心狸学・社怪学 (講談社文庫)

  • 講談社 (1975年6月1日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784061312982

感想・レビュー・書評

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  • 「条件反射」「ナルシシズム」「ゲゼルシャフト」「ゲマインシャフト」など、心理学と社会学の用語を各作品のタイトルにした短編集です。

    いずれも時代風刺の効いたブラック・ユーモアが満載で、著者の作品特有の持ち味がぞんぶんに発揮されているように感じます。ただし、風刺の対象になっている社会事象そのものが、現代ではすでにノスタルジアの対象となっているといってよいでしょう。たとえば「優越感」と題された作品では、建売り住宅に住む人びとと団地に住む人びととの対立関係が拡大されており、「近代都市」と題された作品では、「国鉄」の電車が沿線の人びとに公害をもたらすことがテーマとなっています。

    現在では、著者のまき散らす「毒」に共感して笑うよりも、本作のような社会問題に対する応答も含めて、当時の世相をうかがえるという意味で興味深く読むことができるのではないかという気がします。

  • 105円購入2004-07-18

  • 心理学を修め、なおかつエログロ作品を増産する著者らしい本。からりと乾いたエロ描写は嫌みを感じさせない(あくまで男性である自分個人の感想です)。ジェンダーとか男女共同参画と叫ばれる21世紀に再読すると、女性に対する偏見として出版さえ怪しくなる内容だ。東大安田講堂事件からサンクチュアリ化した東大構内を描いた「原始共産制」は風刺が効いている。

  • タイトルに惹かれて購入。
    心理学は心理学でも、「心狸学」。社会学は社会学でも「社怪学」。心は狸のような化かし合いで薄汚れ、そんな個人が集まった社会も怪しくきな臭い。
    心理学や社会学で取り扱う事柄を基にした短編小説で、徹底的に人間の根底にある欲望や汚さ、異常さを表している。
    やはり人間の根底は性欲と排泄欲でできているんだなと思う。人間も地球に生きる生物なのだと。

  • 心理学と社会学の専門用語が並ぶ目次からは、まったく想像がつかない異色SF短編集。

    用語を筒井先生一流のユーモア(笑)で捻じ曲げまくった結果がコレだ。とにかく醜悪で、生々しくて、エロかグロかよくわからない。だが、それが面白い…。

    特に「原始共産制」は圧巻だ。そのインパクトは、まさに革命的だと思った。

  • 独特なひねくれ感があり、おもろい。

  • ナルシシズム(筒井康隆)

  • 今回もやっぱり面白い。偉大すぎる。

  • 小学生のときに読んだもんだからすごいショックだったよ。こんなこと本に書いていいんだ…って衝撃を受けてた純粋な私はどこへいったんだろう。

  • 線路際に引越した若夫婦が,列車がぶちまけて行く屎尿を終日浴びて大変なことになる「近代都市」所収.
    いまの人が読んでも,ありえないシュチュエーションと思われてしまうかもしれない.

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著者プロフィール

筒井康隆……作家、俳優。1934(昭和9)年、大阪市生まれ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1997年、パゾリーニ賞受賞。他に『家族八景』『邪眼鳥』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』など著書多数。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。

「2024年 『三丁目が戦争です』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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