殺しの双曲線 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061361355

感想・レビュー・書評

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  • 40年程前に書かれたミステリ。

    西村京太郎と言えば、十津川さん
    内田康夫と言えば、浅見光彦
    どちらも火サス。京都や温泉やトラベルや……と、そのくらいの事しか知らないのですが
    この本は以前から読みたくてめっちゃ探したのですよ


    雪で閉ざされた山荘と、町で起こる強盗事件
    「そして誰も~」のオマージュだそうで、もうwkwkする要素しかなかったのです

    勿論、それだけではなく、離れた場所で起こっている強盗事件が絡んでくるのが見えてくるとどんどん引き込まれてしまったのです

    流石に40年前のミステリなので、最初の読み初めで「多分、そう言う事なんだろうな……」とは勘付いてしまうのですが、どこが?どれが??と探してる内にお話は進んでいってしまうのです

    丁寧な伏線……と言うか、多分当時はそういう書き方をしなくちゃ読者が分かり辛かったんだろうな……?なんて事も思いながら、ちゃんと回収。

    ストーリーの中に入って、自分も一員になりながら読むととっても楽しい種類のミステリだったのですね
    そう、まるでドラマの様な……!!1

    読み終わって、やっぱり流石だな……という感想が。
    ミステリ読み始めてた頃に読みたかった……!
    勿論、色々読んで色々予想できてしまうようになっても、楽しめる本でした

  • 久しぶりに『推理小説を読む』ということを堪能した。

    作者は、メイントリックが双生児であることを利用したものであるということを冒頭で明かしている。これでわたしたち読者に対してフェアであるということなのだ。
    さあ、推理を楽しんでごらんと言っているかのように。
    勿論それを言葉通りに受け取ってしまったのでは、犯人は当てることができない。

    東京で一卵性のとてもよく似た双子であることを利用した強盗事件が起こる。犯人の目星はたっているがある理由から逮捕することはできない。
    もう一方で、宮城県の雪深い山奥にあるホテルに招待された男女とオーナーを含めた計7人が閉ざされた建物の中で次々と殺されていく。そしてその犯行現場には、謎のマークとともに復讐が行われたと書かれたカードが残されていた。

    もちろん、東京と宮城で起こった事件は関連があるに決まっている。
    が、しかしどうやって?
    ちゃんと読めば犯人は分かるようになっている。
    ミスリードもなくどんでん返しもない、読み終わったあとに騙されたという腑に落ちない気持ちにもならない、正統派の推理小説だと思う。分かりそうで分からない、薄々真実が見えてくる(ような気がする)感じがワクワクした。

    太地亜也子の職業が、わたしが読んだ本ではトルコ嬢という記載になっており、セリフの語尾の「~だと思うワ」「ひどいワ」の片仮名の使い方が古さを感じさせたが、内容的には今でも充分に斬新なトリックだと思う。

  • 「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものです」 作者が序文でネタばらしをしている事に驚く。それでも面白かった。

    連続強盗事件と『吹雪の山荘』での連続殺人事件が交互に語られていく構成で、全く飽きる事なく一気読みした。
    強盗事件は奇抜な発想と大胆な行動の愉快犯と警察との攻防が、時にユーモラス、時に緊張感のある語り口でページを繰る手を急がせる。
    一方の連続殺人事件は、一人、そして二人と殺されていく王道の展開であるが、作中で『そして誰もいなくなった』を引き合いに出しているだけに、一筋縄ではいかないだろうと思わせる。

    全編をふまえた上での、終盤の二重三重に突っ込んだ展開にどきどきするし、意外な伏線も効いている。ラストの切れもいい。

    正直、西村京太郎には『トラベルミステリーを量産する人』というイメージしか抱いていなかったが、それは僕の偏見であった。特に初期の頃の作品には、本格ミステリの傑作がまだまだあるようだ。他の作品も読んでみたいと思う。

  • 都内で起きる連続強盗事件と、ある雪山のホテルで起こる連続殺人事件。全く接点のないように見える2つの事件がリンクしていく。
    最初に作者からの重大な注釈があるにも関わらず、というかむしろそのせいでなかなか全体像が見えず、最後で一気に持って行かれる。
    「そして誰もいなくなった」のオマージュ的な作品。
    西村京太郎と言えば電車モノと思って避けていたが、やはりすごい作家さんだと再認識。
    昭和の感じがすごくて、その時代には生きてなかったけどノスタルジー。

  • 都内で起こる連続強盗事件。雪に囲まれた山荘で起こる連続殺人事件。二つの事件が結びついたとき真相が明らかにされるという内容の物語でした。西村京太郎というだけで読む気がしない人もいるかもしれませんが、これは別格。ドラマで良く見るトラベルミステリーとは桁違いの面白さです。偏見がある方も是非読んでほしいです。でも双子が犯罪犯したらホントに、こんな感じになるんでしょうかねー。「疑わしきは罰せず」とは言いますけど、刑事がそんなに甘いとは思えません。こんなに刑事が慎重だったら冤罪なんて起こらないと思いますけどね。

  • 西村京太郎の『殺しの双曲線』を読了。

    西村京太郎といえば、世間一般的にはトラベルミステリーが得意な作家ではないだろうか。

    いですが、初期の頃は本作のような本格推理物も書いていたようだ。全然知らなかった。

    本作はあらすじにも書かれているように、アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」に挑戦した推理小説。とは言っても、決してパロディ小説ではなく、立派な本格推理小説だった。

    一番始めに『この小説のトリックは双子を使ったものです』と、予め読者に知らされる。これは推理小説を書くときの決まりごとの中に『双子を使ったトリックは予め読者に知らせておかなければならない』というものがあるからだろう。

    この双子が東京で起こす事件と、東北のホテルで起きる連続殺人事件。何の関係もないように見える二つの双曲線が交わったとき、驚愕の事実が発覚する。

    双子を使ったトリックというのが頭で判ってはいたものの、やはり解らないものは解らない。動機も同じく。その分、最後にはすごいスッキリしたが。

    『そして誰もいなくなった』はオレが一番初めに読んだ推理小説だが、確かに似ていた部分はところどころあった。例えば、手紙で呼び寄せられる、人数分のインディアン人形(本作では代わりにボウリングのピンなど)など。ただ、メイントリックに双子を使うことで『そして~』を発展させた形になっているのはポイント。

    いずれにせよ本作は『そして~』に影響を受けた数多くある作品の中で、かなりレベルの高い作品には違いないだろう。

  • 年の瀬に起こった連続強盗事件。目撃証言から特定された容疑者は、双子の男で見分けがつかず逮捕することができない。
    そのころ、東北の山荘に六人の男女が集まっていた。彼らは差出人不明の招待状を受けやって来たのだった。深い雪山でスキーを楽しんでいた彼らだったが、一人の男が首をつり、そこには「第一の復讐」というメッセージカードが残されていた。
    山荘で次々と起こる殺人。アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』に挑戦する本格推理小説。


    フェアにするために、冒頭でメイントリックが双子を使ったものであると明かしているが、すでにそこから仕掛けが始まっていて、逆にミスリードを誘っています。
    当時は斬新だったのかもしれないが、現代では通用しないトリックだろうなと、科学の進歩がちょっと寂しかったりします。

  • 同時に二つの事件が東北の山荘、東京で起こる。
    山荘では、何も知らずに招待された6名の男女が次々と何者かに殺されて行く。
    双子であることを利用したトリックがこの作品の最大のテーマだ。
    そして2つの事件は後半で繋がって行く。
    これはどれだけじっくり読んでも途中でトリックはわからないなー。
    ヒントもう少しくれても良かったのに。それからラストの「落とす」シーン、もう少し丁寧に書いても良かったのでは。
    でも飽きさせない仕掛けがいくつもあり、夢中になって読めた。

  • トラベリミステリを得意とする作者だが、本作品はガチガチの本格ミステリ。メイントリックに双生児を利用してると冒頭で宣言してるのもフェアで良い。変わった展開ではあるが、どこで休息してよいのやらわからぬまま、一気にラストまで読んでしまった。“双生児”と“クリスティ”──そこに敢えて挑む作者のチャレンジャーぶりに大いに感心した。猛スピードで展開した割りに、ラストは少し意外な気がした。丁寧な謎解きとは言えず、若干曖昧さが残る。魅力的な設定なので、本格よりも新本格の方が合っているような気もしないではない。

  • 見事にやられたよ…。最初のページで完全に引っ掛けられたと分かったのはもう終盤に差し掛かったとき。てかここだったらみんな分かるよね、ってとこでやっと。リーダビリティも高いしページを繰る手が止まらない。

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著者プロフィール

一九三〇(昭和五)年、東京生れ。鉄道ミステリ、トラベルミステリの立役者で、二〇二二年に亡くなるまで六〇〇冊以上の書籍が刊行されている。オール讀物推理小説新人賞、江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞など、数多くの賞を受賞。

「2022年 『十津川警部と七枚の切符』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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