天の魚: 続・苦界浄土 (講談社文庫 い 11-2)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061341166

感想・レビュー・書評

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  • (2016.09.24読了)(2016.09.14借入)
    副題「続・苦海浄土」
    単行本は、1974年に筑摩書房から刊行されています。
    「続・苦海浄土」と副題がついているのに、第七章末尾には、「苦海浄土・第三部終」と記してあります。どうして第三部なのでしょう。どこにも説明がありません。
    第二部は、「神々の村」と題されて、この本より後(2006年10月)に刊行されています。

    第三章鳩、第五章潮の日録、第七章供護者たち、が長いですね。
    自主交渉派の人たちによるチッソ東京本社での様子や水俣工場前での座り込みの様子が描かれています。
    亡くなった子供が解剖されてその亡骸を背負って、線路を歩いて帰るさまは、胸に迫ります。
    チッソと患者の直接交渉の部分は、録音してそれを後で書き起こしたもののようです。
    土俗(患者)と世俗(会社)のせめぎあいです。患者側は、水銀中毒によって味わった肉体的、精神的苦痛を何とかわかって欲しいと訴えますが、会社側は、一人当たり3千万円も支払ったらつぶれてしまうので、国の仲介で何とか切り抜けたいということなので、話はかみ合いません。
    患者とチッソの社長の間で、血判書を作ろうと指をカミソリで切りますが、深く切りすぎて血が止まらない、と慌てるさまなどは、真剣にやっていることではあるのですが、滑稽に感じられて、申し訳なく思いながら読みました。
    社長に、あなたも水銀を飲んでみなさいと言ったら、飲んでみますので、くださいと言われて、水銀の用意がなかったという場面は残念に思いながら読みました。
    東京での交渉は、長引いて、多くの方々の支援によって支えられていたんですね。支援者の方々の様子も詳しく描かれています。米を50キロとかまとめて買いに行くので日によって買いに行く米屋を変えていたとか。石牟礼さんの泊まっていたホテルの部屋に支援の学生たちが風呂に入りに来て、多くの人たちが入るので使い終わった後はものすごく汚れてしまうので、石牟礼さんが必至できれいにしないといけなかったとか。
    国とチッソと被害者の和解が成立するのは、1996年5月ですので、この本が刊行されてから22年後です。戦いはまだ続きます。

    【目次】
    序詩
    第一章 死都の雪
    第二章 舟非人
    第三章 鳩
    第四章 花非人
    第五章 潮の日録
    第六章 みやこに春はめぐれども
    第七章 供護者たち
    『天の魚』覚え書き  見田宗介

    ●試験(120頁)
    ひとびとは「水俣病の認定」とはいわない。水俣病の試験だと笑い話のようにいう。
    認定され、試験にとおり、「登録」されることは、同族共同体から上昇して「出世」し、「公害貴族」などとチッソ側があやつる世論にいわれたりすることになる。水俣病はこのようにして出世する。(123頁)
    ●市民有志一同(238頁)
    「患者さん、会社を粉砕して水俣に何が残る、と言うのですか!」
    というビラが出た。それは新聞折り込みにして水俣全市に配られた。市民有志一同という十五名の連名で「明日の私たちの生活をだれが保証してくれるとでも言うのか」という副タイトルがついている。

    ☆関連図書(既読)
    「水俣病」原田正純著、岩波新書、1972.11.22
    「新装版苦海浄土」石牟礼道子著、講談社文庫、2004.07.15
    「水俣病の科学 増補版」西村肇・岡本達明著、日本評論社、2006.07.15
    「谷中村滅亡史」荒畑寒村著、新泉社、1970.11.20
    「田中正造の生涯」林竹二著、講談社現代新書、1976.07.20
    「沈黙の春」カーソン著・青樹簗一訳、新潮文庫、1974.02.20
    「奪われし未来」T.コルボーン・D.ダマノスキ著、翔泳社、1997.09.30
    (2016年9月27日・記)
    (表紙カバーより)
    「苦海浄土」に続き、生死のあわいにある人々へむけて綴った鎮魂の記。
    豊饒なる不知火海から、天の水と天の魚を奪い、やがて二十年に亙って人間の命を破壊しさった、世紀の受難というべき、水俣公害。
    〝東京の空の美しゅうございました……〟誰でも望む言葉であって、誰でも云えない言葉になった。80年代に必読の一冊。

  • 2021/10/29購入

  • 水俣病の被害を直接訴えるため、東京丸の内のチッソ本社に赴いた川本輝夫たちの行動を追い、チッソとの交渉の様子を克明に記しています。

    『苦界浄土』にくらべると、患者たちの苦しみとその活動の困難さを、いい意味でも悪い意味でもジャーナリスティックな側面が強い印象を受けました。もちろん著者は、どこまでも川本たちに寄り添う観点に立って、彼らの活動の実情をていねいにえがいているのですが、水俣病をめぐるさまざまな立場からの働きかけが錯綜している状況についても触れざるをえず、そのことがこうした印象をあたえる原因になっているのかもしれません。

    あるいは、病と世間の無理解に苦しめられてきた患者たちの時間の長さとくらべて、本書でえがかれている過程が限定されていることが、上述の印象につながっているのでしょうか。

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著者プロフィール

1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。2018年二月、死去。

「2023年 『新装版 ヤポネシアの海辺から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石牟礼道子の作品

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