風の歌を聴け

  • 講談社 (1979年7月23日発売)
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本 ・本 (201ページ) / ISBN・EAN: 9784061163676

作品紹介・あらすじ

群像新人文学賞受賞
1970年夏、あの日の風は、ものうく、ほろ苦く通りすぎていった。僕たちの夢は、もう戻りはしない──。青春の生のかけらを、乾いた都会的な感覚で捉えた、新鋭、爽やかなデビュー!

この新人の作品は、近来の収穫である。これまでわが国の若者の文学では、「20歳(とか、17歳)の周囲」というような作品がたびたび書かれてきたが、そのようなものとして読んでみれば、出色である。乾いた軽快な感じの底に、内面に向ける眼があり、主人公はそういう眼をすぐに外にむけてノンシャランな態度を取ってみせる。そこのところを厭味にならずに伝えているのは、したたかな芸である。しかし、ただ芸だけではなく、そこには作者の芯のある人間性も加わってきているようにおもえる。そこを私は評価する。──吉行淳之介

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹のデビュー作ですが、最初から春樹の世界観が出来上がっていて、とてもオシャレで、とてもポップでした。最初のページから春樹のオシャレな表現に呑まれました。

  • 読書会のため再読。

    瑞々しい!
    孤独と喪失、仏文学の直子的な女の子、戦争、学生運動からの理想と現実とか、そういうものを書き続けているんだな、春樹さんは。
    と、『街とその不確かな壁』の1章を思い出しながらあらためて感じました。作家ってそういうものでは?きっと書きたいことは一貫しているはず。

    でも、自分もずいぶんと大人になり、
    おかげで、鼠も僕も小指のない女の子のことも、とにかく愛おしく感じ、今回の感想はただ

    「僕は・君たちが・好きだ。」

    この言葉に尽きます

  • 前回に引き続き、村上春樹に長編作。
    相変わらず秀逸なワードチョイスがあったので紹介していく。

    もちろん、あらゆるものから何かを学び取ろうとする姿勢を持ち続ける限り、
    年老いることはそれほどの苦痛ではない。
    これは一般論だ。
    この文章は、浅井リョウの『生殖記』風に言えば、とてもしっくりきた。
    よく耳にする言葉として、
    「大人になりたくない」と言ったものや、
    「ずっと子供でいたい」と言ったものが挙げられるが、
    僕は割と大人になりたかったし、年老いることが苦痛ではなかった。

    といっても特出した理由はなくただ漠然と思っていたのだが、
    この文章が心の霧を晴らすように、ジグゾーパズルの最後のピースがはまるかのように、僕の心にはただしっくりときたのだ。
    この考え方を、はっきりと一般論だ。と言い切るところなんかは、
    のちのち出てくる

    誰もが知っていることを小説に書いて、一体なんの意味がある?
    にもつながってくるのかなとも思った。

    また

    放っておいても人は死ぬし、女と寝る。
    そういうものだ。
    という表現も僕は気に入った。
    というのも、つい最近まで僕は性欲=悪のような考え方をしていたからだ。
    よーく考えてみれば、三代欲求のうちのひとつを
    否定するのも無理があるなと思う。
    実際多くの人は自分の性欲に対して正直に生きているし、
    それを羨ましいとも思うこともしばしばあった。

    そのことを言語化してくれる村上春樹さんのワードチョイスは、
    本当に僕の心の中を鮮明に映し出してくれて、
    言語化することの大切さを教えてくれた。

    また、後々出てくる

    鼠の小説には優れた点が二つある。まずセックス・シーンの無いことと、それから一人も人が死なないことだ。
    という部分にもつながっていく。
    自然の摂理である死とセックスをあえて自分の小説には入れずに、
    自分の存在意義を小説という表現で生み出している。

    そしてきわめつけはこれ。

    みんな同じさ。
    何かを持っているやつはいつか失くすんじゃないかと心配しているし、
    何も持っていないやつは永遠に何も持てないんじゃないかと心配している。
    みんな同じさ。
    だから早くそれに気づいた人間が
    ほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ。
    振りをするだけでもいい。
    そうだろ?
    強い人間なんてどこにも居やしないさ。
    強い振りのできる人間がいるだけさ。
    本当に胸に響く一言だと思った。
    それこそ最近彼氏と別れた僕にとっては思い当たる節があった。
    というのも、彼氏が欲しいという一面と、
    彼氏がいない程度でこんなに弱ってしまう自分の情けなさ、
    そして自分ひとりでも人生が楽しめるようになりたい
    (強くなろうという努力、もしくは強がり)という気持ちが
    そのまま反映されたような文章に出会えてよかったなと思った。

    そして自分と同じ悩みをもつ人が、
    自分が思っている以上にいると知れることだけで助けになるし、
    その悩みに対する解決策を漠然とでも与えてくれるのは
    人生という暗闇に光を差し出してくれるようで、
    この作品も前回同様自分の人生に新たな概念、考え方を与えてくれた。

    とはいうものの、この作品の内容を理解するのは本当に難しく、
    一周しただけではただ漠然といい本だな〜としか思えなかった。
    一周後に解説をしている方のnoteを読んでみると、
    全く自分では気づけなかった出来事や着眼点がみるみる出てきて、
    これは2週目を読まなくてはいけないなという本能に従い、
    もう一周してきます。↓

    2周目読破してきました。
    ストーリーがすらすらと入ってきて気持ち良い!

    鼠と4本指の女の子との関係が明白になったことにより、
    いろいろな行動の原因、理由が明らかになり、彼らが考えていることもわかった。

    「なぜ止めた?」
    「さあね、うんざりしたからだろう?
    でもね、俺は俺なりに頑張ったよ。
    自分でも信じられないくらいにさ。
    自分と同じくらいに他人のことも考えたし、おかげでお巡りにも殴られた。」
    今となっては鼠のこの台詞にも納得がいくし、
    あまりにもこの鼠の気持ちに深く同情してしまう。

    「頭の上をね、いつも悪い風が吹いているのよ。」
    「風向きも変わるさ。」
    「本当にそう思う?」
    「いつかね。」
    そしてこのセリフがこの物語の全てを握っているのかなとも思った。
    途中で出てきた、「僕」の飛行機の考え方のように、
    我々自身では運命を変えることはできず、その場その場における風、
    すなわち人生の流れに従って生きていくしかないのだと。



    むっちゃ深い。
    初見じゃ見抜けないよ。村上さんすごい。

    だいぶ時代に逆行していますが、ハルキスト、名乗ります。

  • 完全に理解しきることは難しいけど、ほわっと涙腺が刺激されるような感覚になった。
    思っていることの半分しか喋らないようにしたら、数年後、本当に思っていることの半分しか喋らない人間になっていた、という一文がよかった。
    8月に読むのがちょうどいい。

  • 出来事の情景が事細かく書かれていて、シーンを想像するのに疲れるくらいだった。
    変わった登場人物たちに、終始どこかひっかかりながらも惹きつけられ、不思議な気持ちにさせられた。

    ラジオを聞いた後に同級生の所在を探すシーンで、
    『最後の一人は何故だかはわからないが僕に向かって、お前となんかは口も聞きたくない、と言って電話を切った。』
    というところが、すごく人となりを表している感じがして面白くて好きだった。

  • 鼠との物語はここから始まったのか。
    わたしは何も知らず、羊をめぐる冒険から読み始めていた。

  • 村上春樹デビュー作。僕と鼠と過ぎ去る夏。
    世界観と僕や鼠の言葉が好きです。
    夏の淀んだ空気や草の匂い、捉えることはできないけれどそこにある。この物語も気持ちや言葉で捉えることはできないけれど確かにある。

    次は長編を読みたいです。

  • ビールとピーナッツとつまらない夏が揃った時に読んで欲しい

  • 全体を通しての理解には苦しんだが、ところどころに言葉の重さや村上春樹らしさが垣間見ることができた。

  • すごくテンポよく読めちゃったんだけど考察とか読んでたらなんだかすごい作品を読んだ気がしてきた

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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