RNA学のすすめ: 生命のはじまりからリボザイム、エイズまで (ブルーバックス 812)
- 講談社 (1990年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061328129
作品紹介・あらすじ
tRNA、rRNA、mRNAか関与するタンパク質合成系の研究がRNA学の第一の隆盛期ならば、現在のスプライシング、自己スプライシング、リボヌクレアーゼP、ウイロイドやウイルソイドの自己切断するRNAの研究はRNA学の第二の隆盛期といえる。1989年10月、アメリカのコロラド大学のチェックとエール大学のアルトマンは、RNA触媒の発見の業績により1989年度ノーベル化学賞を受賞した。これを機会に、RNA学の新しい展開に一層のはずみがかかるものと思われる。
感想・レビュー・書評
-
【書誌情報+内容紹介】
書名:『RNA学のすすめ――生命のはじまりからリボザイム、エイズまで』
著者:柳川 弘志[やながわ・ひろし] (1944-) 生物学。ゲノムネットワーク解析、タンパク質の進化分子工学。
装丁:プラスM
イラスト:深谷良一
図版製作:難波公人
発売日 1990年02月16日
価格 定価 : 本体1,040円(税別)
ISBN 978-4-06-132812-9
判型 新書
ページ数 298
シリーズ ブルーバックス
通巻番号 812
◆わき役から主役へ、RNAの多彩な機能を探る!
“tRNA、rRNA、mRNAが関与するタンパク質合成系の研究がRNA学の第1の隆盛期ならば、現在のスプライシング、自己スプライシング、リボヌクレアーゼP、ウイロイドやウイルソイドの自己切断するRNAの研究はRNA学の第2の隆盛期といえる。1989年10月、アメリカのコロラド大学のチェックとエール大学のアルトマンは、RNA触媒の発見の業績により1989年度ノーベル化学賞を受賞した。これを機会に、RNA学の新しい展開に一層ははずみがかかるものと思われる”
(本書「エピローグ」から。)
〈https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000138629〉
【目次】
プロローグ RNA学の新しい展開 [003-007]
RNAは生命の起源を解く鍵をにぎっている RNAは多彩な機能をもっている
目次 [008-015]
第1章 生命の基本的しくみとRNA 017
生命の起源をどこに求めるか 018
化学進化説 地球外生命起源説 生命は海で生まれたり 生命と海の元素組成は似ているの 微量元素も生物機能にたいせつだ
生命とは何だろうか 026
生命の定義 アニミズムと生気論 機械論 生命は入れ物をもっている 生命は自己複製できる 生命は自己維持できる日 生命は進化する
細胞の基本構造 031
細胞の発見 細胞膜の働き 細胞膜は脂質で構成されている 細胞膜の構造。
遺伝子と複製 040
遺伝子の発見 DNAの構造 遺伝情報のからくり
タンパク質の本体 046
タンパク質は多彩な機能をもっている タンパク質の構造
RNAの機能と起源 051
RNAとは何だろう RNAは多様な機能をもっている RNAはDNAよりも先に出現した RNAワールド
第2章 RNAの基本的性格 059
ヌクレオチドの構造と機能 060
うま味のあるヌクレオチド ホルモンの作用のメッセンジャー 警報ホルモン、アラモン ATPはエネルギーの源 酵素の働きを助ける補酵素 脂質や糖合成の活性中間体
RNAの物理化学的性質 069
RNAはDNAよりも不安定 RNAの酵素的切断 核酸塩基は水素結合できる 核酸塩基はスタッキングする リボースの構造 RNAは多様な立体構造をとることができる
第3章 RNAの生合成 081
ヌクレオチドの生合成 082
プリン塩基の生合成は多段階 ピリミジン塩基の生合成は簡単 合成量は自ら調節する
DNAの転写とRNA合成 091
RNAはDNAから転写される RNA合成の特徴 転写の機構 転写のコントロール 真核細胞のRNA合成は複雑多様
RNAの加工処理過程、プロセッシング 098
RNAは転写後加工される 頭にキャップ、尻尾にポリ(A)がつく RNAはスブライスされる エクソンとイントロン タンパク質の立体構造の最小単位はモジュール スプライシングのしくみ tRNAとrRNAも前駆体から加工される tRNAや rRNAもイントロンをもっている RNAは編集もされる
第4章 RNAとタンパク質合成 119
タンパク質合成とRNAの役割 120
タンパク質合成は複雑
mRNA 122
mRNAはタンパク質合成の情報をもっている 遺伝コードの発見
tRNA 126
tRNAの構造決定 tRNAのクローバー葉構造 tRNAはアミノ酸を運搬する
rRNA 132
rRNAは巨大な集合体
タンパク質合成のしくみ 136
タンパク質合成は多段階 タンパク質合成の開始 ペプチド鎖の伸長反応 ペプチド鎖の伸長停止 ポリペプチドは合成後に加工される
第5章 RNAウイルスと病気 145
ウイルスの本体 146
ウイルスの発見 地球上の生物はウイルスに悩まされている ウイルスとは何だろう?
細菌ウイルス 151
RNAファージの構造 RNAファージの増殖
植物ウイルス 156
タバコモザイクウイルスは結晶になる タバコモザイクウイルスの構造 ウイルスの遺伝子の構造 ウイルスの感染のしくみ
動物ウイルス 162
インフルエンザウイルス インフルエンザウイルスの構造 インフルエンザウイルスの感染と増殖 新しいタイプはニワトリから
エイズウイルス 169
エイズとは エイズウイルスの発見 エイズウイルスの構造 エイズウイルスの感染機構 エイズウイルスの遺伝子は変化しやすい エイズ患者は増え続けている エイズウイルスの起源 エイズの治療はまだ難しい
がんウイルス 180
がんウイルスの発見 がんウイルスの遺伝子 がんタンパク質 ヒトはみな、がん遺伝子をもっている
第6章 RNA触媒、リボザイム 187
自己スプライシングするRNA 188
自己スプライシングの発見 リボザイム リボザイムは重合能力ももっている グループIIイントロン
リボヌクレアーゼP 196
リボヌクレアーゼPはtRNAの前駆体を切断する リボヌクレアーゼPの構造 触媒が作用する場所 リボヌクレアーゼPの二次構造の共通性
自己切断するRNA 203
ウイロイドは最小の病原体 ウイロイドRNAは自己切断する リボザイムの触媒機構は多様
生体触媒の分類と進化 211
生体触媒は四つに分類できる 生体触媒の進化
第7章 RNAと生命のはじまり 215
枝酸塩基の無生物的合成 216
核酸塩基はシアン化水素からつくられる 原始大気からもつくることができる
核酸塩基は地球外から持ちこまれた? 222
星間分子 隕石 彗星
リボースはどのようにしてできたか 228
リボースはホルムアルデヒドから合成された
ヌクレオシドとヌクレオチドの合成 230
核酸塩基とリボースの連結反応 ヌクレオシドは原始大気からもできる ヌクレオシドのリン酸化 なぜアミノ酸はL型で、リボースはD型か
核酸をつなげる 237
核酸の合成素材 RNAの無生物的合成 分子集合場を利用したRNA合成 ゲルの形成 新しいらせん構造の形成
原始RNA 246
RNA合成の出発材科 塩基対形成の多様性
核酸の鎖長伸長 249
RNAの鎖長伸長 配列の特異性 実験室で合成可能な鎖長 重複配列
RNAが先か、タンパク質が先か 253
パラドックスの検証 もっともらしいシナリオ
第8章 RNAの祖先を探る 259
原始生命の痕跡を分子で探る 260
進化を遡る 原始生命の化石 rRNAに基づく系統樹 RNAワールドからRNP、DNAワールドへ
レプリカーゼとRNAワールド 267
原始的なRNAレプリカーゼのモデル RNAの原始的な複製機構 RNAの進化機構
タンパク質の翻訳システムとRNPワールド 274
タンパク質の翻訳システム ウイルスRNAの3'末端tRNA様構造 タンパク質の原始合成システム RNAとタンパク質は助け合う
遺伝コードの起源 279
立体化学説 第二の遺伝コード、パラコドン 偶然凍結説
逆転写とDNAワールド 284
RNAからDNAワールドへ 逆転写 逆転写酵素 逆転写酵素の祖先
エピローグ(一九九〇年の新春に 柳川弘志) [292-295]
関連・参考図書紹介 [296-297]
【図表一覧】
表1-1 人体、海水、地球表層に存在する主要元素 022
表1-2 微量元素の海水濃度と生物学的機能 023
図1-1 大腸菌の走査型電子顕微鏡写真 034
図1-2 マウスの小腸上皮細胞の切片の透過型電子顕微鏡写真 035
図1-3 リン脂質の構造 037
図1-4 水中でのミセル、二分子膜ベシクル、単分子膜 038
図1-5 細胞膜の構造 039
図1-6 DNAとRNAの基本構造 043
図1-7 DNAの二重らせん構造と塩基間相互作用 044
図1-8 DNAの複製のしくみ 045
図1-9 ペプチドの構造 048
表1-3 タンパク質中の20種のアミノ酸 049
図1-10 現代生物学の遺伝情報についてのセントラルドグマ 055
図2-1 アデニルサン(AMP)の位置異性体 061
図2-2 種々のヌクレオチドの構造 062-063
図2-3 NAD^+の電子受容反応 067
図2-4 ワトソン・クリック型とフーグスティーン型塩基対 073
図2-5 コドンとアンチコドンのウォブル塩基対形成 074
図2-6 種々のウォブル塩基対 075
図2-7 リボースのフラノース環のねじれ型立体 076
図2-8 アデノシンのシン型とアンチ型構造 077
図2-9 RNAのいろいろな二次構造 078
図2-10 仮結びの構造 079
図3-1 プリンヌクレオチドの生合成の経路 084-085
図3-2 いろいろな前駆体からのプリン塩基の組立て 086
図3-3 代謝経路の進化 087
図3-4 ピリミジンヌクレオチドの生合成の経路 088
図3-5 プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドの生合成のフィードバック調節 090
図3-6 イモリの卵母細胞のrRNA遺伝子が転写されている様子 097
図3-7 真核細胞のmRNAの5'末端のキャップの構造 100
図3-8 エクソンのかきまぜ 103
図3-9 真核細胞のmRNAの前駆体のスプライシング 105
図3-10 スプライセオソームの集合とスプライシング 107
図3-11 大腸菌のSub B-Eと呼ばれるオペロンのtRNA前駆体 109
図3-12 大腸菌のリボソームRNAのオペロン 112
図3-13 tRNAのイントロン 113
図3-14 トリパノソーマのチトクロムcオキシダーゼIIIのm RNAの編集 114
図4-1 真核細胞のmRNAの構造 123
表4-1 遺伝コード表 125
図4-2 酵母アラニンtRNAのクローバー葉型二次構造 127
図4-3 酵母アラニンtRNAのL字型三次構造 129
図4-4 酵母フェニルアラニンtRNA中の三塩基対 130
図4-5 大腸菌の5SrRNAの二次構造 133
図4-6 大腸菌の16SrRNAの二次構造 134
図4-7 大腸菌の23SrRNAの二次構造 135
図4-8 タンパク質合成の開始段階 138
図4-9 タンパク質合成の伸長段階 140
図5-1 f_2ファージの電子顕微鏡写真 150
図5-2 MS2(f_2、R17)ファージの遺伝子 151
図5-3 MS2ファージの遺伝子のRNAの全塩基配列 152-153
図5-4 タバコモザイクウイルス粒子の電子顕微鏡写真 157
図5-5 タバコモザイクウイルスの立体構造モデル 158
表5-1 代表的な植物ウイルス 159
図5-6 インフルエンザウイルスの模式構造図 163
図5-7 インフルエンザウイルスの感染 165
図5-8 エイズウイルス粒子の構造 170
図5-9 エイズウイルスの阻害剤のジデオキシヌクレオシド類 179
図6-1 テトラヒメナのリボソームRNA前駆体の自己スプライシング 189
図6-2 テトラヒメナの自己スプライシングするRNA触媒の二次構造 190
図6-3 リボザイムによって触媒される重合反応 192
図6-4 逆スプライシング反応 193
図6-5 グループIIイントロンのスプライシング 195
図6-6 リボヌクレアーゼPによるtRNA前駆体の切断 196
図6-7 枯草菌と大腸菌のリボヌクレアーゼPのRNA成分の二次構造の比較 200
図6-8 263ヌクレオチドから成る、より簡単なリボヌクレアーゼPのRNA成分の二次構造 201
図6-9 ウイロイド、ウイルソイド、サテライトRNAの塩基配列と自己切断 204
図6-10 自己切断するオリゴリボヌクレオチドのハンマーヘッド構造 205
図6-11 13ヌクレオチドからなるリボザイムによるRNAの切断 206
図6-12 オリゴリボヌクレオチドによるクロラムフェニコールのアセチル基転移酵素のmRNAの切断 207
図6-13 バクテリオファージT4のRNA前駆体の自己切断 209
図6-14 ヒトδ型肝炎ウイルスのウイルスの自己切断、連結するRNA断片の二次構造 210
表6-1 生体触媒の分類 211
図7-1 ジグアノシンピロホスフェート(GppG)の構造 216
図7-2 5'-ホスファチジルシチジン 210
表7-1 GppGゲルの電子顕微鏡写真とその画像解析像 224
図7-3 5'-ホスファチジルシチジンから形成された直線状のらせん構造体の電子顕微鏡写真とその画像解析像 239
図7-4 5'-ホスファチジルシチジンの構造 240
図7-5 GppGゲルの電子顕微鏡写真とその画像解析像 241
図7-6 5'-ホスファチジルシチジンの電子顕微鏡写真とその画像解析像 243
図7-7 5'-ホスファチジルシチジンから形成された環状のらせん構造体の電子顕微鏡写真 244
図7-8 5'-ホスファチジルデオキシシチジンから形成された超らせん構造の電子顕微鏡写真とその画像解析像 245
図7-9 ヌクレオシドおよび非環状のヌクレオシドの構造 246
図7-10 プリン‐プリン塩基間の水素結合 247
図7-11 種々の原始地球環境下で合成された細胞様構造 254
図7-12 原始スープからRNAワールド、RNPワールド、DNAワールドへの発展 252
図8-1 5SrRNAの系統樹 265
図8-2 新しいドグマ 267
図8-3 テトラヒメナの改造リボザイムと外部鋳型のP1と呼ばれるRNA断片 270
図8-4 改造リボザイムによるオリゴヌクレオチドの連結反応と相補的な鎖の合成 271
図8-5 ハイパーサイクル 273
図8-6 原始的なタンパク質合成モデル 276
図8-7 ミニtRNA 281
図8-8 粘性細菌のDNAに連結した枝分かれRNAの二次構造 287
図8-9 逆転写開始の機構 288
図8-10 レトロウイルス様粒子の電子顕微鏡写真 289詳細をみるコメント0件をすべて表示