケールのものである。
    また、高天原の天つ神に対立する葦原の国の国つ神の世界という理念的産物である。
    ○ 実像としての原出雲神話は、素朴な風土伝承で、そうした理念は見られない。
    ○ 虚像は、大和朝廷側の理念・構想に基づくものであるが、その成立事情については、諸説があり、どれも多少の真実性を含むが、とくに「ふげき」信仰が、もっとも有力、かつ効果的に説明である。
    ○ スサノオにも、虚像と実像とがある。虚像が高天原に反抗する巨魔的な役割を持ち、実像は出雲や紀伊などの民間の豊饒神・文化神である。前者は、7,8世紀の休廷側の創作であり、後者が古い原像である。
    ○ スサノオの名は「出雲国風土記」に見えるように、地名のスサから出ているが、その本来の原郷は、出雲のスサではなく、紀伊のスサである。この神は、もと紀伊の漁民の奉ずる、海のかなたの根の国から船で来臨する豊饒神であった。

  • カタカナばっかで読みにくいなあ。

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著者プロフィール

1922~2002。國學院大學文学部卒業、同大学大学院修士課程修了。天理大学、立命館大学、奈良大学等で教授職を歴任。専攻は神話学、宗教学。文学博士。著書に『日本神話の新研究』『古代伝承と宮廷祭祀』『日本神話の謎』『大和国家と神話伝承』『古代信仰と神話文学』等のほか、「松前健著作集」(12巻・別巻1)がある。

「2016年 『日本の神々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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