海と毒薬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061310230

感想・レビュー・書評

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  • 実際に会った話。死とは何か考えさせられる話だった。

  • 三葛館一般 913.6||E

    第二次世界大戦末期、九州大学付属病院で米軍捕虜に対して行われた生体解剖実験という実際の事件をモチーフにした、遠藤周作による小説。終始重苦しい空気で張り詰めているものの、ストーリーに引き込まれながら一気に読み進みます。
    登場人物達の気だるさや虚脱感、諦観や嫉妬にさいなまれた内面や葛藤、医師や看護婦同士の勢力争い、物語を通じての海の描写がとても印象的で読み応えがあります。
    「人をなぜ殺してはいけないのか?」「もしも自分が彼らの立場であったらどういう行動を取るのか?」・・・人間の倫理・道徳・良心について問いかける名著だと思います。
                                  (かき)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=3908

  • 2015.12.08読了

  • 率直な感想。疲れた…
    一気には読めない。けれど重い内容だけど、人はこういう経験を積み重ねてきたわけだから無視はできない。今も世界中で生と死に様々な形で直面している人がいることも無視できないと考えさせられた

  • 評価は3.5位。実は遠藤周作作品、初めて。

    内容は昔に映画で見ていたのですが、映画の印象よりずっと面白かったです。

    硬くて難しそうな内容なのに、スムーズに読み進められる筆力が凄いと思いました。

    ただ、冒頭と主人公が変わってしまったのに違和感を感じました。

    実話だそうですが、悪魔の飽食シリーズを読破している私にはさほど驚くことでなく、当時の日本人なら平気でやれてしまうのだろうと…。

  • 勝呂は自身の良心と正義を抱きながら、戦時下という時代背景や大学病院での自分の立場の弱さ、権力というものに挟まれ苦悩しながら自分なりの抵抗をしてみるが、努力もむなしく結局は周りに流されてしまう。なんとも、救いようがなく胸糞悪い。
    死にゆく患者を救えず、医学の発展のためだと人を殺す。それは、勝呂の医師としての自尊心も大義もなにもかもを揺るがすものになったに違いない。

    この作品は、人体実験を取り上げながらも登場人物の見栄と欲望、嫉妬がちらちらと見え隠れする。汚れながらも不器用に生きていく人間の姿、周囲をうまく利用してずる賢く生きている人間の姿が描かれている。彼らは生体解剖の場に立ち会いう。しかし、そのような人達が生体解剖の後、どう感じてその後どうなるのか、それは描かれておらず私たち読者に丸投げである。

  • 運命:自分を押しながすもの
    神:(運命)から自由にしてくれるもの

  • 「老人と海」のあとに「海と毒薬」という奇跡。


    遠藤周作はいい。

    心理描写しかない。

    戦争を忘れてしまったかのようにふつうの生活を営む人々、なんでも諦めてしまっている青年、良心の呵責を感じない医師、母性に固執する看護婦、生々しい戦時中の様子。どれも実在しそうなほどにくっきり描写されている。

    戸田の幼少期と作者自身の経歴がかぶってるんだけど、戸田みたいな子供だったのかなあ、なんて想像してみたり。クリスチャンな遠藤周作のイメージとまた違うんだけど。

  • 勝呂はおばはんの死によって大きな虚無感を味わう。他の2人も色々な経緯の結果、生体実験に参加することになる。自分も戦時中に生きていたら、ガソリンスタンドの人たちや勝呂たちのように人を殺し、人が死んでいく狂気的な環境になれてしまうのだろうか。戦争のない現代に感謝。

  • これまた映像関係を契機に再読(と言っても本作ではなく、渡辺謙(?)の最新映画宣伝なんですが)。
    率直に言って『沈黙』には遠く及ばないと思う、理由は構成の問題か。
    作家のテーマはおそらく自己への問いかけ・人間探求ではないかと推察するが、本作はそのテーマを主人公含む複数の登場人物にそれぞれの性格付けを行って考察しようとしている。
    しかしその代償か、各人物の造形が浅くなってしまい、個人の内面の葛藤・緊張感が希薄なものとなってしまっているように思われる。
    人体実験の描写など確かに目を瞠るものがあるのだが、読後感が意外にもあっさりしているのも本作の設定によるものではないでしょうかね。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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