ルドルフといくねこ くるねこ (児童文学創作シリーズ)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 81
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061335219

作品紹介・あらすじ

ある日、川のむこうからドラゴン兄弟がやってきた。いったいなにをしに?最近、ブッチーのようすもなんだかおかしい。そして、ルドルフにも思いがけないできごとが-。変わらないようでいて、変わっていく世界のなか、それぞれが自分自身を見つめなおしはじめる、ルドルフとなかまたちの新しい物語。小学中級から。

感想・レビュー・書評

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  • 大人でも読めます。冒険しました。

  • 今回のプラスキーワード、それは“大事なのは自分は自分だということ”。
    人間のエゴをまざまざと見せつけられた末、読み手の胸に宿る思いとは…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ひょんなことから、岐阜からトラックに乗って東京にきてしまったルドルフ。
    あれから2年。
    ルドルフは今でも、イッパイアッテナやブッチーたち仲間に囲まれて、日々暮らしている。

    ある日、川向こうからねこのドラゴンズ京大がやってくる。
    なにやら川向こうでは、恐ろしい犬が、ある共通点をもった猫や犬を襲っているようで…

    そしてブッチーもまた、ある変化に直面していて…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ルドルフとイッパイアッテナシリーズ第3作。
    今回の“肝”は、ブッチーによるこの言葉、「(中略)おれは、飼いねこでもないし、ノラねこでもない。おれはねこだ。」
    (151ページ)に尽きるでしょう。

    ブッチーによると、ルドルフはもう自然に“自分は自分”という生き方をしているそうで、そんなルドルフを見てブッチーは、どこにいてもなにをしていても自分は自分だということが大事なのだ、と気づきます。
    自分自身がそんな生き方をしているという自覚のなかったルドルフでしたが、ブッチーの考えを聞いて、ルドルフ自身もだいじなのは「(中略)ぼくがぼくだということだ。」(156ページ)と心に刻むのでした。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    それにしても、なぜ恐ろしい犬は、とある共通点をもった犬や猫を襲っているのでしょうか?
    その理由を作り出してしまったのは、実は人間のエゴなのです。
    それがわかったときの、読み手が抱く、何とも言えない気持ち…
    人間同士のみならず、犬や猫にまで迷惑をかけているんじゃ、人間という生き物はどうしようもない存在じゃないか、と思ってしまうのです。

    人間とか、猫とか、犬とか、そういうことじゃなくて、大事なのは「自分が自分」だと言うこと。
    その言葉が唯一、この“恐ろしい犬”のエピソードから、心を包んでくれました。

    いろんな人間もいるこの社会だけれど、その中で便宜上、どのくくりに所属するとしても「自分は自分」です。
    “恐ろしい犬”を生み出してしまう人間もいれば、イッパイアッテナの飼い主だった日野さんや、可愛がってくれるおばあさんのような人間もいる。
    いろんな人間のなかで、自分がどう生きたいのか、自分のままで生きるというのは、どういう道なのか、それを見失わずに考えていくことが大事なんだよと、ルドルフたちの生き方から学ばせてもらいました。



  • ルドルフとイッパイアッテナの3作目。
    2作目に出てきたドラゴン兄弟がやってきます。自分たちの仲間がどこかの犬にやられたので、仇討ちをしてほしいと頼みに来ます。イッパイアッテナが出向くのですが。残ったルドルフとブッチー、また、人質ならぬねこ質として残ったドラゴン兄弟のテリー。鳩を捕まえたいというブッチーの願いで、3匹で電車で浅草に行ったり、ブッチーの飼い主が引越していたり。最後は、イッパイアッテナたちが探してるはずの犬がルドルフたちの街にきていて。ルドルフたちは、イッパイアッテナの帰りを待たずにその犬を成敗する。色んな出来事が盛り沢山でした。

  • 辰年用にドラゴンで検索したらヒット

    そんなの出てきたっけ?と思っていたら
    「市川の『ドラゴン』兄弟の」......そこかぁ

  • そんなイッパイアッテナに彼女が、と思ったけど特に進展はないようで。

    足の長いブルドック君は辛い半生でしたが、無事飼い主もみつかってよかったです。これからおばあさんちで幸せに暮らしてほしい。

  • ルドルフとイッパイアッテナのシリーズの3冊目。

    すっかり東京の半ノラ生活に馴染んでいるルドルフの元に、江戸川の向うの縄張りを仕切る猫のドラゴン三兄弟が訪れてくる。

    川向うの町では犬や猫たちが凶暴な野良犬に襲われる事件が起きていた。
    そこでドラゴン三兄弟は、ルドルフとブッチ―がデビルを倒したという噂を聞いて助太刀を頼みに来た。

    そういえばそのブッチ―の様子が少しおかしい。ちゃんと餌をもらえる金物屋さんの飼猫なのに「鳩を捕まえて食べたい」と言ってみたり、たわいなこととに苛々したり。

    ルドルフの代わりに川向うの町の野犬対決に行くイッパイアッテナ。
    ネコ質(人質の猫版)として代わりに残ったドラゴン三兄弟の末弟テリー。

    しかし凶暴な野犬は江戸川を越え、ルドルフの前に現れる…

  • 『ルドルフとイッパイアッテナ』シリーズについて、
    私自身が3部作を貫くテーマと感じたものを3つ選び、
    3冊分のスペースを使って書いている。

    『ルドルフとイッパイアッテナ』のスペースでは、
    「名前と所属、そして、自分は何であるのか」について書いた。

    『ルドルフともだちひとりだち』のスペースでは、
    「学ぶということ」について書いた。

    ここでは、相手の立場を思いやるということについて書いてみたい。

    本シリーズでは、敵役が2匹登場する。

    『ルドルフとイッパイアッテナ』では、ブルドッグのデビル。

    そして、『ルドルフといくねこくるねこ』では、ノラいぬが登場する。

    それぞれのクライマックスは、ルドが知恵を絞って、
    自分よりも大きな犬と対決するところなのだが。

    ルドの作戦もおもしろいのだが、
    本シリーズのさらに深いところは、
    敵役がただ敵役としてだけ存在するのではないということだ。

    勧善懲悪モノのように相手がただただ悪者として描かれるのではないのだ。

    ルドは、本からの知識と生きていくことを通して学んだ知識でバランスが取れている、
    イッパイアッテナから学んだことによって、
    ルドらしいところを残しつつバランスの取れたねこに成長していっている。

    もともとの勘のよさに洞察の深さが加わったのだろう。

    ちょっとしたことから相手の立場を推し量るセンスが育ったのだ。

    それが、悪い敵を完膚なきまでにたたきつぶしてやっつけておしまい
    という話にはならない深さをもたらすのだ。

    どうして相手がこんな行動を取ったのかを考え、その答えを見つける。

    それが敵を敵に終わらせずに、仲間にしていくことへとつながる。

    私たちは、立場が違う人とともに生きていかなければならない。

    どちらかが善でどちらかが悪ということではなく、
    その人なりの正義で生きているということもある。

    迷惑行動が、こんな自分は嫌いだとわかっていながら、
    そんな行動を取らずにはいられない
    心の弱さが露呈してしまった末の行動ということもあるのだ。

    子どもの世界にも存在するいじめに例えるならば、
    いじめられる側にも心の傷があるが、
    いじめる側にも心の傷があるということを
    教えてくれているともいえる。

    対立を超えて仲間になることのヒントが
    このシリーズの中にあるように思えた。

    さて、おまけに、3部作の続編はあるのかということについて考えてみたい。

    『ルドルフともだちひとりだち』と『ルドルフといくねこくるねこ』の間に
    14年もあったことから考えると、
    最初は前編後編で完結のつもりだったのではないかと考えられる。

    実際、ルドのメインテーマは、
    ほぼ『ルドルフともだちひとりだち』で完結しているのである。

    『ルドルフといくねこくるねこ』は、後日譚のような位置づけになるのではないか。

    でも、この後日譚は、ルドが咀嚼しなければならなかった現実から少し時間を置いて、
    さらに考えに深みをもたせた。

    そして、シリーズを通してずっと深めてきたテーマに
    ブッチーの言葉を借りてコタエを出した。

    例外的な時差を超えて、
    見事に3部作としてまとめられているのではないかと思う。

    だから、これはきっと3部作である。

    こんな言葉でこのシリーズに対する書評を終えたい。

    タイムマシンに乗って15歳の自分に会いにいけるなら、
    『ルドルフとイッパイアッテナ』と『ルドルフともだちひとりだち』を持っていく。

    そして、お前がちょうど 29歳になる頃に
    この続編が出るから絶対に売らずに持っておいて、
    続編が出たら買うようにと伝える。

    私にとってこの3部作はそういう本なのである。

  • ルドルフといくねこくるねこ 斉藤洋

    一が図書館に不在なので
    四と二に続いて三冊目となる
    何だか猫に親近感が湧いてしまったけれど
    何かが物足りないというか
    何故かもっと深いものを求めてしまう自分がおかしい

  • ブッチー!に驚き

  • ルドルフシリーズ3冊目を黒ねこのルドルフが書き終えました(笑)もう読み書きはすっかり得意になりました。イッパイアッテナには及びませんが~!イッパイアッテナは最近、英語の勉強を始めました。今回はブッチーの登場が多いです。金物屋の飼いねこ、ブッチー!ホームセンターができてブッチーの店は閉店、東京から千葉に引っ越しとなりました。ブッチーは残ることに。飼いねこからノラねこに。恋人(恋猫)のアメリカンショートヘアのミーシャから離れられないのか・・・・、ルドルフなど友達がたくさんいるからなのか・・・!(笑)

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著者プロフィール

1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。1986年、『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞受賞、同作でデビュー。1988年、『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞受賞。2013年、『ルドルフとスノーホワイト』で野間児童文芸賞受賞。「どうわがいっぱい」シリーズの作品に、「もぐら」シリーズ、「ペンギン」シリーズなどがある。

「2022年 『がっこうのおばけずかん シールブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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