天使の傷痕 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061360419

感想・レビュー・書評

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  • 作者の初期のシリアスな長編。当時の社会現象をネタに、社会の矛盾を解決するのではなく、弱いものへ順送りにして、溜め込んで隠蔽してしまう(今も変わらない)日本の風土の歪を、主人公の新聞記者の口を借りて告発する。そうした社会派の作品なのに、ミステリとしてきちんとエンターテイメントしているのが、この作者らしい。

  • オススメ本。雑木林をハイキング中の男女が殺人事件と遭遇する。胸から血を流した瀕死の男は『テン』という言葉を残して絶命する。事件に遭遇した新聞記者・田島はその言葉の意味を調べようとするが...。展開が早いので、サラッとしたミステリかと思いきや、胃に鉛を詰められた様な重みの結末にただ驚くばかり。初期の西村作品が社会派小説で、読み応えがあると勧められた理由がよく解った作品。今でもきっと何処かで似た様な問題が起こっているんだろう。読了後にプロローグを読み直し、只々考えさせられ、胸が苦しくなった。

  • 江戸川乱歩賞受賞作です~。
    推理小説の大御所・西村京太郎よ~。
    2時間サスペンスの巨匠・西村京太郎よ~。
    初めて読んだわ。
    1976年の初版なのに、面白く読ませてもらいました~。

    ストーリーは、
    カップルがデート中に殺人事件に遭遇して、被害者は「テン。。」という言葉を残して息を引き取った。
    被害者の身辺を洗ううちに、どんなに悪い奴だかわかってきて、事件の背景には意外な事実が隠されていた~。

    ストーリーの四分の三は至って普通の推理ものみたいなんだけど、
    大詰めになって、その背景には『アルドリン』という睡眠薬によって生れた奇形児の可哀想な事実が浮き彫りになってくるのです~。
    これって、いわゆる『サリドマイド』のことだよね~。
    私が生れて前後して『サリドマイド児』が社会問題になったのを、かすかに覚えています。
    それに伴うサリドマイド被害の背景は、社会にはとても厳しくて読んでて悲しくなっていく。。。

    主人公のGFが犯人だったんだけど、
    それはサリドマイド児を生んだお姉さんを庇うためで、そのお姉さんの置かれた立場や家族、生活などのため、結局はGFが罪を負うような終わり方になってるのがむなしいです。

    なんだかね~、さすが江戸川乱歩賞って感じで重みのある本でした。

  • 第11回江戸川乱歩賞。
    新聞記者・田島が恋人の昌子とハイキングをしているところで殺人事件に出くわす。田島は特ダネを得るため事件の真相に近付くが、さまざまな手がかりから、真犯人は予想外の人物であることを確信する。
    真犯人が逮捕された後も、田島は納得がいかずさらに踏み込んで調査するが、1人の人間では解決できない問題が立ちはだかる。
    西村京太郎といえば鉄道ダイヤを使ったミステリーを連想しがちだが、本作品は社会的問題(アルドリン奇形児、田舎の閉鎖的な風習など)を取り扱った、重厚なミステリー。

  • 五十年近く前に書かれているだけあって、かなり古めかしい社会派推理小説という印象。初期の作品だからか、他の作品で多用されている読点は少ないが、文字が小さく行間がかなり狭い為、結構読みづらい。
    物語は新聞記者の田島の目線で描かれており、内容もかなり暗い物となっている為、十津川警部が颯爽と活躍する物語を読みたい方にとっては不向き。

  •  1965年第11回江戸川乱歩賞受賞作。
     何かのひらめきで事件が一気に進むというのではなく、一つ一つ地味に潰していく推理小説の本格派という感じがする。事件自体は複雑なものではないが、その背景にある社会問題は現代でも起こりうるものではないかと思う。作品自体は約60年ほど前の作品なので古い印象を拭えないが、現代にも通じる部分は十分にあり楽しめる作品に思う。

  • 気を取り直して読んだ西村京太郎、乱歩賞受賞作と聞いて若干期待したのが間違い。それにしても暗い

  • ストーリーテーラー。コンパクトで腹五分目。もう少し装飾してもいいと思う。

  • 第11回(1965年) 江戸川乱歩賞受賞

  • 古い、深い、やるせない感じ。考えさせられるが、殺害方法、晶子と時枝の心境をもう少し示して欲しい。

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著者プロフィール

一九三〇(昭和五)年、東京生れ。鉄道ミステリ、トラベルミステリの立役者で、二〇二二年に亡くなるまで六〇〇冊以上の書籍が刊行されている。オール讀物推理小説新人賞、江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞など、数多くの賞を受賞。

「2022年 『十津川警部と七枚の切符』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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