病める岸 (講談社文庫)

  • 講談社 (1975年1月1日発売)
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本 ・本 (273ページ) / ISBN・EAN: 9784061312890

感想・レビュー・書評

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  • やはりこの時代の渡辺淳一の小説は面白い

  • 初期医療小説六編を収録しています。

    「プレパラートの翳」は、大学でチフス菌の研究をしている無給医の男が、菌に魅せられるようにしてチフス菌をばらまく犯罪へと駆り立てられていった話。

    「血痕追跡」は、交通事故で死亡した少年の遺族が、医療ミスがあったのではないかと病院に言い立ててくる話です。彼らは、少年はA型だったにもかかわらず、病院が間違ってB型の血液を輸血したと主張します。少年の治療を担当した医師の関場威一郎は、少年の血液型を調べて病院側に誤りがなかったことをたしかめるとともに、幼い少年を亡くした両親の気持ちにも思いを馳せます。

    「点滴」は、回復の見込みのない悪性貧血の患者に対する輸血が、健康保険の適用にならないことが決定され、患者とその家族と直接接する医療の現場で矛盾に直面する医師たちのすがたをえがきます。

    「セックス・チェック」は、日本中の期待を背負う女子スピード・スケートの伊原寿美子の話です。自分の身体が世の多くの女性たちとちがっているのではないかとひそかに思い悩んでいた彼女は、次の大会でセックス・チェックがおこなわれると知らされ、人知れず苦悩します。

    「黄金分割」は、鼻の整形手術を受けて銀座のナンバー・ワン・ホステスの地位に昇りつめた槇子という女性が、彼女の手術を担当した瀬田医師と再会する話。

    「十五歳の失踪」は、人工透析を受けなければ生きていくことのできない15歳の少年の苦悩と、彼がくだしたひとつの決意の顛末を描きます。

  • 人工透析をしなければいきていけない少年の周りからは見えない苦悩を描く。他いろいろ。

  • 「失楽園」を書いた渡辺淳一の短編集。失楽園と同じ人が書いたとは思えないような、恋愛のれの字も無い作品。こっちの方が好き。もと外科医だけあって、知識がしっかりしている分面白かった。精神的に病んでいる人々の話。

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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