- Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061324657
作品紹介・あらすじ
講談社出版文化賞絵本賞受賞
パリの路地裏に、ひっそりと息づいていた手の記憶。本造りの職人(ルリユール)から少女へ、かけがえのないおくりもの。
感想・レビュー・書評
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ルリユールおじさん
2011.04発行。字の大きさは…大。
いせ ひでこさんの素晴らしい本の再生の物語を、絵本で描いています。
最初本を手に取り絵だけを追って見ていきました。
いせ ひでこさんの絵は、青の使い方が素晴らしいです。
2度、3度と絵を見ていきます。
文字を読まなくても絵だけで物語が心の中で感じ取れます。
1冊の女の子が大切にしている植物図鑑が、ルリユールの手職人としてのお爺さんの人生と、小さい女の子の人生が重なっていきます。
いせ ひでこさんは、「本は時代を超えてそのいのちを何度でもよみがえるものだと」言っています。
私は、いせ ひでこさんのファンになってしまいました。
【豆知識】
「ルリユール(フランス語: Relieur)」は、主にフランスで製本・装丁を手作業で行う職人を指す言葉です。また、その工程自体もルリユールと呼ぶことがあります。
現在、ヨーロッパの製本術の正しい伝統は、主にフランスやフランス語圏においてのみ受け継がれています。フランス・パリ市内でも、今でも約50軒のルリユール製本の工房が現存しています。
多いものでは60余もの工程があるルリユールも存在します。
17世紀末に、活版印刷の発明によって出版・印刷・製本の境界が曖昧になった状況を背景に、フランス国王のルイ14世が下した「出版・印刷・製本業者は互いの職分を越えてはならぬ」という勅令により、製本の権利を失った出版・印刷業者が仮綴じ本を作られるようになました。この仮綴じ本や希少本の購入者が装丁や製本を依頼するのがルリユール職人です。
日本でも栃折久美子さんが「ルリユール工房」を開くなどして技術自体は広まってきています。
その影響もあって、日本でも伊藤篤さんなどを始めとして、数は少ないものの、ルリユール職人自体は存在しています。
《Wikipediaより》
2020.09.23読了 -
大切な本が壊れちゃったんだって?それならルリユールのところへいってごらん。
本を修理する「ルリユール」の仕事は一つ一つが手作業だ。
バラバラになった紙を糸でかがり、表紙の裏紙を付け、モスリンで背中を貼って、皮を薄く薄く削って表紙にして取り付け、最後は背中の皮に金箔でタイトルを打つ。
作家のように名前は残らない。だが良い手をもち、人々の思いを繋げていく。
<本には大切な知識は物語や人生や歴史がいっぱい詰まっている。
それらを忘れないように、未来に向かって伝えていくのがルリユールの仕事だ。(P45)>
そんなルリユールおじさんの魔法の手で大切な本を直してもらった女の子は、その本をずっと大切にしている。
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これはまあなんと贅沢なお話し。
仕事のことを「〇〇の手から成った」というように「手」というけれど、まさに人の手が繋いでいく。
ルリユールは「もう一度繋げる」という意味だそうです。 -
パリの古い街並。その一角で、ルリュールおじさんは、その父親の代から本の修復の仕事を続けている。少女はおじさんの工房で、おじさんの仕事をつぶさに観察。おじさんの仕事への思いを聞き、少女の大切な本の話をする。少女のボロボロになった本はおじさんの手で一針一針閉じ直され、取って置きの表紙が巻かれる。
芸術の街パリは、物を大切にし、古い物を直し、それがまた新たな芸術品となる文化なんですね。その思いが息づいているのですね。心洗われる本です。 -
フォローしてる方の本棚で見つけた。
光村図書の中学2年の国語教科書の読書案内でも紹介されていて、学校図書館にも購入した本だった。
しかしながら、未読。レビューを読んで「これは読まねば!」と、灯台下暗しを反省。
水彩画の柔らかいタッチが、パリの美しい風景をどこか懐かしさを感じさせるものにしている。
かつて、本は高級な知の財産であった。
何度も修復され読み継がれてきた。
それを支える職人達がいた…それが今ではごく僅かに。
手仕事は尊い。それをきちんと分かっている人々がいる。
大量生産・大量消費の影で失われていくもの。
富を築くことではなく、己の仕事の尊さに誇りをもつこと。拝金主義が跋扈する世の中では、そのような基本的なことでさえ忘れ去られてしまいがちだ。2020.1.4
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パリのまちに朝が来た。ソフィーが大切にしていた「植物の図鑑」が、バラバラになってしまい困ってしまいました。そこであるヒトに教えてもらったのが「ルリユールおじさん」でした。路地裏の静かな通りにひっそりとルリユールおじさんの店はありました。「ルリユール」とはもちろん“手作りの製本”のことです。ソフィーが歩き回って、やっと探し当てたお店でした…「はいっても、いいの?」
ふんわりとほんわかな水彩画タッチは優しい眼差しを感じる。ソフィーとルリユールおじさんが過去と現在、現在と未来をつなぐ絵本だった。
日本語タイトルは『ルリユールおじさん』なのに、表紙の上部には「RELIEUR ET ROBINIER」とフランス語の題があった。本作の中にも出て来るアカシアの木、つまり ROBINIERだ。本当はニセアカシアという植物名だが、日本ではアカシアの名前で通っている。RELIEURは製本者だから「ルリユール(製本者)とアカシア」ということなのだろう。
「ルリユール」ということばには
「もう一度つなげる」という意味もあるんだよ。
ルリユールおじさんが作り直したのはソフィーが大切にしていた”植物の図鑑”の本だけじゃなかった。最後のページには、成長したソフィーが植物学研究者となり大きなアカシアの樹の下にいる。ルリユールおじさんが本を再生している間に、アカシアの小さな芽が植え込まれた一鉢がソフィーの手の中にもあった。
P53、店頭に、ルリユールおじさんの手で新しく製本し直されたソフィーの植物図鑑があるのだが、その本の題は金文字で『ARBRES de Sophie 』(ソフィーの木たち)。その表紙にはアカシアの樹が葉をたわわに付けていて、まるで木漏れ日の中に本のタイトルが浮かびあがっているように私には見えた。ソフィが嬉しくてお礼に自分で用意した大切な小さなアカシアの樹を差し出すのも分かる。
現在、ヨーロッパの製本術の正しい伝統は、主にフランスやフランス語圏においてのみ受け継がれている。フランス・パリ市内でも、今でも約50軒のルリユール製本の工房が現存しているとあった。
第二外国語でフランス語を履修した際に「フランス人ほど母国語に誇りを持った国民はいない」と、先生が最初に話したのが思い出される。真面目な学生でなかったからか、フランス人気質は未だに不可解で、フランス映画や文学ましてや国策も独特に思える。 -
「ルリユール」という、これまで大事に読んでいた本に新しいいのちを与える、パリの歴史ある手職人の仕事を、この絵本で初めて知ったことで、本の素晴らしさを改めて実感し、ますます本が好きになりました。
更に、ルリユールということばには、「もう一度つなげる」という意味もあり、それは木が大好きで、世界中の木を見て歩きたい夢を持つ少女「ソフィー」と、ルリユールおじさんとのつながりが一つ。
ソフィーが新しいものでなく、今読んでいる植物図鑑が好きな思いに答えて、ルリユールおじさんが直したのは、アカシアや森の色や表紙など、ソフィーの愛着が更に強くなる、世界にひとつだけのもの。
もう一つは、ルリユールおじさんと父とのつながりで、そこには父子愛や伝統職人としての揺るぎない誇りを感じられ、「名を残さなくてもいい。ぼうず、いい手をもて」には、名声よりも本を第一にという強い思いと、仕事に対する確かな情熱と愛情を感じられて、胸を打たれました。
また、いせひでこさんの絵柄は、相変わらず味のある素晴らしさで、ソフィーとルリユールおじさんの、本を直している接近した描写も良いのですが、私的には、パリの街並みの中で、人を小さく引きで描いているパターンが印象に残り、特に公園に向かう途中の、ソフィーとルリユールおじさんの後ろ姿には、なにかハッとさせられるものがありました。
56ページの大作ですが、登場する全ての要素が、いずれも必要不可欠で、内容も飽きることなく、物語としての完成度も素晴らしいものになっており、子供だけでなく、大人が読んでも何か心に残るものがあると思います。私がフォローしている方々が、よくこの作品を読んでいるのも納得いたしました。
冒頭にも書きましたが、私にとっての、いちばんは本の愛しさが込められていること。
「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリユールの仕事なんだ」
「本は時代を超えてそのいのちが何度でもよみがえる」
この作品を読んだ後、ますます好きな本たちを、できるだけ末永く大切にしたい思いに駆られました。 -
水彩で描かれたパリらしき街の風景が美しくお洒落な絵本です。ソフィーは、お気に入りの図鑑の修復をルリユールおじさんに依頼します。ページの綴じ直しから、新しい表紙の素材選びといったプロセスが詳しく語られていて、ソフィーと一緒にワクワクしました。おじさんは、同じく職人だった父親を思いながら仕事を進めます。敬意と誇りを持って。大切なものを大切に伝えていく姿勢に心打たれます。
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『名をのこさなくてもいい。「ぼうず、いい手をもて」』60以上ある製本の工程をひとつひとつ教えながら、お父さんはルリユールおじさんにそう言った。なんて素敵な言葉なんだろう。
ルリユールおじさんの製本工程を見ているだけでほふってなる。
それは、彼が憧れのお父さんと同じ魔法の手を持てたからだと思う。
ルリユールおじさんとソフィーが会うまでの間がいい。
そして、噛み合っているのかわからない二人の会話もほのぼのとしていい。
淡い水彩画がまたいい! -
「わたしも魔法の手をもてただろうか」
壊れた本を綴じなおす「ルリユール」という職人と、とある女の子の出会いが描かれています。
どの業界でも職人の手がなす技を見ると、美しさを纏っており、心が整います。この絵本はその感覚が呼び起こされます。
わたしは、大学生になってから、図書館でこの1冊に出会いました。
図書館で読んだということもあり、ページをめくる音や、表紙を撫でる音などが耳に響き、1冊1冊への本への愛着がぐんと高まりました。
いせひでこさんの描く、心と自然が混ざり合うような美しい水彩画に惚れ惚れし、他の作品も読みたいと思うきっかけになった絵本です。
伊勢英子の作品






素敵なレビューですね!
いせさんの本というと、真っ先にこれを挙げる人が多いです。
好きな人がそれ...
素敵なレビューですね!
いせさんの本というと、真っ先にこれを挙げる人が多いです。
好きな人がそれだけ沢山いるということでしょう。
やまさんも同じように思われた、そしていせさんのファンになられたということが、とても嬉しいです。
不思議ですよね、絵本て。大人でも虜にしてしまう。
また良い本に出会えましたら教えてください。
朝から清々しい気持ちになりました。ありがとうございます!
「大きな木のようなひと」には、すっかり成長した少女が出てきます。
あとワタクシは次の言葉が一番印象に残りました。
...
「大きな木のようなひと」には、すっかり成長した少女が出てきます。
あとワタクシは次の言葉が一番印象に残りました。
「名をのこさなくてもいい。
ぼうず、いい手をもて。」
ありがとうございます(*^_^*)
朝一番で、Nejidonさん♪のコメントを見て、心...
ありがとうございます(*^_^*)
朝一番で、Nejidonさん♪のコメントを見て、心がほがらかになります。
きょう一日笑顔で過ごせるように頑張ります。
「大きな木のようなひと」
ありがとうございます、図書館に予約します(*^_^*)
「名をのこさなくてもいい」
私は、前によく歴史に名前を残したいと思ったことが有ります。
あ、あぁ、よい意味でですよ(笑)
いまは、もう思っていませんが(^-^)
「ぼうず、いい手をもて。」
こんなふうに師匠であり、父親から言われると人は真っ直ぐ育ちますね。
そして、いい仕事をする人になりますね。
いい子弟、いい親子関係が見えて来ます。
いせ ひでこさんの本を今後も読んで行きます。
Nejidonさん♪素敵な一日を(⌒-⌒)ニコニコ…