ぶどう酒びんのふしぎな旅

  • 講談社 (2010年4月13日発売)
4.37
  • (47)
  • (28)
  • (10)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 260
感想 : 43
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

本 ・本 (68ページ) / ISBN・EAN: 9784061324244

作品紹介・あらすじ

ブラチスラバ国際絵本原画コンクール「金のりんご賞」受賞作家で、日本を代表する影絵作家、藤城清治氏。本作は、氏が最初の絵本として選び、愛してやまないアンデルセンの名作を、新たに渾身の力をこめて描き上げた絵本です。
昭和25年、暮しの手帖社から刊行された旧版『ぶどう酒びんのふしぎな旅』はモノクロ印刷。これでは十分に表現できなかった幻想世界を、オール4色で完全に表現したいという藤城氏の宿願を果たすものであり、ご自身の原点への挑戦でもあります。
本年4月に、86歳になる藤城清冶氏の創作意欲は、衰えるどころか旺盛さを増しています。本書には、昨年大きな話題となった京都府京都文化博物館での「藤城清冶 光と影の世界展」で展示され、人気を集めた作品も掲載されていますが、ほとんどは新規の描き下ろし。作品に手を入れ続けている姿は、妥協を知らない真のアーティストの名にふさわしいものです。
藤城氏の86歳の誕生日にあわせて刊行します。

あらすじ
あばら屋の二階の窓辺に、老婆の飼い鳥の水飲み用に置かれた、こわれたぶどう酒びん。じつは、このびん、老婆が、美しい少女だったころ、その婚約の席で空けられた、ぶどう酒びんだった……。使われては、捨てられ、また拾われて、べつの人の手に渡りというぶどう酒びんの旅が、ときに少女の人生と交錯していく。アンデルセンの名作を絵本化。

藤城 清治(1924年4月17日 生まれ )
日本を代表する影絵作家。東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、人形劇と影絵の劇場「ジュヌ・パントル」を結成。(後年、「木馬座」と名称変更。)1956年、影絵劇「銀河鉄道の夜」にて、1956年度国際演劇参加読売児童演劇祭奨励賞、日本ユネスコ協会連盟賞を受賞。 1983年、絵本「銀河鉄道の夜」でチェコスロバキアの国際絵本原画展BIBの金のりんご賞受賞。1989年に紫綬褒章、1995年に勲四等旭日小綬章を受章。 1999年、日本児童文芸家協会より児童文化特別功労賞受賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • なんと懐かしい。読みながらどんどん記憶があふれ出した。
    これは、私が子供の頃初めて読んだ、藤城清治さんの影絵本だ。
    確か当時はモノクロだったと思う。
    お話の初めに登場するお嬢さんと、最後に登場する老婆が同一人物で、せっかくぶどう酒びんと再会できたのに互いにそれを知らないというラストにひどく納得がいかなくて、心にひっかかったままだったのだ。
    影絵の美しさとお話の不思議さ、そしてこのラストとで、長年心の奥に住み続けたお話。

    藤城さんが26歳の時初めて世に出した影絵の絵本で、原作はアンデルセンの『びんの首』。
    紆余曲折するびんの一生を、びん自身が語るというもの。
    60枚すべての絵に、人生の喜びや悲しみやはかなさが照らし出されて、この不思議なお話に深い叙情性を与えている。

    絵本デビューから60年目にあたる86歳の誕生日を目標に、カラー作品として蘇らせようと2,3年前から取り掛かってこられたらしい。
    そのどちらにも出会うことが出来て、私はなんと幸せ者だろう。
    びんに旅をさせるというアンデルセンの高い創造性と、藤城さんの万感の思いが高い精度の一冊となって、大人になった私の心にまた静かに住み始めている。

    今再読すると、このお話の流れのラストではびんと老婆は互いに知らぬままが良いのだと、それこそが人生の味わいなのだと、頷かずにいられない。
    それぞれが精一杯生きてきて、それゆえに尊いのだから。

    馬車に揺られて森に行く場面、夕日が沈む海、新月の夜の祭り、気球から落ちてかけらになるところ、鳥かごとおばあさん、最後の丘の上の屋敷まで、上質の美術本にうっとりして、その後じわじわとこみ上げるものがある。
    藤城さん自身の言葉も後書きにあるので、そちらもぜひお読みあれ。
    極上のワインをじっくりと堪能するような、そんな絵本。

    • だいさん
      nejidonさん こんにちは
      まず、長い しかし構成がうまい!
      自分の感想 自分の体験と 本書の内容が 同期している (冒頭で)
      ...
      nejidonさん こんにちは
      まず、長い しかし構成がうまい!
      自分の感想 自分の体験と 本書の内容が 同期している (冒頭で)
      幼児期へのフラッシュバックは 他人ことの陳腐な表現になりがちであるが ここでは同一感覚を味わえた
      自分の体験記憶を感覚的に相手に伝えることは難しい
      今回は衝撃が強かった
      2016/08/06
    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      まぁぁぁ!褒めていただいて恐縮です。
      自分ではどこが良いのか全く分かりま...
      mkt99さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      まぁぁぁ!褒めていただいて恐縮です。
      自分ではどこが良いのか全く分かりません(笑)
      たぶんこの本が本当に素敵なので、こういうレビューになったのだと思います。
      出来ることなら、mkt99さんにもお読みいただきたいものです。

      この夏、友人の誕生日祝いにこの本を送るつもりです。
      自分でも手元に置いておきたい一冊です。
      ええ、そうそう焼酎でも飲みながら・・あれ?
      2016/08/07
    • nejidonさん
      だいさん、再訪してくださってありがとうございます!
      そ、そうですか?!
      まさか褒めていただくとは夢にも思わなくて心底驚いています。
      『...
      だいさん、再訪してくださってありがとうございます!
      そ、そうですか?!
      まさか褒めていただくとは夢にも思わなくて心底驚いています。
      『強烈』というのは、どこかに言ってはいけないフレーズでもあるのかと、
      眼を皿のようにして何度も読み返してしまいました・(笑
      まさか&まさかの評価をいただいて、こちらこそだいさんのコメントに
      花マルをさしあげたい気持ちです。
      ありがとうございます。

      レビューって難しいなぁと思う時があります。
      「こうである」という事実と「こう思う」の感想とのバランスに悩みます。
      ちょうど良い具合だと、本の内容が通じやすいように思いますね。

      2016/08/07
  • アンデルセンの物悲しい物語に、藤城さんの光と影の切り絵がぴったりマッチした、とても美しい絵本

  • 以前から藤城清治さんが好きで
    フォローさせてもらっている方の本棚でみつけた本
    アンデルセンの原題は『びんの首』というお話しだそうです
    ぶどう酒のびんが、ガラス工場で作られた時から巡り巡るふしぎな旅をして、びんの首だけになって紅ひわの鳥かごの水のみになるお話し
    1頁目の英字新聞を壁にみたてたコラージュの影絵がいきなり素敵で、
    ぶどう酒のびんの最初の買い手のおうちの美しいお嬢さんのドレスのレースの影絵も素晴らしい♡
    お嬢さんの婚約者も男前(絵本で男前と思ったのはじめてかも笑)
    海の中の影絵も好き
    最後に出てくるミルテという木の影絵も好きです
    こちらの初版は1950年(26歳)で白黒、藤城清治さんはじめての絵本
    50歳の頃影絵がカラー主体になってもう一度カラーで作りたいと思い、絵本刊行から60年86歳の誕生日を目標に、長い人生を乗り越えてきた、経験と技術と感動のすべてをこめて作られたそうです
    (あとがきから)
    あとがきを読んで更に素晴らしい作品だと思いました(大好き♡)

  • 眺めれば眺めるほど、この作品に対する自分の気持ちをどのように表現したらよいのかわからなくなっています。

    原作はアンデルセンの作品で、物語としては、先が読めるようで読めない、でも、展開に無理はなく、ああ、こう来たか・・・と納得の展開。ちょっと哀しい場面もあるけれど、どきどきする展開もあって、人の一生も、モノの生涯も一つ所に留まることはなくて、流転だなということを意識させてくれる物語ではないかと思います。

    この本の魅力は、藤城清治さんの影絵。
    人物が作りこまれている場面はもちろん、「ぶどう酒びん」のたどる道を表した場面は、その色合い、動きから自分の目の前で映像で見せられているような錯覚にも陥ります。特に「お嬢さん」の「衣装」の表現は唖然茫然。冒頭と締めくくりに描かれている町や建物の遠景、近景が見開きで描かれているページが好きかもしれません。

    この書籍、大人の人への贈り物によいかも。

  • 藤城さんの影絵は、繊細で、緻密で、色彩が綺麗で、でもどことなく切ない感じで。
    会場で感じたことを心にとどめたくて、一冊だけ選んだのがこの本でした。

    ずっとそこにいて、けれども相手には気付かれない存在である、ぶどう酒びんの物語。
    挿し絵を、藤城さんが60年ぶりに描き直されたというのが、すごい!と思いました。

    以前出版された本とは、全く違う印象です。
    長い歳月を経て、更に深みが増した感じがします。
    何よりも、60年間現役であり続けていらしたという事実が、何にも増して、素晴らしいことだと思います。
    私もこんな風に、何かに長く打ち込んでみたいと思いました。

    物語も味わいがあり、アンデルセンの物語をまた読んでみたくなりました。
    物語って、いいですね。

  • アンデルセンの話に藤城清治氏の挿絵の本。

    絵はレースをあしらった帽子や服が緻密ですごかった。

    話は葡萄酒瓶として生まれた瓶が飲まれて破棄されて放浪する話。最初に登場した女性が、瓶の最終的な住処となるおばあさんと同一人物で短いながらも壮大なドラマを見ているみたいで面白かった。

  • 大人の絵本。世界中を旅して来たガラス瓶と自分の人生を重ね合わせてしまうだろう。これができるのは、大人だからだと思う。読んだあと、悲しいような、切ないような気持ちになる。 必ず、あとがきも読んで欲しい。あとがきもステキ。あとがきを読んだら、きっと絵本を読み返してしまうはず。

  • ざっと絵だけ見たのだけど、すべてが美しくて。いつか子どもができたら、もしくはだれかの子どもにあげる機会があれば買いたいなと思った。

  • なつかしくて、かなしくて、落ち着いた。

全43件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1924年東京に生まれる。慶應義塾大学経済学部卒業。12歳から油絵を始め、独立美術協会展、新制作派展に入選。名編集者の花森安治に認められ、雑誌「暮しの手帖」に影絵を連載。また影絵劇団・木馬座の上演、展覧会の開催など多彩な活動を続ける。1983年には本作『銀河鉄道の夜』(原作・宮沢賢治 講談社)で、BIB金のりんご賞を受賞。紫綬褒章、勲四等旭日小綬章など多数の受章、受賞歴がある。
著書に『セロ弾きのゴーシュ』『画本 風の又三郎』(ともに原作・宮沢賢治)、『ぶどう酒びんのふしぎな旅』(原作・アンデルセン 訳・町田仁)、『絵本マボロシの鳥』(原作、文・太田光)、『藤城清治の旅する影絵 日本』『ブーちゃん』『藤城清治 影絵の絵本 グリム』『藤城清治 影絵の絵本 アンデルセン』(以上すべて講談社)などがある。

「2022年 『新装版 銀河鉄道の夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

藤城清治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×