- Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061317789
感想・レビュー・書評
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読み応え十分。旧字や難読漢字がたくさんあって途中つまずきながら読了。
一絃琴に魅せられた2人の壮絶な人生の回顧録。
師匠の死後、とある理由により絶望を味わった苗。その後めぐり合わせに恵まれ、一絃琴の市橋塾を開く。塾は時世に合い大きく育っていく。若さ故に一絃琴を理解できずにいる弟子の蘭子。跡目となることを疑わない蘭子は、一絃琴の行く末を危惧する苗の目からすると目の上のたんこぶ。赤子をもらい受け跡目にすると公言してしまう。気が狂わんばかりの蘭子は一絃琴を金輪際弾かないと心に決めてしまう。
「女人思い凝れば白蛇と化す」初めて聞く言葉だがすんなり入ってくる。これはお互いさま。苗が白龍、蘭子が白蛇か。境遇や所作は違うが似ているところがあるのだろう。離れてもお互い意識し戦いあっていたことがうかがえる。
晩年の蘭子は寂しさから一絃琴に目覚め、人間国宝となるまで昇華させる。
人生うまくいくも、頓挫するもすべてが今のため、七転び八起きしてはじめて境地にたどり着けることを教えられた一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一弦の琴をかいして描かれる女性の一生。この時代の女性としては仕事を成功させたカッコイイ女性だと思いました。また、ひとつのことを極め、守っていくという熱量には驚きと羨ましさを感じました。
琴が主人公の女性にとってどういう存在なのか、ずっと考えさせられる作品でした。 -
琴をめぐる小説ですが、琴の話というよりも、女の一生の話だと思いました。女性を主役とした時代小説の中でも、女性の、社会に規定されて出来上がった内面性だけでなく、本質的な内面性を描くその密度、質量が圧倒的な作品の一つだと思います。
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1.00
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だいぶ昔に一度よんでいたのか、登録がしてあった。まったく記憶にない。恋歌に似た(こっちの方がはるかに前の作品だが)江戸末期から昭和にかけての一芸にかける女性たち、登場する女性たちの芯の強さと気高さが、今の私にはとても響くものがあった。文体は非常に堅苦しく、読み始めのハードルは高かったけど、読み始めると一気に読んでしまうほど世界観に引き込まれてしまった。
二部構成のうち、苗の方が魅力的で、メインヒロインとされている蘭子の魅力が乏しいのが少し残念だった。実際の人物になぞらえているからだろうか。 -
17年掛けて書かれたらしい
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美しい音色を奏でるのは絃ではなく、
張り詰めた強い意志。
(以下抜粋)
○一つのものが二つに増えました。お目出たいしるし。(P.122)
○それは一季節限りの寒稽古でも真夏の鍛錬会でもなく、
三百六十五日、降っても照っても六時起床からかっちり一時間を、
昔手ほどきの「姫松小松」から順に一曲も落さず丁寧に浚えてゆく。(P.225) -
土佐の上士の娘、苗は桑屋敷のお袖様と後々まで呼ばれた賢夫人である祖母に厳しく育てられながら、5歳の時、旅絵師の亀岡の弾く一弦琴に魅入られる。盲目の師・有伯への想いと別れ、丸紋の琴への執着、名門の子女らを集めた塾の開塾。そして、そこで稀有な才能を持った弟子、蘭子と出会う。一弦琴一筋に生きた気骨のある土佐女二人の生涯を土佐女である筆者がぶれのない確かな筆致で描ききる。
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一絃琴を通して描かれる女性の一生。登場人物である苗、蘭子、稲子の一絃琴に対する思い入れの違いもさることながら、子供ができない事に対する三者三様の選択も興味深い。
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この本以上に、女の一生を考えさせられる物語にまだ出会ったことがない。
女の子として、娘として、友人として、妻として、母親として、祖母として、そして孫として…
色々な立場を経験する女達。
前の世代から、新たな世代へと移っていく。
その移り代わりの中で見る一瞬の共感と反発。
読んでから、もう10年近くたっているが、
最後の数ページが頭から離れない。 -
綺麗な日本語に触れたくなったら宮尾作品を読みます。心が洗われます。やっぱり日本人は日本語ですね。
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この作者の作品は、高校の時『蔵』を読んで以来。
女性の一代記の面白さは折り紙つきの宮尾登美子さん。
久しぶりのためか、文体の古めかしさとか、漢字表記の古さになかなか最初はとっつけなくってのろのろ読み始めました。
でも、苗が武家の娘としてのわきまえを持ちながらも健気に一絃琴に打ち込む姿に引き込まれて後半は一気読み。
江戸時代後期から昭和を生きた女性たちの生き方や考え方は、確かに今とはまったく違って、堅苦しくて、不自由したんだろうなって思いながらも、生活の寝起きのことから、言動一つにしても、道理を思い、自分の立場をわきまえながら筋を通していたんだなって、その生き方はとても凛として美しいと思いました。 -
第80回直木賞。
一絃琴の伝統を受け継いでいく女性たちの話。
土佐藩で生まれ育った沢村苗は、一絃琴を習う。師匠の死後、結婚してからはまったく琴を弾かなくなったが、市橋家に嫁いで10年後、琴を弾き始めると、あれよあれよと話が進み、塾を開くことになる。
塾の全盛期には生徒は400人にも膨れ上がり、苗50歳の頃、跡取り(次期塾長)を考えた時、腕が立つ2人の生徒、家柄の良い蘭子と雑品屋の娘・雅美の名が挙がる。
一絃琴というアイテムを通して、苗、苗の祖母・袖、蘭子、雅美、苗の子・稲子といった女性の生き方にクローズアップした小説。明治維新前後という時代背景が現代とはいささか異なるものの、女性が女性に抱く憧れや嫉妬などが描かれ、女性のもろさやたくましさが感じられる。
一絃琴普及に尽力した実在の文人も登場し、ノンフィクション的な要素も感じられ、物語に壮大さを加えている。 -
【第80回直木賞受賞作】
宮尾的直木賞作,很典雅的作品。但步調太慢有點令人愛睏。 -
ふんふん
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昭和文学にしては、分かりにくい。
表現も古く、題材も独特で想像しにくい。
何度か読めば味わいも出てくると思うのですが。 -
一絃琴という、糸が一本しかない琴に魅入られた女の一生のお話。ずっと以前、NHKのドラマになっていて、いつか小説を読みたいと思っていた。ドラマでは、主人公・苗が苛め抜かれるのが面白かったけれど、小説ではそういうシーンはわずか。琴に惹かれ、琴を諦め、また琴に一生を託しながら生きる。あたしで言うならカメラだなと思う。なので、苗の気持ちはすごく分かる。後半から、弟子の蘭子を通じて苗を見ることになるけれど、この蘭子があたしはいけすかない。苗が忌み嫌ったのも分かる気がする。競争意識がものすごく強く、一番であることが当然と思い、自分本位。蘭子も苗の呪縛から離れられないけれど、結局は蘭子も「跡目を継がせない」という意味では苗と同じ生涯を生きたのではないかと思った。
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女の華、しぶとさ、したたかさ。