歳月 (講談社文庫)

  • 講談社 (1971年1月1日発売)
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  • 本 ・本 (724ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061310391

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新の激動期の「司法卿」として、日本の司法制度の整備に大きな功績を残しながら、征韓論争に破れた西郷隆盛らとともに下野、佐賀の乱の首謀者として非業の死を遂げた肥前佐賀藩・江藤新平(1834-1874)の壮絶な生涯を追った長編歴史小説。明治政府の初代「内務卿」として権力の集中を謀った大久保利通(1830-1878)は、盟友の西郷の一派から公的な目的のためにはどんな非情残酷なことでもできる人物<忍人(にんじん)>と言われる冷徹な政略家として、江藤らを即決裁判で処刑・晒し首という屈辱的な惨刑を見せしめにした。

  • 江藤新平伝。明治維新がほぼ終わった頃に世に出た天才と、それをはるかに上回った狡智さをもつ大久保との死闘。征韓論のくだりは政治サスペンスのよう。

  • 「胡蝶の夢」やメジャーどころでは「花神」など、司馬遼太郎にはいびつながらまっすぐな人格への愛情があるのだと私は思っているのだが、この作品も同様である。同情心は芽生えるが、歴史において敗者になることを知ってしまっている。そういう物語に付き合うという楽しみが、この書にはある

  •  本棚の隅に文庫としては分厚めの存在、江藤新平を主人公とした司馬遼太郎の『歳月』。もう数十年前の初読以来、明治政府の改革を進めた人物として強い印象の江藤でしたが、末路が悲しくほとんど再読することはありませんでした。今回の大河ドラマで大久保利通の政敵として登場している江藤が佐賀の乱の首謀者として史実通り「梟首(さらし首)」に成るのかどうか?は別として、もう一度その歳月を振り返りたく再読することにしました。
     江藤は藩政の改革後、廃藩置県と言う日本の大改革の必要性を説き実現します。藩でも足軽程度の身分であった彼が太政官として改革を行うことが出来たのは、佐賀藩の洋式軍が背景にあったにしても、江藤の異才とたったひとり脱藩し、京で政情を探ったあと死罪を厭わず帰藩した果敢な挑戦に依ります。多感な少年期には末路にとらわれ悲劇的な人生だと思いましたが、今は自身が人生の秋口にあると、江藤の華麗な活躍はそれで十分に羨ましく感じられます。
    「大河ドラマ」で江藤新平に興味を持たれた方には、お勧めの一冊です!
     
     
     

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  • 多分初読(なはず)。やっぱり冗長ですな、このお方は。自説お披露目をきっちりやらんと気が済まんのでしょう。
    ともかく江藤新平って教科書では不平分子みたく扱われていたような記憶があるし、何より晒し首写真の人という印象が強いんだけれども、ひとかどの人物だったんですなぁ。でも読み進めている内に、維新もしかりだが、この小説自体の主人公もはやはり大久保なり西郷なのかなと思った次第。
    結局作家の説に誘導されてしまったかな?

  • 佐賀出身「江藤新平」をご存知か。現代につながる法制度の始めに、傑出した大人(たいじん)。民法、裁判、そして、法、さらに正義とは。改めて考えてみよう。佐木隆三「司法卿 江藤新平」もあわせ、当方、お勧めの逸品です。

  •  20年ぶりに再読
     幕末維新の本は数多く読んできたので最初よりはよく理解できた。
     司法卿江藤新平の正義感薩長閥への対抗意識より
     大久保、岩倉のすごさの方が印象的。

  • 明治維新後の新政府において、その卓越した能力によって司法の原型をつくった男、「江藤新平」。

    その一生は、政府において参議まで上り詰めながらも、明治六年の征韓論政変で西郷・板垣と供に政界を去り、後に佐賀の乱の首謀者として処刑された。

    この小説では、遅れてきた佐賀藩志士「江藤新平」の野望を中心に、明治初年における権力闘争を描く。

    幕末、革命期の志士たちにおいて、革命後の理想化された世界があった。
    そのため、ある者は犠牲になり、あるものは大義の名の下に他を駆逐するという時代的高揚感を共有した。

    だが、明治政府が初期に直面した問題は、それぞれの志士たちの理想のギャップである。
    朝廷・薩摩・長州・土佐・肥前という連合体政権が、それぞれの思惑によって政権を運営するという内部矛盾がそれである。

    特に、江藤新平の出身である佐賀は、政権内部での人事権や発言権が脆弱であったため、江藤自身が政権闘争の核となって征韓論政変を引き起こすという形で物語られる。

    革命後の後処理を、明治政府は士族の反乱という形で決着をつけるのであるが、その士族の反乱の前提条件として政権内部における権力闘争があったというのが物語の主旨といえる。

    また、藩閥政治から立憲政治の移行期が描かれるため、政権内部における産みの苦しみといったものが描かれるのも興味深かった。

    国際社会に飛躍しようとする日本が、武士型的な考えに支えられた「公と私」に対する考え方から、西洋列強を手本とした近代国家における「公と私」の対立というのがよくわかりました。

    非常に地味な物語ではありますが、明治維新のその後について興味のある方にはオススメです。

  • 卓抜した論理と事務能力で、明治維新の激動期を、司法卿として敏腕をふるいながら、非業の死をとげた江藤新平。明治6年征韓論争で、反対派の大久保利通、岩倉具視らと対決、破れて下野し、佐賀の地から明治中央政府への反乱を企てる人間江藤の面目と、その壮絶な生涯。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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