星うさぎと月のふね

  • 講談社 (2003年10月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784061322813

感想・レビュー・書評

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  •  かんのゆうこさんと田中鮎子(たなか鮎子)さんの「あきねこ」コンビによる、2003年の作品は、発売後『誰かに贈りたくなる絵本』として話題になったことから、翌年にはなんと読み聞かせ型のプラネタリウム番組として作られたとのことで、絵本からの展開としては珍しいパターンと思われる、本書の秘密に是非とも迫っていきたい。

     星うさぎに月のふねって、何かあべこべな印象を持ちそうだけれど、その何でもありで自由な雰囲気は、ちょっと私の想像力では及ばなかった斬新な物語の展開に、いかにも夢いっぱいのファンタジーとして確固たる地位を築いていると感じられた、その独特さには大人も思わずワクワク感が募り、たまらないものがある。

     それは、両親が女の子「リセル」への誕生日プレゼントとして贈るマトリョーシカの人形が、既に素敵な異国への入り口であるような錯覚を抱かせる中、お母さんの言葉を信じたリセルの願い事の『月のふねにのって、星の国へいけますように……』という発想も素敵で、ただロケットに乗って宇宙にある星に行きたいのではなくて、月のふねで星の国へというのが、とてもロマンチックで良い。

     そして、ここではそんな絵空事と思えるようなことがやはり実現するよねとなれば、読み手の気持ちとしては、そう来なくっちゃとなるし、またリセルに「マトリョーナ」という同行者がいることには、19世紀のロシアに於いて、最も一般的な女性の名前を持つ彼女が子どもの素敵な夢を叶えるというのも、マトリョーシカに込められた願いとも繋がるようで、それは選ばれた者だけが見られる夢ではなく、誰もが夢を見ていいのだという、そんな素晴らしいことも教えてくれる。

     その後、マトリョーナと一緒に大喜びで乗り込んだリセルを運ぶ月のふねが進む銀河は、ふねに相応しく海のようで、そして辿り着いた小さな船着き場にあった、古い看板には『星の国・入り口』と書かれており、銀河のただ中というよりは遠い異国の地に辿り着いたような印象で、その階段や梯子といったアナログな世界観の中に、リセルたちが歩く光の道や、ささやかに優しく光り輝くたくさんの星たちといった神秘的なものが佇む絵は、まるで神話の世界を見ているような悠久の時の中にリセルたちが入り込んだ印象であった。

     そこで星を手に取れる(!?)という驚きもあった中で、リセルが出会った「星うさぎ」の仕事が『星たちを磨くこと』には、またまた驚きであったが、その理由については本能的な感覚として、すっと胸に溶け込んでいくような自然と実感できる普遍性があった。

     それは、『人は何故星を見つめていると、不思議と優しい気持ちになるのだろう?』という言葉が、すべてを物語っているようで、確かに何故だろうと感じてしまうのだが、そこには決して手に届かないような、遠く離れた場所から優しく光る星に対して、何か感じ取るものがあるのか、人よりも遙か昔から存在し続けるものに対する、ささやかな憧れなのか、そうした考えはともかくとして、人を優しい気持ちにさせるための仕事を通して教えてくれたのは、人の内面にも輝く星のようなものはきっとあって、それを見ると常に優しい気持ちになれるくらい、日頃から磨き続けることの大切さなのではないかと思い、それは夜空を見上げて優しく思える星を自分の中にも輝かせることで、自らの人生に反映させていく喜びにも変わるのだという希望を抱かせてくれて、星には到底かなわないが、人の誕生も中々神秘的だと私は思うことで、きっと様々な可能性だって生まれるのだと信じたい。

     それから、そうした夢のある優しい輝きを秘めたものとして、田中鮎子さんの絵も大きな位置を占めているのだと思い、その宇宙の中の星と感じさせないのに、どこか神秘的なものを感じるのは、ざっくりと描いている部分に想像力を刺激されながらも、とてもこと細かく描いている部分と折り重なることによって、唯一無二の独特な世界観を形成していることにあるのだと思い、特に私が惹きつけられた夜空の絵は、まるで空自身に折り目やひびが入ったように見える不思議な凹凸感のある中、繊細に色を使い分けて幾重にも塗り重ねているように感じられた、その神秘的な美しさは確かに素敵な夢を見せてくれたと思ったら、星うさぎとリセルが対等に向かい合ったお互いの温かい眼差しも印象的な絵には、星と人との距離を縮めてくれる親しみやすさがあってと、これらの絵を全天周の大画面であるプラネタリウム番組で観たくなる気持ちもよく分かり、そのひとときはリセルたちと一緒に、きっと夢のような素敵な時間を過ごせるのだろうと思われただけに、今では中々観られないのが残念であった。

  • 〝今日は、リセルの誕生日。 パパとママから貰った素敵なプレゼントは、ロシアのマトリョーシカという、木でつくられたお人形でした。「お人形がいっぱい❢ 五つも並んだ❢」「一番小さなマトリョーシカに願いを込めて、元に戻して飾っておくと、それが叶うんですって」とママが言いました。その夜、リセルは小さなマトリョーシカに願い事をしました「どうか、月の船にのって、星の国に行けますように…」と〟童話作家<かんの ゆうこ>さんの夢幻の世界を、美しく壮大に描かれた絵本。

  • リセル、マトリョーナ、五つのマトリョーシカ、1番小さいのが願い事を叶えてくれる、星うさぎ、星みがき、水晶の磨き粉、雲の布、星は天使の住処

    モチーフが好き。



    再読18年12月2日
    女の子リセルが誕生日にマトリョーシカをもらう
    5番目の一番小さいマトリョーシカに願い事をすると叶うらしい
    月のふねに乗って星の国に行けるように願う
    願いごとがなかなか叶わないと思っていたらマトリョーナが現れて月へ連れて行ってくれる
    月では星うさぎが星を磨く仕事をしていた
    天使が星をすみかにしている
    たまに人の夢を叶える
    星磨きを手伝う
    夢かと思ったけれどマトリョーシカの中に星うさぎからもらった金平糖が入っている

    キラキラ。
    やっぱり出てくるモチーフ好み。

  • 星みがきはすてきな仕事。星を見るとどんな気持になる?星うさぎさんが星をみがくということは、人のこころの中に、それをともすこと。

  • 願いをかなえてくれるマトリョーシカに、月のふねに乗って星の国に行けるよう頼んだリセル。

    しかし、一向に願いが叶う気配がなくて・・・。

    少女とマトリョーシカの不思議な冒険物語です。

  • 一番小さいマトリョーシカに願いごとをしてみたくなります。

  • 誕生日にもらったマトリョーシカにリセルはそっと、ねがいごとをしました。「どうか、月のふねにのって、星の国にいけますように・・・・・・。」

    「星をみがくってことはね、ひとの心のなかに、やさしさをともすことなんだ。ひとはみんな、星のかがやきをみつめるたびに、ふしぎと、やさしいきもちになるものだろう?」

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著者プロフィール

東京都生まれ。東京女学館短期大学文科卒業。児童書に、 「ソラタとヒナタ」シリーズ(絵・くまあやこ)、「はりねずみのルーチカ」シリーズ「りりかさんのぬいぐるみ診療所」シリーズ(ともに絵・北見葉胡)(いずれも講談社)、 『とびらの向こうに』(絵・みやこしあきこ/岩崎書店)など。 絵本に、『はるねこ』(絵・松成真理子)、『はこちゃん』(絵・江頭路子)、プラネタリウム番組にもなった『星うさぎと月のふね』(絵・田中鮎子)(以上、講談社)などがある。

「2023年 『はりねずみのルーチカ 精霊たちのすむところ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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