- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061340206
感想・レビュー・書評
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本当は1968年に講談社から出た単行本のほうを読んだのだが、検索で引っかからなかったため此方に。
今日まで未解決のまま続く水俣病。事件の外面的事情は色々なところに書かれているが、この本は現地の人々の声をルポした筆者がその時系列順にそのまま綴ったというドキュメンタリーな一冊。
水俣病は何が問題だったのか。この事件が被害を受けた人々にどのように捉えられていたか。そしてその加害者側の人々の対応はどうであったか。
水俣病を患う人々、とくに医学的に証明されている胎児生水俣病を病んでいながら、それが政治的には認められていないため未認定患者として打ち捨てられている人々の問題は、たんに水俣病患者だけの問題ではない。
東大や東電、そして政府の安全神話に騙され家や仕事を追われてもさしたる保障を受けられない人びと、東京でその安全神話を利用し享受しながらファッションの脱原発を唱える人びとの構造。
身分相応の会社に行けといわれて就職先を失い、あるいは労基法を遵守しない会社に追いやられ、精神を病み、あるいは過労し、あるいは死んでいく人びと。その上にあぐらをかいて、努力が足りないとかマッチングとかという言説を駆使して搾取を続ける人びとの構造。
枚挙にいとまがない。人の命を脅かしながら安穏としているこの社会、あるいは人びと。水俣病はこれの縮図といっていい。それを真摯に書き写したのが石牟礼である。社会問題が山積する今日、もう一度、多くの人にこの本を手にとって欲しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の現代史を考える上で避けては通れない一冊。
未だに裁判が続く理由は何なのか、当たり前の日常がどうやって奪われたのか、その声をどう届けようとしたのか等々、色々考えさせられました。 -
水俣病に苦しむ人びとの声にならない声を、著者がことばに書きとめた作品です。
本書の巻末に収録されている渡辺京二の「石牟礼道子の世界」には、本書は正確なインタヴューやルポタージュではなく、著者自身が「だって、あの人が心の中で言っていることを文字にすると、ああなるんだもの」と語っていたことが明かされています。こうした著者のスタンスは、病に苦しむ人びとがうしなったものがいったいなんであったのかを的確にえがき出しているように思えます。
病状などについては、本書のなかでしばしば引用されている水俣病にかんする記録の文章で客観的に示されており、また患者の状況についてはジャーナリスティックな立場からの取材によって明らかになるはずです。しかし、病によってうしなわれた、それまで彼らがあたりまえのものとして過ごしてきた日常は、われわれにとって容易に知ることのできるものではありません。著者は、そうした患者たちの声なき声をことばにすることで、その困難な課題を果たしているように感じられました。 -
すごい本です
疲れました -
B916-イシ 000367250
読むのが辛い重い本であることを始めに断っておきます。それでもなお医療従事者を志す若い方に是非読んでもらいたい一冊です。有機水銀中毒は特徴的な神経症状を呈するので、皆さんが勉強している多くの教科書の中で触れられているかと思います。
この疾患は公害病として熊本県の水俣湾や新潟県の阿賀野川(新潟医療福祉大のそばを流れるあの阿賀野川です)流域で発生し多くの不幸をもたらしました。教科書の数行の記述の裏にあるリアルな姿がこれです。神経症状の辛さ、活計を失う苦しみ、極限状態で発揮される人間性、このような地獄がなにゆえ「浄土」なのか。同時に偉い人の都合が悪くなれば民衆なんていとも容易く棄てられるのだということがよくわかるでしょう。
医療従事者を目指す皆さん、新たな公害が起きた時あなたなら何をしますか? -
感情論に走ることなく、淡々と・・・それでいて、胸に迫ってくるものがあります。私たちが今ここに在ることの意味について、考えさせられます。
鹿児島大学 / 教育学部
教員名 丹羽佐紀 -
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