羅生門,偸盜,地獄変,徃生絵巻 (講談社文庫 あ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061310087

感想・レビュー・書評

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  • 六本木歌舞伎(羅生門)を見に行くので本棚から取り出して再読。
    「羅生門」や「鼻」はなるほど覚えているが完読の記憶はない。途中に汚れたページがあり、なるほど、学生時代に授業で講読した「地獄変」。ぜんぜん覚えてないがなるほど手に汗握るような内容だった。

    今読むと文章の簡潔さ、美しさは「芥川賞」を創設される所以なのでしょう。西洋の昔話なら貧しく清い者には幸福がもたらされるはずであるが、芥川の物語は(あるいは日本の今昔物語でもあるのか)哀しいものはやはり哀しく(悲しいではなく)、滑稽なものは更に滑稽に救いようのない人間の真実、本質が描かれているように思う。そういう点で芥川文学は素晴らしい。

    でも本を第一にした物語は実生活が第一に生きる者にはなかなか響きにくいのでは。才能ある小説家にはもう少し、踏ん張って生きていただいて、苦悩の末に第二、第三の夜明けを迎えて新しい文学を開いて行ってほしかったと思う。

  • ■羅生門
      因果応報の話。
      生きるために悪をはたらけば、自らに悪がかえろうと文句は言えない。
      で、あれば何故悪をはたらくのにためらいがいるのか、を問うた一編。

    ■鼻
      自分より器量がよくないと思っていた女の子が整形して綺麗になったとき、
      あなたが感じるのは嘲りか感嘆か嫉妬か。
      彼女が平穏に暮らすには、元の自分を知らぬ者と交わるしかない。
      さまざまな感情の渦にまきこまれたあと
      元の自分に戻って過ごす日々は、
      それまで嫌っていた不器量な顔すら愛しく感じさせるのだ。

    ■芋粥
      分不相応な人生の望みは、ひとつ、人を支える希望である。
      その望みを叶えるためにはさまざまな犠牲を強いられる。
      もしかするとそれは、そっと箱にしまって叶わないほうが幸せなのかもしれない。

    ■袈裟と盛衰
      『げに人間のこころこそ 無明の闇も異ならね
       ただ煩悩の火と燃えて 消ゆるばかりぞ命なる』
      自らを蔑む人の中に、人は自分の醜さをみる。
      そのとき悔しさと恨みと悲しみで心は凍る。
      他人を蔑むにはそれだけの覚悟が必要だ。

    ■地獄変
      心を打つ作品の裏には、心を打つ出来事がある。
      狂の一字がただ、大事を成さしめるのかもしれない。

    ■好色
      才というのはひとつの欠陥でもある。
      才がなければ狂ったかのように完璧を求めることもない。
      才がなければ多くを幸せにすることもできないが、多くを傷つけることもない。
      恨みを買わずにすむ。
      天才の孤独、天才ゆえの不幸の話は世の中にあふれている。
      いずれにせよ、常人のほうが常に幸せに近いところにいることは間違いない。

    ■藪の中
      人の記憶というものはなんとあいまいなことか。
      自分に都合の良いようにものごとは捻じ曲がる。
      人は記憶に意味づけをするからだ。
      望むと望まざるとにかかわらず。

    ■六の宮の姫君
      生きるうちに極楽も地獄も感じないとすれば、なんて人生だろう。
      心を動かすものは、それだけ人間にとって重要だ。
      泣いたり笑ったり怒ったりできる自分が愛おしくなる。
      そんな物語。

  • 原作巡礼一作目は芥川龍之介。
    本書には羅生門、鼻、芋粥、偸盗、袈裟と盛遠、地獄変、竜、往生絵巻、好色、藪の中、六の宮の姫君、が集録されている。


    作品舞台が平安時代なので状況描写を具体的に想像するのは難しかったけど、二つ三つと読んでるうちに文章のどこが本筋か解ってくるので適当に読み飛ばせるようになった。
    代表作ばかりだったからかもしれないが、やっと芥川龍之介も面白いんだなと思えるようになった。
    気に入っているのは芋粥と偸盗。


    原作巡礼一作目の「藪の中」は正直期待外れだった。
    要は見る人によって真実は都合のいいように作り替えられるということがいいたいんだろうけど、絶対的な事実は最後まで提示されなかったのでモヤモヤと踏ん切りのつかないまま物語が終わってしまった。
    逆に言えば、僕の「何にでも結末を求めてしまう性格」が原因で、つまらないと切り捨ててしまった作品も沢山あったのかもしれない。

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著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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