天使の傷痕 (講談社文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 189
感想 : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061360419

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  • 第11回江戸川乱歩賞。
    新聞記者・田島が恋人の昌子とハイキングをしているところで殺人事件に出くわす。田島は特ダネを得るため事件の真相に近付くが、さまざまな手がかりから、真犯人は予想外の人物であることを確信する。
    真犯人が逮捕された後も、田島は納得がいかずさらに踏み込んで調査するが、1人の人間では解決できない問題が立ちはだかる。
    西村京太郎といえば鉄道ダイヤを使ったミステリーを連想しがちだが、本作品は社会的問題(アルドリン奇形児、田舎の閉鎖的な風習など)を取り扱った、重厚なミステリー。

  • 気を取り直して読んだ西村京太郎、乱歩賞受賞作と聞いて若干期待したのが間違い。それにしても暗い

  • 作者の初期のシリアスな長編。当時の社会現象をネタに、社会の矛盾を解決するのではなく、弱いものへ順送りにして、溜め込んで隠蔽してしまう(今も変わらない)日本の風土の歪を、主人公の新聞記者の口を借りて告発する。そうした社会派の作品なのに、ミステリとしてきちんとエンターテイメントしているのが、この作者らしい。

  • ストーリーテーラー。コンパクトで腹五分目。もう少し装飾してもいいと思う。

  • 武蔵野の雑木林でデート中の男女が殺人事件に遭遇した。
    瀕死の被害者は「テン」とつぶやいて息をひきとった。デート中、直接、事件を目撃した田島は新聞記者らしい関心から周辺を洗う。

    殺害された被害者が残した「テン」という言葉は、「天使」と言いたかったのだということは早々に明らかとなる。
    だが、その「天使」がどういう意味を持つか、それがわからない。
    この点だけを考慮してジャンル分けをするのならば、本作は「ダイイングメッセージもの」ということになるのかもしれない。
    手製の凶器、いじられていた標識、いたずらのように抜き捨てられていた案山子、子供が拾って食べ、食中毒を起こしたという海苔巻、不自然なまでに写真を破棄してしまいたがる恋人。
    いくつかの伏線がラストに向けてきっちりと集約され、事件は解決を見る。
    トリックは(今の時代に読めば)いささか単純で面白味がないものの、いかにも正統派のミステリらしいトリックだ。
    けれど、そんな本格ミステリの意匠を借りながら、本作はどちらかと言えば社会派ミステリに属するような結末を迎える。

    僕は小学低学年のころ、学校のテキスト(確か「夏休みの友」みたいなものだったと思う)でサリドマイド児という言葉を知った。
    「サリドマイド」という名前の睡眠薬を妊婦が服用すると高確率で手足に障害を持った子供が生まれるという話で、学校のテキストに載っていたのは「それでも強く元気に生きている児童」の話を描いた道徳的なノンフィクションだったと記憶している。
    本作に登場する「アルドリン」という睡眠薬がこの「サリドマイド」のパロディであるのは間違いない。
    僕は当時、子供だったから障害を持って生まれてきた子供たちを社会がどんな風に受けとめたのかは知らない。
    ただ、学校のテキストに書かれていたような奇麗事ばかりでなかったであろうことは容易に想像できる。
    時代が時代だけに、本作で書かれているような問題が実際に生じたのではないかと思う。

    物語は、我が子の写真を撮ってくれ、世間にこのような子がいることを知らしめてくれ、と願う母親の言葉で幕が降りる。
    西村京太郎さんはこのラストシーンを描くために、この作品を書いたのではないかと思った。

  • オススメ本。雑木林をハイキング中の男女が殺人事件と遭遇する。胸から血を流した瀕死の男は『テン』という言葉を残して絶命する。事件に遭遇した新聞記者・田島はその言葉の意味を調べようとするが...。展開が早いので、サラッとしたミステリかと思いきや、胃に鉛を詰められた様な重みの結末にただ驚くばかり。初期の西村作品が社会派小説で、読み応えがあると勧められた理由がよく解った作品。今でもきっと何処かで似た様な問題が起こっているんだろう。読了後にプロローグを読み直し、只々考えさせられ、胸が苦しくなった。

  • 第11回(1965年) 江戸川乱歩賞受賞

  • 古い、深い、やるせない感じ。考えさせられるが、殺害方法、晶子と時枝の心境をもう少し示して欲しい。

  • お勧め。アルドリン服用による奇形児の問題

  • 昔むかし。。高校か大学の時に読んで、とても印象に
    残った本。
    江戸川乱歩賞の過去受賞作品ということで、
    丸の内の丸善で平積みされてあったので懐かしくて
    購入して再度読んでみました。
    物語の背景的な部分は、昭和の古い時代のイメージ
    ですが、弱者や障害を持つ人をとりまく本質
    的な部分は今でも同じではないかと思います。
    でも、この物語の時代設定のときよりも、確かに
    世間は進歩していて、その時よりは、弱者を
    受けいれ、ともに考えようという風潮にはなっているのではないかと思います。

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著者プロフィール

西村京太郎

1930年東京生まれ。63年オール讀物推理小説新人賞「歪んだ朝」で推理作家としてデビュー。65年『天使の傷痕』で第11回江戸川乱歩賞を受賞。81年『終着駅殺人事件』で第34回日本推理作家協会賞を、2004年にはミステリー界における多大な功績が評価され第8回日本ミステリー文学大賞を、10年には第45回長谷川伸賞を受賞する。01年10月、神奈川県湯河原に「西村京太郎記念館」を開設した。

「2022年 『十津川警部書き下ろし(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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