本覚坊遺文

  • 講談社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061193659

感想・レビュー・書評

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  • 遊びの茶を、遊びでないものにした。といって、禅の道場にしたわけではない。腹を切る場所にした。

    素晴らしく端的。

    他にも茶の湯関連の読み物を読んでいる。
    本毎に人物像や解釈が違っておもしろい。

  • 茶の湯で、特に利休とか宗匠を書くのに、あまり有名でない人物に語らせるというスタイルがちょこちょこあるように思っていて、これが原型かもしれない。
    本覚坊という記録がほとんどない人物に、師匠の利休、東洋坊、板部岡江雪斎、古田織部、織田有楽、宗旦などと会わせて利休について語らせ、その死がなんだったのかを浮かび上がらせようとする。最後は利休と秀吉が語らう。
    著者は茶の湯をやってたのかな。利休が茶の湯を腹を切る場所にしたとか、とにかく真剣に茶の湯をやってた設定。

  • 何度目かの再読です。
    本書との出会いは忘れもしない、受験時の問題としてでした。
    試験を受けながら、この本読みたい!と思ったんですよねえ~(笑)

    さて、本書は「利休は何故死を賜ったのか」について弟子である本覚坊が、利休の死後30年に渡って利休の門下生の茶人達との触れ合いや、自己問答を通して掘り下げてゆく物語です。
    本覚坊という人物は実在し、実際に彼の書いた手記のようなものを基にしているので、何度読んでも本覚坊の精神内部に入り込んだような気分になります。

    一般的に利休が死を賜った理由は、大徳寺の山門事件や、茶人として力を持ち過ぎたことなどと言われていますが、真相は明らかにされていません。
    秀吉はそれを明確にしなかったし、利休も申し開きをしなかったことで、上記以外にも諸説理由は挙げられていますが、それはすべて周囲の憶測でしかないのです。

    本書はとても哲学的なのですが、30年という長きにわたり弟子がひたむきに利休の精神に近づこうとする過程を一緒に過ごすことで、本覚坊の、というか、利休と秀吉の心情が分かった気分になるので不思議です。
    さすが井上靖!名作過ぎます。

    利休は、戦場に赴く前の武人と向き合い、人間どおしの命を突きつけ合う前の儀式として茶で送り出し、結果的にたくさんの武人の死に立ち会っています。
    それで彼は、乱世の茶、という自分ひとりの道を歩くようになります。
    それは、遊びの茶を遊びでないものにし、魂の冷えあがる淋しい道を創り、それをひとりで受け止める覚悟を以て茶人として生きていくのです。

    秀吉は秀吉で、征服というものに生命を賭けて武人として生きており、侘数寄というものに生命を賭けている利休は秀吉の心の一番の理解者でもあったため、死を賜った以上はそれを受け止めることでしかお互いの大事なものは守れないという判断だったのかな、と私は理解しました。
    難しいけど何度読んでも面白い。利休モノ最高傑作です。。

  • 美しい日本語と文章と、武人と茶人の心の動きを簡潔ながら丁寧に、かつ本覚坊という第三者の視点から客観的な主観で語られている構成、素晴らしい小説だ。
    井上靖という作家の凄さを強く感じ入った。

  • 「利休にたずねよ」で初めて読みその世界に没入。「等伯」で登場する利休や世相の予備知識となる。
    ある程度知ったつもりなのに、この本は最初、読みずらい。
    だが、利休の死を第三者が考察。解明不能なことで利休の求める世界観が描かれていた。

    「-たずねよ」では世俗から離れがたい色気のある人間であり、等伯の目からは身心共に大きい力強い男性として描かれていた。でも、本覚坊(と靖)の目から見た利休は富、名声、権力、色からも解脱し魂だけの世界、なにもいらない世界を追求した利休が描かれている。
    靖の端正な文章も素晴らしい。

  • この幽玄を理解できる民族である日本人として生まれたことを感謝したい。私が出会ったのは高校生のときだけど、墓まで持っていきたいと思っている名作。

  • 孔子と同じ形式

    でもこっちの方が読みやすかった

  • 映画版は、素晴らしい出来です。

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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