ぶどう酒びんのふしぎな旅

  • 講談社
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本棚登録 : 191
感想 : 35
  • Amazon.co.jp ・本 (68ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061324244

作品紹介・あらすじ

光と影に人生の万感をこめ、藤城清治、原点への挑戦。初めての絵本として選んだアンデルセンの名作を、86歳にして、新たに描き下ろす渾身の作品。

感想・レビュー・書評

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  • なんと懐かしい。読みながらどんどん記憶があふれ出した。
    これは、私が子供の頃初めて読んだ、藤城清治さんの影絵本だ。
    確か当時はモノクロだったと思う。
    お話の初めに登場するお嬢さんと、最後に登場する老婆が同一人物で、せっかくぶどう酒びんと再会できたのに互いにそれを知らないというラストにひどく納得がいかなくて、心にひっかかったままだったのだ。
    影絵の美しさとお話の不思議さ、そしてこのラストとで、長年心の奥に住み続けたお話。

    藤城さんが26歳の時初めて世に出した影絵の絵本で、原作はアンデルセンの『びんの首』。
    紆余曲折するびんの一生を、びん自身が語るというもの。
    60枚すべての絵に、人生の喜びや悲しみやはかなさが照らし出されて、この不思議なお話に深い叙情性を与えている。

    絵本デビューから60年目にあたる86歳の誕生日を目標に、カラー作品として蘇らせようと2,3年前から取り掛かってこられたらしい。
    そのどちらにも出会うことが出来て、私はなんと幸せ者だろう。
    びんに旅をさせるというアンデルセンの高い創造性と、藤城さんの万感の思いが高い精度の一冊となって、大人になった私の心にまた静かに住み始めている。

    今再読すると、このお話の流れのラストではびんと老婆は互いに知らぬままが良いのだと、それこそが人生の味わいなのだと、頷かずにいられない。
    それぞれが精一杯生きてきて、それゆえに尊いのだから。

    馬車に揺られて森に行く場面、夕日が沈む海、新月の夜の祭り、気球から落ちてかけらになるところ、鳥かごとおばあさん、最後の丘の上の屋敷まで、上質の美術本にうっとりして、その後じわじわとこみ上げるものがある。
    藤城さん自身の言葉も後書きにあるので、そちらもぜひお読みあれ。
    極上のワインをじっくりと堪能するような、そんな絵本。

    • だいさん
      nejidonさん こんにちは
      まず、長い しかし構成がうまい!
      自分の感想 自分の体験と 本書の内容が 同期している (冒頭で)
      ...
      nejidonさん こんにちは
      まず、長い しかし構成がうまい!
      自分の感想 自分の体験と 本書の内容が 同期している (冒頭で)
      幼児期へのフラッシュバックは 他人ことの陳腐な表現になりがちであるが ここでは同一感覚を味わえた
      自分の体験記憶を感覚的に相手に伝えることは難しい
      今回は衝撃が強かった
      2016/08/06
    • nejidonさん
      mkt99さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      まぁぁぁ!褒めていただいて恐縮です。
      自分ではどこが良いのか全く分かりま...
      mkt99さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます。
      まぁぁぁ!褒めていただいて恐縮です。
      自分ではどこが良いのか全く分かりません(笑)
      たぶんこの本が本当に素敵なので、こういうレビューになったのだと思います。
      出来ることなら、mkt99さんにもお読みいただきたいものです。

      この夏、友人の誕生日祝いにこの本を送るつもりです。
      自分でも手元に置いておきたい一冊です。
      ええ、そうそう焼酎でも飲みながら・・あれ?
      2016/08/07
    • nejidonさん
      だいさん、再訪してくださってありがとうございます!
      そ、そうですか?!
      まさか褒めていただくとは夢にも思わなくて心底驚いています。
      『...
      だいさん、再訪してくださってありがとうございます!
      そ、そうですか?!
      まさか褒めていただくとは夢にも思わなくて心底驚いています。
      『強烈』というのは、どこかに言ってはいけないフレーズでもあるのかと、
      眼を皿のようにして何度も読み返してしまいました・(笑
      まさか&まさかの評価をいただいて、こちらこそだいさんのコメントに
      花マルをさしあげたい気持ちです。
      ありがとうございます。

      レビューって難しいなぁと思う時があります。
      「こうである」という事実と「こう思う」の感想とのバランスに悩みます。
      ちょうど良い具合だと、本の内容が通じやすいように思いますね。

      2016/08/07
  • 以前から藤城清治さんが好きで
    フォローさせてもらっている方の本棚でみつけた本
    アンデルセンの原題は『びんの首』というお話しだそうです
    ぶどう酒のびんが、ガラス工場で作られた時から巡り巡るふしぎな旅をして、びんの首だけになって紅ひわの鳥かごの水のみになるお話し
    1頁目の英字新聞を壁にみたてたコラージュの影絵がいきなり素敵で、
    ぶどう酒のびんの最初の買い手のおうちの美しいお嬢さんのドレスのレースの影絵も素晴らしい♡
    お嬢さんの婚約者も男前(絵本で男前と思ったのはじめてかも笑)
    海の中の影絵も好き
    最後に出てくるミルテという木の影絵も好きです
    こちらの初版は1950年(26歳)で白黒、藤城清治さんはじめての絵本
    50歳の頃影絵がカラー主体になってもう一度カラーで作りたいと思い、絵本刊行から60年86歳の誕生日を目標に、長い人生を乗り越えてきた、経験と技術と感動のすべてをこめて作られたそうです
    (あとがきから)
    あとがきを読んで更に素晴らしい作品だと思いました(大好き♡)

  • 眺めれば眺めるほど、この作品に対する自分の気持ちをどのように表現したらよいのかわからなくなっています。

    原作はアンデルセンの作品で、物語としては、先が読めるようで読めない、でも、展開に無理はなく、ああ、こう来たか・・・と納得の展開。ちょっと哀しい場面もあるけれど、どきどきする展開もあって、人の一生も、モノの生涯も一つ所に留まることはなくて、流転だなということを意識させてくれる物語ではないかと思います。

    この本の魅力は、藤城清治さんの影絵。
    人物が作りこまれている場面はもちろん、「ぶどう酒びん」のたどる道を表した場面は、その色合い、動きから自分の目の前で映像で見せられているような錯覚にも陥ります。特に「お嬢さん」の「衣装」の表現は唖然茫然。冒頭と締めくくりに描かれている町や建物の遠景、近景が見開きで描かれているページが好きかもしれません。

    この書籍、大人の人への贈り物によいかも。

  • 藤城さんの影絵は、繊細で、緻密で、色彩が綺麗で、でもどことなく切ない感じで。
    会場で感じたことを心にとどめたくて、一冊だけ選んだのがこの本でした。

    ずっとそこにいて、けれども相手には気付かれない存在である、ぶどう酒びんの物語。
    挿し絵を、藤城さんが60年ぶりに描き直されたというのが、すごい!と思いました。

    以前出版された本とは、全く違う印象です。
    長い歳月を経て、更に深みが増した感じがします。
    何よりも、60年間現役であり続けていらしたという事実が、何にも増して、素晴らしいことだと思います。
    私もこんな風に、何かに長く打ち込んでみたいと思いました。

    物語も味わいがあり、アンデルセンの物語をまた読んでみたくなりました。
    物語って、いいですね。

  • 大人の絵本。世界中を旅して来たガラス瓶と自分の人生を重ね合わせてしまうだろう。これができるのは、大人だからだと思う。読んだあと、悲しいような、切ないような気持ちになる。 必ず、あとがきも読んで欲しい。あとがきもステキ。あとがきを読んだら、きっと絵本を読み返してしまうはず。

  • アンデルセンの話に藤城清治氏の挿絵の本。

    絵はレースをあしらった帽子や服が緻密ですごかった。

    話は葡萄酒瓶として生まれた瓶が飲まれて破棄されて放浪する話。最初に登場した女性が、瓶の最終的な住処となるおばあさんと同一人物で短いながらも壮大なドラマを見ているみたいで面白かった。

  • ざっと絵だけ見たのだけど、すべてが美しくて。いつか子どもができたら、もしくはだれかの子どもにあげる機会があれば買いたいなと思った。

  • なつかしくて、かなしくて、落ち着いた。

  • 展覧会で見て購入しました。展覧会でとても感動しました。アンデルセンにこんなお話があるなんて知りませんでした。

  • [墨田区図書館]

    図書館で立ち読み。
    悲話も多いアンデルセンにおいて、この話は悲しみもあるけれど少し哲学的。アンデルセン自体が何を語りたかったのか、人生の儚さか、袖擦りあう仲での稀妙な縁か。少し話のわかる子供や、大人にこそ読んでほしい。巻末には(影絵)作者の言しかないのでそこを窺い知ることはできないが、この本に関しては原作話以上に物語るこの影絵こそが真髄なのでこれでいいだろう。

    昭和生まれとしてこの絵に懐かしさを感じるのは、当時発刊された暮しの手帖などでこの話に限らず何かで見知っているからか、実は他の影絵も一律で眺めていて知ったつもりでいるからか?筆者が当時モノクロのこの本を出版した翌日には、まだ小さな町工場だった東京通信工業(現ソニー)からオファーが来たという、当時ハイセンスな新気鋭を感じさせる絵柄のせいかもしれない。表紙絵に惹かれて読んだ中のお話は、読み聞かせや子供への推奨用とは言えず期待していたような物語ではなかったけれど、自分用として読んでみたくなるお話だった。かなり訳は原作からいじっているらしいので他の訳や原作にも興味が湧く。少し探してみよう。

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著者プロフィール

1924年 東京生まれ。慶応義塾大学経済学部を卒業後、「暮しの手帖」に影絵を連載。影絵劇、人形劇の舞台公演など多方面で活躍。
  1983年 影絵本『銀河鉄道の夜』がBIB国際絵本原画展で金のリンゴ賞を受賞。
  1989年 紫綬褒章を受賞。2016年、21年の歳月をかけた『アッシジの聖フランシスコ』完成
  1995年 勲四等旭日小綬章を綬章。
  著書に『藤原清治影絵画集』『イエス』『天地創造』『ヨーロッパの教会』『アッシジの聖フランシスコ』などがある。

「2019年 『風の交響楽(シンフォニー)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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