罪喰い (講談社文庫 あ 5-1)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061313903

感想・レビュー・書評

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  • 建築。庭。バレエ。歌舞伎。体操とサーカス。
    どれだけ博識なんだ。
    そして映像的なセンスと、欲や恨みで画面が歪んでいくような感覚。
    起承転結ではなく、転を最初にもってきて、起承を説明し、結ぶという構成。

  • 短編集5篇
    人の奥底に潜む情念を剥き出しにしたような作品。古い木に彫られた黒人と罪喰いという伝承、むせ返るような花々の匂いに囚われて狂う花夜叉殺し、バレエや歌舞伎の華やかな世界の中で蠢く罪の意識と確執。めくるめくような愛憎の世界が拡がっていた。

  • 2022.05.24 図書館 昭和49年初版

  • 耽美系ライトノベル?

    【内容】
    短編集。しいてカテゴリ分けしたらミステリか。どこか幻想的だが非現実ではない。謎の題材には退廃と美と情念と愛欲がある。仏像、庭、バレエ、歌舞伎の衣裳、サーカス。

    【感想】
    題材のわりにスラスラ楽に読める。
    (2014年06月22日読了)

  • 憑かれたる男たちの悲劇。

  •  赤江湯の小説は、絢爛豪華、地獄の”美しさ”を秘めた魔力を持っているが、この作品も最初の一行目から妖しい匂いに満ちている。この広告を見た精神科医の主人公は、「罪喰い』と「黒人』という二つの言葉にまとわりつく一人の青年のイメージを思い浮かべていた。
     その青年とは一昨年の秋、新薬師寺の堂内で出会っていた。彼は十二神将像の一つ「伐折羅(ばさら)大将」の塑像の前に佇んでいた。ポスターなどでよく顔を出している忿怒神だが、作者はこう表現している。
     「唐風の甲胃をつけ、長剣をつかみ、束なし逆立った髪は文字どおり怒髪天をつき、激しく寄せた眉根はあらあらしく前額に肉をもりあげ、カッとむいた黒玉の裂けんばかりの両眼、大喝怒号の歯をむき出しに開いた口、そのひとつひとつが素晴らしい激怒の表現にあふれている」 青年は対馬で見つけた四十センチ程度の木像の顔と伐折羅大将の顔がそっくりだという。主人公が見ても二つの像は殆ど相似形をなしていた。
     その像には「都美波美黒人」と書いてある。木像が作られたのは奈良時代なので万葉読みすれば、都美(つみ)は罪、波美(はみ)は食と解釈でき、「罪喰い黒人」となる…。
     物語は、国宝の伐析羅大将とそっくりの木像がなぜあるのか。罪喰いという職業が日本にも存在していたのかという謎解きで進んでいくが、最後にドンデン返しがあって…。
     解説の中で瀬戸内寂聴さんは「少数の、真に選びぬかれた熱烈な読者を持つことが、物を書く人間にとっては最高の名誉であり至福である』と書いておられるが、私にとっても
    赤江瀑の作品を読むのは秘かな楽しみである。

  • 短編5編。
    今月逝去された著者へ哀悼の意を込めて、実はお初のこの本を読んでみた。
    故人の生前の罪を拭って、きれいな姿であの世へ送り出すため、
    穢れを代わりに引き受ける「罪喰い」なる役目を果たす者がいる――とは本当か、
    自分はその血を引いた人間ではないのか、という想念に苦しむ男……など、
    因縁に縛られた人たちの愛憎劇。
    みんな魔に取り憑かれているけど、俗っぽい生臭さが強くて、
    あまり幻想的ではない。

  • 闇に犯され、マワされ、そして誘われる。「お前はもうこちらの世界へ来なくていいのか」。もうあなたは戻れない。赤江瀑の奇妙で妙に心地いい文体が世界をくるみ、叩く。壊れた時空から闇が手招きしている。・・・もう。

  • 340
    心の奥底にひそむ魔性。狂気の淵に立った時、人を破滅へと駆り立てる不可解な衝動。……《罪喰い》という魔の言葉にとり憑かれた新進建築家。一年中花の香が絶えることのない妖かしの庭に魅せられた若い庭師。……彼らは非現実の世界へと果敢なる飛翔を試みる。闇の翼は、果して存在するのであろうか。
    罪喰い・花夜叉殺し・ライオンの中庭・赤姫・サーカス花鎮

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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