おぼえていろよ おおきな木

  • 講談社 (1992年12月7日発売)
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本 ・本 (47ページ) / ISBN・EAN: 9784061318847

作品紹介・あらすじ

失ってはじめて知った、本当に大切なもの。
じゃまに思っていた木を切り倒して、せいせいするはずが、なんだかさびしい、悲しい。
なくしてみてはじめて、おじさんは、自分を支えてくれた木の存在に気づきます。

厚生省中央児童福祉審議会推薦文化財/全国学校図書館協議会選定図書

感想・レビュー・書評

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  • 失ってみて初めて分かる、その価値。
    佐野洋子さんの得意の筋立てである。でもこれはちょっと切ないなぁ。
    「おぼえていろよ」というのは、主人公のおじさんの困った口癖。
    庭の大きな木に向かって罵る言葉だ。
    ことりが集まってうるさいからと「おぼえていろよ」。
    そのことりの糞がお茶に入ったからと「おぼえていろよ」。
    木の影になって洗濯物が乾かないからと「おぼえていろよ」。
    何から何まで不満の種でしかない。なんて哀れなおじさん。
    ある日とうとう怒りにまかせて切り倒してしまい、そしてその後は・・・

    約5分。
    本自体が小さく挿絵も更に小さめなので、大勢のお話会には残念ながら不向き。
    でも読むと色々楽しめるので大人でも親子一緒でもどうぞ。
    「気づいた」ときは、すでに「失った」とき。
    おじさんはたまたま庭の木だったけど、人によっては「親」だったり「友人」だったりするんじゃないだろうか。
    或いは「故郷」だったり、はたまた「祖国」であったり・・
    身近なものほどその恩恵には気づかない。

    なんて話はさておき、子どもたちはこの短絡的なおじさんを笑ってしまうことだろう。
    まさか自分の中にもこんな部分があるとは、まだ思いもしないものねぇ。
    結末は希望を抱かせるのが救い。
    お話が全て終わってからの、おじさんの後姿がとっても良いのだ。

    • nejidonさん
      胡桃さん、こちらこそありがとうございます(^^♪
      この本は作者さんの技を感じますよね。
      ??と思わせて、くすっと笑って、それから考えさせ...
      胡桃さん、こちらこそありがとうございます(^^♪
      この本は作者さんの技を感じますよね。
      ??と思わせて、くすっと笑って、それから考えさせる。
      うまいなぁと、いつも感心します。笑わせるだけでも大変なのに・(笑)
      「だってだってのおばあさん」もいいですよね!
      あれを中学生たちに読んだことがあるのですよ!
      調子のいいおばあさんだ!と言って大笑いしていました。私は見習いたいです♪
      「本にまつわる本」に凝り出してからなかなか絵本を載せなくなってしまいましたが、ぜひ活用なさってくださいね。
      胡桃さんに読んでいただけてると知っていたらもっとちゃんとしたのを載せたのに(*'▽')
      2020/11/25
    • 胡桃さん
      本当に笑わせるだけでも大変ですよね!

      おぼえていろよおおきな木といい、
      だってだってのおばあさんといい、、
      短いお話しのなかで佐野洋子さん...
      本当に笑わせるだけでも大変ですよね!

      おぼえていろよおおきな木といい、
      だってだってのおばあさんといい、、
      短いお話しのなかで佐野洋子さんの凄さを感じざるにはいられない作品でした。


      こちらを読み聞かせされたのですね~!
      中学生の子達がうらやましいです♪
      きっと素敵な一日の始まりになっただろうな。。
      私もこの本に中学時代出会えていたら、もっと早く絵本の世界に入り込んでいたと思います(*^^*)


      これ以上ない素敵なレビューです!読み終わって、nejidonさんのレビューをもう一度読んでみると本に対する深みが増すように感じます。
      nejidonさんからそう言っていただけるなんて嬉しいです(>_<..)
      たくさん活用させていただきます~!⭐︎
      2020/11/25
    • nejidonさん
      胡桃さん、こんばんは(^^♪
      嬉しい言葉をかけていただいて、ありがとうございます!
      中学生は楽しいですよ。感想がひと味違います。
      読ん...
      胡桃さん、こんばんは(^^♪
      嬉しい言葉をかけていただいて、ありがとうございます!
      中学生は楽しいですよ。感想がひと味違います。
      読んだ後で感想を聞いたりはしてないのに、あちらから言いに来るんです・(笑)
      どう思ったかを、言いたくてたまらないみたい。面白いですよね。
      黙って拍手して終わる小さい子たちとは対照的です。
      胡桃さん、これからも楽しい読書を続けて参りましょうね。
      読むのが遅くても、上手く書けなくても、ここは誰も叱りません。
      マイペースで楽しんでいきましょう。
      カテゴリーに絵本が入っていますので、ばんばんお好きなようにお使いください。
      私もぼちぼちといきます。どうぞよろしくね♪
      2020/11/25
  • 存在が近すぎて、邪魔になってしまう一本の大きな木。

    おぼえていろよ、、おぼえていろよ!



    悪いことばかりじゃないんだけれど、ちょっとしたことが積もり積もって、しまいには怒って木を切ってしまいます。


    鬱陶しかった木が無くなってスッキリ、
    と思ったら。。。⁈




    この本を読んだ後、井上ジョー「closer」が思い浮かびました。大好きな曲のひとつです^^

    身近にあるもの
    常に気をつけてないと
    あまりに近すぎて
    見失ってしまいそう



    悪いことばかりに気を取られないで、
    良いことにもっと目を向けないとと諭されました。


    話の終わりかた、とても可愛かったです。笑

  • 失って初めて知る失ったものの尊さ。佐野洋子さんの作品には、ミリオンセラーの「100万回生きたねこ」のように、与えられているものへの感謝も愛も知らない主人公が、決定的な喪失を経てはじめて、失ったものの大きさを知る、という物語展開を見せる作品の系譜があるように思うのですが、その中でも特に好きな一冊です。この作品には、喪失のあとに、再生と希望の小さな芽が見えるから。とっても優しい。ええ、それ子供が読んだら泣くって、というぐらい理不尽なまでの絶望的な喪失で終わっちゃう作品もある中で、この一冊で見られる視線の優しさは、突出していると思う。「おおきな木」というとまずシルヴァスタインの作品が浮かぶ人も多いと思うのですが、私の中では「おおきな木」といえば「おぼえていろよ」なのです。

  • 私が紹介した本は佐野洋子の『おぼえいろよおおきな木』。出会いは小学生の頃の給食時間の校内放送。おじさんの『おぼえていろよ』という悪態がただ面白かった。木を切り倒すおじさんの愚かしさも理解できないで。
    その後縁あってこの本に出会い、子どもを持ち、読み聞かせに出会い、何度もこの本を読み返す人生をたどることになりました。

    本は、読む年令によって感じ方が違うから何度も読み返すといい、とはよく言われるけど、そのためには人生の早い時期に一度出会う必要があります。私はこの本を6年生の最後の読み聞かせでよく読みます。自分のこの体験は話しませんが、読みながら子ども達が生涯の友となる本に出会えることを祈ります。

    そして、45才になった今私がこの本から受け取るのは『恩恵』という言葉です。朝には小鳥のさえずりが、秋には豊かな実りが木からもたらされたように私にもたくさんのステキなものをくれる人達がいます。愚かにもそのことを疎ましく思い、喧嘩したり勝手に訣別したり突き返したりしてしまったこともあったけども、気がつけばまた、その人達はそっと寄り添ってくれている。こんな傲慢で愚かな私にもふりそそぐ恩恵。そしてただ木を切り倒すしかない人を見守り赦すこともおぼえてきました。それもまた、私が受け取った恩恵。

    好きな本というのとはちょっと違いますね、まさに、私はこの『おじさん』です。
    <rie>

  • 気づいたときには遅すぎる。そうならないようにと思っても人間はそのことに気がつくために「ちぇっ」と舌打ちを繰り返す生き物なのだ。気づくことがこわくても、気づいて涙を流しても、目の前をじーっと見つめて生きていこう。

  • 年長児のわが子には、「変わった話」という印象だったようですが、私は、「さすが佐野洋子さん!深い。。。」と、感動。
    子供には、人との関係でもこういうことあるよね、、、って、話しましたが、、、伝わったかな?

  • そんなに都合のいいことはありません。

    利用するだけしておいて、なにかちょっと気に入らないことがあると、すぐに文句を言う。

    「おぼえていろよ」?
    馬鹿言ってはいけない。
    覚えておかなければならないのは、あなたの方だ。
    どれだけの恩恵をその木から受けているのか、覚えておかなければならないのは、あなたの方だ。

    失ってから気付いても、遅いのだから。
    取り返しは、つかないのだから。

    気付かなかった自分が、悪いのだから。

  • そばにありすぎて大切さに気づかないこと、ありませんか。
    失くして初めてその大きさに気づくのです。
    そのことに気づくおじさんの心の変化をとても上手く伝えているようなきがする絵本です。
    最後はおじさんにまた希望が出てきます。

  • 下らないものと思っていたことが、実はかけがえのないものだったことに後になってから気づくということは、人間誰しもよくあること。

    ちょっとカッとして大切なものを自分から捨ててしまっても、またやり直せる。前みたいにはできないかもしれない。でも、絶対にやり直せる。小さなことから。本当に小さなことから。

  • 失って初めて気づく大切なもの。私たちはわかっているなずなのです。良いことも悪い事も。でも、いつの時代も繰り返す過ちは何故なのか?。

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著者プロフィール

1938年、北京生まれ。絵本作家。ベストセラー『100万回生きたねこ』のほか『おじさんのかさ』、『ねえ とうさん』(日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)など多数の絵本をのこした。
主なエッセイ集に、『私はそうは思わない』、『ふつうがえらい』、『シズコさん』、『神も仏もありませぬ』(小林秀雄賞)、『死ぬ気まんまん』などがある。
2010年11月逝去。

「2021年 『佐野洋子とっておき作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐野洋子の作品

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