- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061310087
感想・レビュー・書評
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六本木歌舞伎(羅生門)を見に行くので本棚から取り出して再読。
「羅生門」や「鼻」はなるほど覚えているが完読の記憶はない。途中に汚れたページがあり、なるほど、学生時代に授業で講読した「地獄変」。ぜんぜん覚えてないがなるほど手に汗握るような内容だった。
今読むと文章の簡潔さ、美しさは「芥川賞」を創設される所以なのでしょう。西洋の昔話なら貧しく清い者には幸福がもたらされるはずであるが、芥川の物語は(あるいは日本の今昔物語でもあるのか)哀しいものはやはり哀しく(悲しいではなく)、滑稽なものは更に滑稽に救いようのない人間の真実、本質が描かれているように思う。そういう点で芥川文学は素晴らしい。
でも本を第一にした物語は実生活が第一に生きる者にはなかなか響きにくいのでは。才能ある小説家にはもう少し、踏ん張って生きていただいて、苦悩の末に第二、第三の夜明けを迎えて新しい文学を開いて行ってほしかったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原作巡礼一作目は芥川龍之介。
本書には羅生門、鼻、芋粥、偸盗、袈裟と盛遠、地獄変、竜、往生絵巻、好色、藪の中、六の宮の姫君、が集録されている。
作品舞台が平安時代なので状況描写を具体的に想像するのは難しかったけど、二つ三つと読んでるうちに文章のどこが本筋か解ってくるので適当に読み飛ばせるようになった。
代表作ばかりだったからかもしれないが、やっと芥川龍之介も面白いんだなと思えるようになった。
気に入っているのは芋粥と偸盗。
原作巡礼一作目の「藪の中」は正直期待外れだった。
要は見る人によって真実は都合のいいように作り替えられるということがいいたいんだろうけど、絶対的な事実は最後まで提示されなかったのでモヤモヤと踏ん切りのつかないまま物語が終わってしまった。
逆に言えば、僕の「何にでも結末を求めてしまう性格」が原因で、つまらないと切り捨ててしまった作品も沢山あったのかもしれない。