モモちゃんとアカネちゃんの本(3)モモちゃんとアカネちゃん (児童文学創作シリーズ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061192331

作品紹介・あらすじ

シリーズ第3作。アカネちゃんという妹ができて、1年生になったモモちゃんは、おねえさんぶりを発揮しようと大はりきり。そんな、にぎやかで楽しいモモちゃんの家に、パパとママのわかれというかなしい事件がおこります。

感想・レビュー・書評

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  • 小学生になるモモちゃんと、赤ちゃんのアカネちゃんの成長を見つめたおはなし。

    アカネちゃんの最初のお友達は、ママが編んだ靴下の双子、タッタちゃんとタアタちゃん。アカネちゃんはママのお腹の中でママが靴下を編んでいるのを知っていたので、生まれる前から大事なお友達です。
    アカネちゃんにはずっとこのタッタちゃんとタアタちゃんが一緒にいて、悲しいときには楽しませてくれるし、まだ歩けない赤ちゃんのアカネちゃんにお外のことを教えてくれたりします。

    モモちゃんもどんどん大きくなって小学生になりました。
    お姉さんなんだからと新しい髪型にしたり、おとこのこたちとおんなのこたちで”けっとう”したり、妹のアカネちゃんのよい先生になろうとしたり、まっすぐすくすく育っています。

    クロネコのプーも、アカネちゃんのよい先生になろうとしています。
    プーのおよめさんの白猫のジャムは別のお家で飼われていますが、プーにとってはモモちゃんたちがいる家も、ジャムがいる家も、両方自分のお家です。

    でもパパとママは”もっか けんかちゅう”です。
    はたらくお母さんのママは、モモちゃんとアカネちゃんを育て、夜中までお仕事をして、体の具合もよくありません。ついに目も悪くなってしまったのか、パパの姿が見えなくなりました。夜パパが家に帰ってきた足音がするのでドアを開けるけれど、そこにはパパの靴だけがあってパパがいないんです。
    でもママは、パパが帰ってくることもあるし、だからパパのためにご飯やお風呂を用意する、それはパパのためでもあるし、自分が気が済むからだって言います。
    そんなママのところには死神がくるようになりました。夜ベッドでママの体に乗って、ママを連れて行こうとするんです。ママはパパに助けを求めますが、パパは靴だけだから助けてくれません。ママが死神に連れて行かれなかったのは、アカネちゃんの声が聞こえたからです。
    ママは森の占いおばあさんのところに行きました。おばあさんが見せたのは植木鉢で枯れかけている二本の木です。植木鉢から出して地面に植えたら、一本の木はすくすく育ちました。でももう一本の木はシャキっとして歩いていってしまったのです、その肩に金色のヤドリギを乗せて。
    おばあさんは言います。「おまえさんは育つ木、ご亭主は歩く木なんだよ。一緒に小さな植木鉢で絡まり合っては両方とも枯れてしまう」
    だからママは、どっちも枯れてはいけない、両方とも息ができるようにしなければ、って思うのでした。とっても寂しくて暗い夜のことでした。

    ===
    このモモちゃんアカネちゃんシリーズは「最初に離婚ということを書いた児童書」と言われているようです。
    実際の松谷みよ子さんと元ご主人(児童文学関係者で人形劇団座長の瀬川拓男さん)とのことが元になってはいるようですが、ただご主人の悪口ではなく、ご主人を「歩く木というのは悲しいもんだよ」とか「金のヤドリギを肩に乗せて誇らし気に歩く」などと、生き方や輝き方の違いだって書き方をしているところが凄いなと思います。

    「モモちゃんとアカネちゃん」ではパパとママのお別れのあと、ママとモモちゃんとアカネちゃんとプーがお引越しして、新しい学校に転校してゆきます。
    そして松谷さんは、自分自身の言い分だけでなく、モモちゃんやアカネちゃんやパパからの目線からも家族を書いてゆきます。

  • Twitterで「モモちゃんとアカネちゃんシリーズ3作目は、オトナになってから読むと怖い」と教えてもらい、
    1作目から読みはじめ、3作目まで
    たどりつきました。

    3作目の「モモちゃんとアカネちゃん」では小学生になったモモちゃんと
    妹のアカネちゃんのお話…だけかと
    思いきや、
    ママ中心のお話もおさめられています。

    特に「ママのところへ死に神がきたこと」「森のおばあさん」のお話は
    異色の童話です。

    子ども向けの童話のなかで
    ママのくるしみや悲しみ、すれ違いが
    こんなにも全面に書かれているお話は
    ないのではないでしょうか。

    「ママのところへ死に神がきたこと」で
    パパのくつだけを見て、
    途方にくれるママ。

    「森のおばあさん」で語られる
    ママとパパの木の現在。

    オトナになったわたしはママ寄りの気持ちに
    なってしまうので、
    とても悲しくなりました。

    このお話が、童話のなかにポンと
    入っている意味を、
    思わず考えてしまいます。

    子どもからみたこの2つのお話は
    どんな風に見えるのでしょう…。

    ちなみに小1の娘に感想を聞いたところ、 
    「ママのところに死に神がきたこと」と
    「森のおばあさん」の2話は
    「意味がよくわからなかったけど、
    ちょっと気持ち悪かった」
    と言っていました。

  •  離婚の話は松谷さんの実話をご自分の子供にも分かるようにと書いたらしく、子供の時読んでとっても衝撃を受けました。なんでこんなの子供の本に書くんだろう、って思ったっけ。

     双子の靴下はももちゃんの話かと思ったら、再読したらあかねちゃんの話だった。タッタちゃんとタアタちゃんの事も今でも時々思い出します。

     あと、もっか けんかちゅう、という話で、初めて目下という言葉を覚えました。

  • どうして親が離婚するのか。子供にとって知りたいことではあるけれど、書きにくいテーマということもあり、それが描かれた児童文学はそう無かったのではないでしょうか。モモちゃんシリーズにはそれが描かれています。
    また、お父さんが亡くなった際、いつも泣かないお姉ちゃんが大泣きする姿を見て、妹のアカネちゃんは、お姉ちゃんが強いわけではなく、我慢していたことに気付きます。
    親や兄弟など、「自分」以外のひとにも気持ちがある、ということを教えてくれた作品です。
    新版の、酒井駒子さんの表紙も素敵ですが、小さい頃読んだお人形版で。

  • 死神に取り憑かれたママ、靴だけ帰ってくるパパ、歩く木と育つ木。話が暗く悲しい分、比喩が多く使われている。小学生の頃はあまり理解できなかったが今ならよくわかる。

  • 深い…
    他の作家なら書き澱み、本来子供には理解しづらいであろう両親の離婚や別離を、子供が読んでもわかりやすくさらりとまとめていてすごい!!

    昔読んだときも印象深かったママが森のおばあさんの所へ行くお話も記憶のままで、
    そうそう、そうだったよね、頷きながらページを繰りました。
    幸せな事と辛いこと、どうにかなることとどうしようもないこと、
    いろんなことを織り込んで日々は紡がれてゆくんだなぁとほろ苦さも覚えつつ本を閉じました。

    児童書とは銘打ってますがむしろ親御さんたちに読んで貰いたい作品。
    もちろん挿絵もかわいいし、作品の風景を再現した人形とジオラマもすばらしいのでお子様にもぜひ読んで欲しい。

    名作のひとつに間違いなし!

  • 子供向けの本である。
    が、何度読み返しても全く賛同できない。

    初めて読んだのは小学校低学年。
    この本の、推奨年齢だ。
    しかし中学でも高校でも、読書感想文にこの作品を選んだ。
    大学の頃にはレポートの参考資料としても選んだ。
    とにかくそれほど、内容が濃い。

    モモちゃんという、若干空想癖のある女の子の日常を描いた
    ほのぼの小話集である。
    空想癖なんて小さな女の子なら誰しもある話だし
    これが子供向けのお話なら、別段変わった内容ではない。
    なんせ子供向けのお話では
    猫が百万回も生まれ変わったり
    子供が金魚を食べたり、空からブタが降ってきたりするらしいから。

    しかしそれらと違って本作が恐ろしいのは、
    モモちゃんの空想の裏側で
    大人たちのドロドロとした世界が同時進行している点だ。

    かつて子供向けの読み物で
    ここまでリアルに離婚問題を取り上げた作品があるだろうか。
    しかも、子供が読む際にはそれに気づかないような巧妙な手口で。

    児童文学というものの深さと作者の才能に
    今でも全力で拍手を送りたい。

  • ここから、だんだん、怖くなる。泣く。
    『そうさ、おまえさんのごていしゅは、あるく木なんだよ。』

  •  姉が、小さい頃この本が怖かったと言う話をしていた。童話と言うかたちを使って子供にも分かる現実の恐怖を描いている様が見事。私も小さい頃、パパとママの話がやっぱり分かりませんでした。でも、それ以外のお話が楽しかったから読んでた。日常からメルヘンへのシフトが妙にリアルで、今読むと、小さい頃親にそんな嘘をつかれたなぁなどと懐かしく思い出します。

  • 30年以上経ても色あせないメッセージがこの本にはこめられてます。私は趣味でぼけぼけな小説を書きますが、「目下」という言い方を覚えたのはこのももちゃんです。「目下戦争中」かな。離婚という事を覚えたのも、本当に理解したのもこの本です。小さい時にはももちゃんの気持ちが、今はお母さんの気持ちが、お父さんの気持ちが解るのです。涙が出てくるほどに。

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著者プロフィール

1926年、東京生まれ。1944年頃より童話を書きはじめ、1956年、信州へ民話の探訪に入り、『龍の子太郎』(講談社)に結実、国際アンデルセン賞優良賞を受ける。以来、民話に魅せられ創作と共に生涯の仕事となる。日本民話の会の設立にかかわり、松谷みよ子民話研究室を主宰。著書に『女川・雄勝の民話』(国土社)『日本の昔話』『日本の伝説』『昔話一二ヶ月』『民話の世界』(共に講談社)『現代民俗考』8巻(立風書房)など。

「1993年 『狐をめぐる世間話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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