ハーレムの熱い日々 (講談社文庫)

  • 講談社
3.87
  • (34)
  • (46)
  • (51)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 296
感想 : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061340992

作品紹介・あらすじ

黒人スラム街にともに暮らし、黒人たちを撮り続けた、フォトジャーナリスト・吉田ルイ子――貧困・麻薬・売春・差別に象徴されるニューヨーク・ハーレムで、人間が人間であることを取り戻すことに目覚めた黒い肌の輝きを、女の感覚とカメラの冷徹な眼でヴィヴィッドに把えたルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • エネルギッシュで今読んでも全く色褪せを感じない生気あふれる一冊、名著です!

    圧倒的に理不尽な人種差別に苛まれ、ドラッグに売春が常態化していて、住人は外の世界をほとんど知らず知る機会もない。そういった外側がある一方、明るさ、優しさ、助け合いに囲まれた人間味あふれる内側もある。
    本書はその両側面をリアルに描いてくれて、読み終えてとても熱い気持ちになりました!

  • 自分の感情の矛盾と葛藤しながら
    ハーレムや黒人達の姿を真っ向から捉えた
    素晴らしい作品だった
    ここ最近読んだ中でもグッとくるものがあった

  • 名著。公民権運動の熱気に燃える黒人音楽が一番発展していった時代の熱気が伝わってくる。

  •  この本は、日本でも屈指のエリート女性が、白人の左翼を彼氏にして、黒人のスラム街に住むところから、はじまる。
    【このキャバレーにも週末には白人の客が四、五人来るが、みなヨーロッパ人か、黒人のボーイフレンドを持っている白人の女の子くらいだ。】
    【いかに人種差別に反対しているとはいえ、アメリカ白人であるロバートにとってはハーレムの黒人バーはあまり居心地のいいところではないらしい】
    【突然、黒メガネをかけたオカッパ頭の、青白い女性が私に日本語で話しかけてきた。「アンタ、日本人?」きょとんとしている私を見て彼女はつづけた。「アタシ、福岡なのよ。ブロンクスから今晩遊びに来たのサ」
     ミシェルが言った。「見た? あの穴だらけの顔。相当すすんだADDICT(麻薬中毒者)だよ」そういえば黒メガネの下の彼女の顔はひからびていて、海綿のようにブツブツしていた。実をいうと、これが麻薬常習者だという人に会ったのは、この時の日本女性が初めてだった」】
     はじめて出会った麻薬中毒者が日本人女性というのは味わい深いものがある。

    【黒人と同じ奴隷生活を送らされてきた日系人にくらべ、全く人種差別の被害者としての経験を持たない日本からアメリカに、商用あるいは公用で渡っている日本人の立場と感情は複雑だ。こういった日本人の多くはインテリで、しかもその世界のエリートが多い。そしてドイツ哲学を学び、フランスの芸術を愛し、英語を上手にしゃべる。】
    【人種差別の観点から興味をもつジャーナリストもいたが、ほとんどの人の質問は共通していた。「一度、ニグロの女を抱いてみたいんだが、いい子いないかね。ただし、清潔でなくちゃいやだヨ」】
    【「うちの子は、黒人の一人もいない学校にいっておりますのよ」と自慢げにしゃべる日本人のエリート夫人になると鼻もちならない。】
    【在ニューヨークの日本人クラブで会う婦人たちは、私がハーレムに住んでいると知ると、必ず日本人特有のねちねちとしたいじわると軽べつの眼差しで私を見る。が、私が慶応大学出身で、フルブライト留学生とわかった瞬間にその態度は一変する】
     こういうことをガシガシ書くので面白い。ああ、怒った時のリベラルって100年は変わらないなと思う。
     そしてハーレムにて、暴動騒ぎが起こる。家の周りも、車もめちゃくちゃにされる。その時、はじめて彼氏のリベラル白人がぶちぎれる。
    【車への感傷ではない。こわした黒人たちへの怒りでもない。人種差別問題に無知な私に、黒人を軽蔑したり、差別したりする言動をとってはいけないとあれほどいっていた理想主義者のロバートが、自らそれを破ったことが悲しかったのだ】
    【ロバートが、「イエロー・モンキー!」と言ったのを、台所で片づけ物をしていた私は聞きのがさなかった。】
    【はっきり言える事は、白人の持つエリートイズムが生理的にたまらないということだ。特にリベラルといわれる白人は始末が悪い。】
    【「自分は白人以外の者になれるなら何でもいい」この言葉はリベラルといわれる白人の苦痛を端的に表現した言葉だ。】
    【彼らはマゾ的に殺人者とか侵略者、殺りく者というような名を自分たち白人帝国に与え、被抑圧者である黒人に許しを乞うために黒人運動に入っていく。だが、彼らのそうした行動は、自己憐憫であり優越感の裏返しでしかないのだ。】

     黒人がみな金持ちになれば、問題は解決だろうか?
     著者は経済的問題はないが、イエローのちびどもの一人として、「オリエンタルだと思って馬鹿にされないように」と注意される側である。
    【リベラルは、結局は資本主義的搾取にばかり、人種的偏見のせいにしている】と著者は嘆息する。

     この本の面白いところは、商業界、広告界での、ちょっとした売春あっせんのお願いもいろいろ書かれてある。日常茶飯事として書いていて、しかも本人が頼まれているのが面白い。
     ジェーンという黒人女性は一晩300ドル以上で、いわゆる高級娼婦である。吉田ルイ子いわく「公衆便所的売春婦」とは違う。(吉田氏はビッチをはっきりと肉便器と呼ぶから好感が持てる)
     ある時、吉田ルイ子は、お客から、大切なクライアントのために知り合いの日本人の女、黄色人種の女で、一晩寝てくれるのをあっせんしてくれと頼まれる。お礼にその黄色人種に3千ドル、吉田ルイ子にはカラーテレビと200ドル渡すという。しつこく言ってくるので、困った吉田は大学の同僚に電話すると「おれが知っているのは、日本の商社の契約で来ている元銀座のホステスだけど、英語はあんまりできないし、さる会社の専属だからナ。駐在員のかあちゃんでアルバイトで時々やっているのはいるけど、そんな大役できるかナー」と、めちゃくちゃ生々しい返答。今もそうかもしれないが、会社が女をかかえて、男性の慰安のために連れていくし、女自身も海外でたくましく、ちょっとした売春をしているということだ。出張で一緒に連れて行った奥さんも、たくましく、黄色人種であることをいかして頑張っている。
     吉田氏は、慶応大学法学部でフルブライト交換留学という恐ろしい経歴なので、自分より低い日本人女性は結構生々しく遠慮なく、そういうことをがんがん書く。

    【おれも一時は、鉄の塊みたいに強い黒い女より、綿みたいにやわらかい白い女の優雅さ、か弱さに魅かれていた頃もあった。そして、その女の可れんさに惚れたこともあった。しかし、白い女は、黒人はセックスの塊だという神話を信じ込まされて、黒人の男に超男性的であることを期待しすぎるのだ。そして”もっと、もっと”と言って、白人の男には決して見せないセックスポット的な面を露骨に黒い男に出してくるんだ。
     おれはうんざりした。おれだって人間だぜ。性行為はあくまで『からだ』と『あたま』の共同作業なんだよナ。
     これに対して、黒人の女で社会的に少しでも上へのぼろうとする女は、『あたま』を支配している白人の男の知性と雰囲気に酔うんだ】

     著者は自問する。この黒人への気持ちは、同じカラードということが原因だろうか。いや違う、もっと大きな愛情だと、考える。

     本著の中で、暴動騒ぎがあって、刑務所から逃げ出してきたばかりの連中で殺気立った店内で隠し撮りした写真はほんとうに素晴らしい。差別だの日本人へのメッセージだの色々あるが、198ページがこの本の中心であり、穴のあくほどみるべき世紀の名写真だ。

     そうして彼女は「焼き鳥屋に行きたい。トンカツが食べたい。あじのひらきが食べたい。新宿の喫茶店に行きたい。ごちゃごちゃした日本の飲み屋に行きたい」と言いながら、アメリカを去る。あっさりしたものである。こういうところも、良いと思える。

     アメリカにおける、日本のトップエリート女性の、一大青春記である。

  • 著者は、60年代、アメリカに留学し、ハーレムに暮した女性写真家。

    黒人が声を上げ始めたころ、アメリカ激動の時代を自らの目で見たひと。
    アメリカという国が抱える病理や、有色人種である自分の置かれている立場など、冷静な目で書いている。

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2015年度第2回図書館企画展示
    「大学生に読んでほしい本」 第2弾!

    本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。

    向井隆代教授(心理学科)からのおすすめ図書を展示しています。
        
    展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。
        
    開催期間:2015年6月15日(月) ~ 2015年9月30日(水)
    開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース

    フォトジャーナリストである著者によるルポルタージュです。大学生の時に読み、アメリカという国について、そしてそこに日本人として暮らすことについて考えるきっかけとなった1冊です。解説を書いておられる猿谷要氏の著作もお勧めです。

  • [ 内容 ]
    黒人スラム街にともに暮らし、黒人たちを撮り続けたフォトジャーナリスト吉田ルイ子――貧困・麻薬・売春・差別に象徴されるニューヨーク・ハーレムで、人間が人間であることを取り戻すことに目覚めた黒い肌の輝きを、女の感覚とカメラの冷徹な眼でヴィヴィッドに把えたルポルタージュ。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 他国の人権にはうるさいアメリカも、人種差別が法的に解消されたのは1964年。

    その頃のN.Yのハーレムでの生活が、そこに暮らしたひとりの日本人女性によって文章と写真でついこの間のように描かき出されています。

    そんな時代と地域で、吉田ルイ子がカメラのファイダを通してとどめた画像は、時に活きいきと、時に緊張感をもって、
    読者の心を直観的にとらえます。

    この本が刊行が1972年。文庫化は1979年。手にした文庫本は47刷。
    40年以上も読み継がれてきました。

    前半は、N.Y.ハーレムに住むことになった経緯、同じ団地の黒人家族たちの様子、街角の情景など。
    後半は公民権運動が影響した黒人たちの意識の変化を
    描いています。

    自分自身や黒人の仲間同士が後押しして負の螺旋を転落していく例に溢れています。

    子ども時代からの体験や親の態度で差別を常識とする意識、男の無責任、無知と閉塞感、麻薬。
    豊富な体験に裏打ちされたエピソードで、小難しい理屈や解説を抜きに生々しく伝わってきます。

  • 十代のころ、表紙の写真に引き寄せられるようにして手にした一冊。

    差別というものが当たり前であった時代が、ちょうど動き出した頃のハーレム。
    「ブラック イズ ビューティフル」と声をあげ始めたそのパワーとエネルギー。

    ハーレムでともに暮らし「隣人」として、時にジャーナリストの目線で、肌で感じた体験が愛すべき彼らへの思いとともに詰め込まれた作品。
    今読んでも生き生き。文字通りの「熱」を感じた。

  • 黒人と西瓜の関係は興味深い。他にも、1960年代のアメリカの雰囲気がよくわかる

全44件中 1 - 10件を表示

吉田ルイ子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
宮部みゆき
ヴィクトール・E...
有効な右矢印 無効な右矢印

ハーレムの熱い日々 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×