闇のなかの祝祭 (講談社文庫)

  • 講談社 (1971年10月1日発売)
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本 ・本 (179ページ) / ISBN・EAN: 9784061310520

感想・レビュー・書評

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  • 不倫する男の話が表題作。不倫を知る妻と不倫相手の間に挟まれて疲れ果てていく男の様が描かれており、だったら不倫しなきゃいいじゃんなのだが、そうはいかないらしい。とにかく二人の女に腕を引っぱられ、振り回されていて、好き勝手やっているのは男のはずなのに、ちっとも楽しそうでない。全然制御出来ていないのだ。妻も愛人も、自分も、自分の人生も。そこから生そのものの倦怠感が立ち登る。そしてこの制御できなさ、ということの不安や居心地悪さを独特の象徴に落とし込んでいるとこにこの作家の個性があると思った。
    その意味で表題作はやや冗長に過ぎた。
    それよりも同時収録された小品、風呂を焚く男の方が短い中でも無駄なくモチーフを並べ展開させており、優れていた。

  • この本は、吉行淳之介さんが宮城まりこさんと知り合ってから、奥さんとの三角関係を書かれてあり、当時かなり話題になったらしいです。沼田沼一郎は作家で、奥さんの草子がいるのに、奈々子という女優に惚れてしまい、草子に隠れては奈々子とデートを重ねる。草子はそのことに気づいて、奈々子に嫌がらせの電話をしたり、車をぶつけたり、「絶対に別れない」と言ったりする。草子の押収は、どんどんエスカレートして、つまり、泥沼状態なのです。奈々子に「どちらかを選んで!」と何度迫られても、沼田は結論を出さず、ふわふわと。ほんとに、男って、白か黒か決めるのが嫌いで、灰色が好きだから・・・困ったもんだと想いつつ・・・こんなに泥沼でも、なんともしようとしない沼田は、ある意味男の代表のようにも思えます。でも、女も、そんな男、さっさと見切りをつけたらいいと思うのに、そうはしない。沼田の名前、泥沼の沼が二つもあるのは、吉行氏のしゃれっ気でしょうか?なんだか、男も女も生きるって哀しいなぁ・・・なんて、思います。

  • 言わずとしれた吉行佐和子の兄の小説.
    一言で言えば不倫癖の酷い男の話な訳だが...
    妻との付き合い=忍耐
    愛人=真の愛,心の渇きを潤す
    的な考えが,某知人を連想させる内容だつた,まぁ,この小説では主人公はどこまでも精神的に逝っちゃってる本妻からの執拗な目に追われるという事だが...

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著者プロフィール

大正十三年(一九二四)、岡山市に生まれ、二歳のとき東京に移る。麻布中学から旧制静岡高校に入学。昭和十九年(一九四四)九月、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため四日で帰郷。二十年東大英文科に入学。大学時代より「新思潮」「世代」等の同人となり小説を書く。大学を中退してしばらく「モダン日本」の記者となる。 二十九年に「驟雨」で第三十一回芥川賞を受賞。四十五年には『暗室』で第六回谷崎潤一郎賞を受賞する。主な作品に『娼婦の部屋』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』『夕暮まで』など。平成六年(一九九四)死去。

「2022年 『ネコ・ロマンチスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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