記号とはなにか: 高度情報化社会を生きるために (ブルーバックス 591)

  • 講談社 (1985年1月1日発売)
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本 ・本 (201ページ) / ISBN・EAN: 9784061181915

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  • 創造とは、新しい価値を生み出すこと。創造が新しい価値を生み出すのであれば、その思考過程においては、何らかの飛躍的思考、不連続的思考が介在しなければならない。既知のものの延長上に立った連続的思考だけでは創造できない。実際の思考の過程には、準備期→あたため期→啓示期→検証期という4つのステップがある。この中で不連続的思考が起こるのは啓示期においてである。ここで、インスピレーション、ひらめき、直感などの働きによって、突然に問題解決の糸口が見出される。創造の本質はこの啓示期にあるにしても、その前後の準備期、あたため期、検証期といった、連続的思考、論理的思考の積み重ねの時期は必要である。
    創造は、発散的思考と収束的思考の有機的な結合から生まれる。創造的思考の源泉は、意識系ではなく前意識系にある。意識系はたぶんに言語系であり、そこでの思考は時間的、論理的、デジタル的、分析的である。さらに付け加えれば、字義的であり、言語のコードが確定されているので一義的である。一方、前意識系では言語の支配はずっと弱まり、思考作用は、連想、類比、隠喩、イメージ化などが主体になる。
    創造的思考の本質は、前意識系による概念の新しい結合方法にあると考えられる。前意識系の思考が表出されやすいのは、論理的な思考をやりぬいたあとのリラックスした状態や、意識が眠り込んだ夢のなかとかである。
    日本語があいまいであれば、日本語を内言として使った思考も当然あいまいになる。このあいまいさは、非論理的であるにしても創造的思考にとってマイナス要因ばかりとは言えない。あいまいさは「多義的」であることを意味するし、論理的な不明確さを小城ないための直感をはぐくむことになる。日本人は、感覚的。日本人は敏感で、独特の美意識を持ち、「物のあわれ」や「いき」を理解する。これは、論理的に構想を立てたり、対象を分析する精神ではなく、対象から触発され、対象を観照する精神である。対象をこのように感覚的、感情的にとらえる精神は、創造的思考と無縁ではない。どうしても、物事の今ある姿にとらわれて、近視眼的になり、その場主義、現実主義になりがちである。この辺に、日本の学問、とりわけ科学技術の分野で原理原則面からの独創的な成果が少なかった理由がある。ヒントからぱっと思いつくというひらめきも大切であるが、これだけでは、根本的に新しい創造はできない。

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著者プロフィール

2015年10月現在一般財団法人社会開発研究センター理事

「2015年 『農業への企業参入 新たな挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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