- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061340107
作品紹介・あらすじ
生物社会の構成原理を生物と環境・社会論と歴史論の面から明確にし、今西生物学の所謂「棲み分け理論」をはじめとする思想的自画像風のユニークな文化論。生態学への関心が強い折その基本書として必読。
感想・レビュー・書評
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古典書。私にとっても尊敬する先生の本です。
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難読かつ論理の展開が圧倒的で呼吸をしていない。戦前に書かれた書物とは思えないほど、哲学的で自創的である。
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社会について、の章だけ。自分が知りたかったことの先がある気がした。
久しぶりに母校の図書館に駆け込んで読んでみた。「社会」の章。
棲み分けには空間的棲み分けと時間的棲み分けがある。
さらに流動性が低い社会の棲み分けは顕著(例えば植物)であるのに対して、流動性が高い社会(例えば水棲生物)の棲み分けは一時的、偶然の要素が介在する。
集団の繁殖が飽和状態を超えたあと同じ繁殖率でいくと世の中が不毛な生存競争の修羅場と化す。生物らしい円満な解決としてその生物社会が食う者と食われる者とに分業発展することで繁殖率を減退させずにその飽和状態を持続できる。つまり社会を分割する。大きくなった者はさらに大きくなる方向に複合同位社会を分離し、小さくなった者はさらに小さくなるように分離していく他ない。
そしてお互いにお互いを効果的に活かす配置方法を探る。
面白かった。自分が知りたいことが何なのかわからないが、この辺に何かある気がしてきた。どのような棲み分けがウィンウィンを最大化させるかとか、どのような場合に分離が必要とされるのかとかそういうとこ。
合意形成でも統合派と棲み分け派がいると思うが、棲み分けのdisadvantageはまさにこの過剰な二極化というものだとおもう。それが「富」基準であった場合に現代で問題になってる。しかし知識や暴力ならばどうだろうか。
そしてうまく棲み分けできていないからこそ労働環境が知識追求にとって危険な場所となっている。最適配置、意思決定、選択の問題とかはこの辺の話なのだろう。
しかしこの分野って何て分類されるの?彼は一応人類学と動物学者らしいが、あとは生態学とかも関係あるのか。 -
難解です。
しかしそれは、述べられている内容が難解だというわけではなく、筆者の修辞法によります。
昭和15年という時代に、応召を控えた筆者が遺書のつもりで決死の覚悟で書いたということにはもちろん十分な敬意を払わなくてはなりません。
しかし、遺書として文章の格調を高めようとするあまり、いたずらな修辞法が駆使され、これが文章を大変読みにくくしています。
筆者が伝えようとしていることは、そんなに難しいことではありません。
単純な事柄を、わざわざ難しい概念、修辞法で論述しています。筆者は自説を「愉快だ」と感じているようですが、読者は余分な読解力と想像力を要求され、いささか不愉快になります。執筆時38歳という「若さ」もあったのでしょう。
解説者は「現代の科学者を目指す若者に読んでもらいたい」と述べていますが、このままでは読めません。若者に読んでもらうためには、無駄な修辞をなくし、極めて平易に伝えることが必要です。頭が良い人でないと読めないというのではダメです。
演繹的・帰納的(つまり科学的)な論旨展開が行われているように見えて、典拠とする観察事実はほとんど提示されず、突然直感的な考えが述べられます。
「哲学的」と言われるのは、つまり非科学的ということです。
最終章は歴史ではなく進化について述べているのですから、単純に「進化について」とすべきでしょう。歴史という言葉が意味する事柄については何も述べられていません。 -
コンパクトなのに読み応えがあって面白い。
鷲田先生の本と併読していましたが、不思議に呼応するところがあったり、ユクスキュルの本とか、いろいろ連想が広がって楽しいです。私的に連想が広がる本というのは良書です。ウイルス進化論の本で今西進化論に触れていて興味があったので、その一端に触れられてエキサイティングでした。 -
久しぶりに「生物学」関係の本を手にとってみました。著者は「棲み分け理論」で有名な今西錦司氏です。
現在では、本書で提唱されている今西氏の棲み分け理論や生態学的進化論は広く支持されている学説ではないとのことですが、生物社会学ともいうべき科学哲学的著作としてはユニークで、なかなか興味深いものではありました。
加えて、「序」にて語られる今西氏の本書執筆への思いは特に印象に残ります。それは、拡大する戦火を前に、いつ果てるとも知らぬ自らの足跡の今を書き留めておきたいとの強烈な意志でした。 -
★3.5。
ただ戦前に書かれた奇跡に敬意を表して★4つ。
解説にて哲学云々と解説されているように、生物学の話というよりは科学者としての立ち位置・決意表明と理解すべきだろう。
そうであれば時代が古い云々という議論はナンセンス、科学的態度の本質というものは今も昔も何も変わらない。
この本は間違いなく一級品、★が5つでは無い理由は単純に当方の理解力不足によりこの本に完全には追いつけない、ただそれだけです。 -
機械論的ダーウィン進化論に対して新たな視角を提供した著者の論理展開は、読んでいて非常に良い頭の体操となるものであった。同時に、人間の審美眼をくすぐるような蝶の美しさや貝殻の模様の微細さ等、目的論的に捉えないで自然淘汰の論法に一辺倒した場合には、ナンセンスとなりうる事象が、今日の自然科学では垣間見ることができるのも事実だと感じた。
社会科学に携わることが今後多いだろうと思われる自分にとって、構造的解釈に囚われすぎずに目的論的解釈の意義を見直す余地が生まれたことは大きな収穫であったと言ってよいだろう。 -
(1972.07.28読了)(1972.02.05購入)
*解説目録より*
ダーウィンの自然淘汰説を超える独自の進化論の構想を、思想的自画像風に描くユニークな文化論。科学文明の危機に際し、生態学への関心が強い折、その基本書としても必読の書。 -
単なる生物学の本というより哲学の本として読んでいました。この世界にあるもの全てが違っていて、全てがどこか似通っている。世界のつながりを考えさせてくれる本です。