- 本 ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061176072
感想・レビュー・書評
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「新」というが1963年発刊。ブルーバックス創刊の年にあたり、通し番号もB7、つまりブルーバックス7冊目である。シリーズ最初の数学関連本だったと思われる。
最初のはしがきに
世の中には、数字をみただけでジンマシンができるというくらい、数学の嫌いな人が少なくない。
とあって「え、そうなの?」と面食らう。今だと(たとえ苦手でも)そんな風に激しく嫌う人はあまりいないような気がするのだが、そうでもないのかな。
それはともかく、そうなった理由はというと、著者によれば、当時の教育がよろしくなかったからで、やたらとややこしい計算をさせたり、暗算能力を過剰に要求したり、いわゆる受験テクニックを要するものが多かったりしたためだという。受験というのはある意味、ふるい落とすためのものだから、無暗と難しい問題を作って、できない人を排除するのも1つの手なのではあろうが、それでは数学嫌いの人が増えるのも当たり前である。
だが、数学は新時代にはますます必要となるものであり、そもそも数学の本質は受験テクニック的なところにはない。そんなことで数学嫌いが量産されてはもったいない。
なぜ今数学が必要であるのか、そして学校の数学で躓いた人は何を学べばよいのかを解き明かしていくのが本書の主題である。
著者は、数学教育の改善に尽力し、タイルを導入した位取りなど、「水道方式」と呼ばれる指導法を提唱したことで知られる。水道方式とは、一般的なものをまずみっちり学び、そこから特殊なものへと派生して学んでいくもので、この学び方を水源地から枝分かれしつつ先端部分へと流れる様にたとえたものである。
数学は、三角形の内角の和や加減乗除の法則などの一般性を持ち、さまざまなものを記号化することが可能である。科学的手法の基本である分析や統合にも向いている。
最初はやさしい法則で始まる。それを徐々に積み重ねていって、より一般的なもの、より多くのものを記述するものと進んでいく。この積み重ねが時には曲者で、簡単だからとバカにしているとついていけなくなることもある。
著者は受験に関係なく数学を学びたいと思う人に3つの分野を勧める。
・記号論理学
・線形代数(ベクトルと行列)
・微分積分
である。
読んだ感じとしては、記号論理は集合や順列並び替えの話で、日常の例もあてはめやすく、わかりやすい。ベクトルと行列の話は、最初はふんふんと呼んでいたのだが、交代数の話が出てきたあたりから難しくなってきた。ただ繰り返し読んで考えていると、前にわからなかったところがわかるようになってきたりで、やはりじっくり考えることが大切なのだなとは思った。微分積分はわかりやすく解説されている。
というところで、前置き部分で、思いがけず高度成長期の数学教育の問題点について知り、残りは数学の3つのトピックについて学ぶという体裁である。
巻末に参考文献も挙げられており、いずれもよい本なのだろうなと思いつつ、現代読むのに非常に適しているのかが今一つよくわからない。数学本はまた読んでみたいので、次に何を読むかはまた検討して決めたいと思っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半の「数学はこわくない」「記号論理」まではわかりやすかったが、ベクトルと行列の後半からはややわかりにくかった。
記号論理は樹状図で説明できることは新たな発見。 -
数学の成り立ちから現在に至までの歴史をその様々な公式とともに綴った本。
線形台数の説明が分かりやすかった。
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