ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061381162

感想・レビュー・書評

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  • 長い冬眠に入る前のムーミン谷の11月。人恋しくてムーミン家に集まるフィリフヨンカ、ホムサ、ヘムレン、スナフキン。しかし、ムーミン一家は旅に出ており…

    ムーミン達のいない家で始まった不思議な共同生活。
    難しい性格を持ったキャラばかりでどうなるかと思いました…
    みんなで食事したり、パーティをしたり、掃除をしたりするうちに、それぞれが自分のやりたいことや居場所を思い出し、一人、また一人と去ってゆきます。ムーミンママになろうとしたフィリフヨンカ、ムーミンパパに憧れを抱くヘムレン。最後には自分は自分、それでよいのだと気付けたのではないでしょうか。
    一人残ったホムサはムーミン一家を迎え、今まで空想の中でしか知らなかったムーミン一家に出会うでしょう。きっとムーミン一家はホムサを受け入れるだろうな。それからホムサも他のみんなのように自分にとって何か大事なことを見つけられたらいいなと思います。

    物寂しいけれどどこかあたたかい余韻の残るお話でした。

    自由で楽しく生きる、そしてそんな自分が大好き!というミムラねえさんがとても素敵です。

  • ムーミンたちだって決してその見かけほどは朗らかではないのだけれど、一家の留守中に集まってくる方達の捻れっぷりは更に凄い。で、むしろそれがもう、わが身の分身のようで。くすぐったいやら愛おしいやら。
    ムーミン谷に住みたいと思う(笑)のは、こういう方達がそれでも基本的には一人で自分の領分を引き受けているという、厳しくて凛とした空気に魅せられるからだろうな。
    だって絶対自分も、ムーミン達と仲良くなりたいと思いながら、そういう想いを知られるのが嫌で、留守の時にしかあのお家に近づかないと思うもの。ほら、立派にこの巻への登場資格ありだわ。
    それはそうと、冬ごもりの支度についての次の文章が、なんとも魅力的。
    「自分のぬくもりや、自分の考えをまとめて、心のおく深くほりさげたあなに、たくわえるのです。その安心なあなに、たいせつなものや、とうといものや、自分自身までを、そっとしまっておくのです」
    …これやりたい。

  • ムーミンシリーズ最終巻。しかしムーミン一家が出て来ないという。ムーミン一家を訪ねてきた6人の奇妙な共同生活が描かれています。偏屈だったり夢想家だったり神経質だったり、てんでバラバラでアクの強い人物たちが集まる物語。普通なら段々理解し合ったり仲良くなったりという展開なのでしょうが、そこはムーミンシリーズ、そうは問屋が卸しません。私は私、あなたはあなたと好き放題。それでもお互い相手のことは認めている心地好い距離感がそこにあります。そして登場しないのに存在感たっぷりのムーミン一家。なるほどこれはシリーズ終焉を飾るのにふさわしい物語なのかも。
    個人的にはフィリフヨンカが自分を取り戻していく様(僕にはそのように思えました)が印象的でした。ミムラねえさんのマイペースっぷりも素敵ですが。

  • ムーミン童話最終巻にしてムーミン一家は登場せず。だけどムーミン一家が慕われている様はフィリフヨンカ、ホムサ、ヘムレン、スナフキンたちの会話から存分に溢れている。本作ではミムラねぇさんが一番好き☆

  • 一言で表現すると、大人のための童話。アニメのムーミンとは180度異なる静かなお話です。さまざまな問題を抱えたキャラクター達が、人恋しさから不器用な「家族」を作り上げていく様が北欧の冬の情景とあいまって、不思議な物悲しさを感じさせます。特に、引きこもりの夢想少年「ホムサ」は社会の片隅で静かに壊れていく若者を表現しているように私は感じました。

  • ムーミン一家の出てこないムーミン谷の話です。

    実はムーミンの話を本で読むのは初めてですが、とある喫茶店で気まぐれに読んだ冒頭の章にすっかり惹かれてしまって、最後まで読むことになりました。
    秋になって、旅に出なきゃ!と出て行ってしまうスナフキン。
    でも途中で人恋しくなって、ムーミン谷に戻ってくる。他のひとたちもみんな、谷に集まってくる。そこの住人は出かけてしまっていないんだけど。

    ミィも好きですが、やっぱりスナフキンが大好きです。

  • 川上弘美のエッセイに出ていたので気になって読むことにしました。
    自分としてはムーミンシリーズに接するのが初めて。
    シリーズの最後を読んでしまっていいのか・・・とも思ったけど
    世界観は掴めたかな。
    印象深い文章を書いておこう。

    『ただ、しんせつなだけで、人のことが、ほんとうにすきではないような友だちなら、ほしくないや。それに、自分がいやな思いをしたくないから、しんせつにしているだけの人もいらないや。こわがる人もいやだ。ちっともこわがらない人、人のことを心から心配してくれる人、そうだ、ぼくは、ママがほしいんだ。』

    『わたし、しないではいられなかったんですもの。あなただって、わたしとおんなじように、したくてたまらないことをすればいいんだわ。』

  • ムーミンというとアニメの和やかでゆかいな一家。
    という印象ですが、リアル中学生の頃にこの物語ムーミンを
    読んで大いに盛り上がった記憶があり、いまだに3年に1回くらいは
    シリーズ読み直したりします。

    たしかに和やかでゆかいではありますが、シニカルでドライ。
    登場人(?)物の自己顕示・嫉妬やそねみのようなマイナス部分も
    普通に描かれています。でもドライな表現のせいか、いやな気分に
    はならないですねー
    子どもより大人が読んで楽しめるシリーズです。

    なかでも一番すきなのが十一月
    ムーミン一家のいないムーミン谷で過ごす6人のおはなし
    かまいたい人・かまわれたい人・ほおっておいてほしい人
    相手をうっとおしいと思ったり、案外見直したり・・
    集団でいることのわずらわしさとたのしさがいやみなく
    伝わってくるいー話です。
    寒々しい枯れ木の季節のムーミン谷がまたステキです。
    ヤンソンの描く四季は本当に空気が伝わってくる感じがしますねー

    他にシリーズのなかですきなのが・・
    「ムーミンパパ海へいく」
     ある日、かっこいい父親気分が盛り上がって船出するパパと一家
     ミィのあっけらかんとした残酷さとシニカルな視線
     引きこもるママ
     ストーカー風ムーミン
     男らしさを追求して空回りするパパ
     灯台の島の荒涼としたモノトーンの風景と風が目に浮かびます。
     
    「ムーミンパパの思い出」
     ムーミンパパの出生からムーミン谷に住むまでの回想記
     パパの自意識過剰でみえっぱりでナルシストで大げさなところが
     かわいらしくて笑えます。
     若き日のパパと仲間の冒険譚ですが、回想記という手段を
     とっているので、楽しみつつひやかす。という視点で読めて
     おもしろいです。
     竜のエドワード最高

    「ムーミン谷の冬」
     冬眠して冬を越すムーミン一族、ところがムーミンだけ
     雪のさなかに目をさましてしまったとある冬のお話。
     わたしのすきなおしゃまさんというちょっとなまいきな女の子が
     登場して、ムーミンに冬の谷を案内します。
     初めての降雪を体験するムーミンもかわいいし、あいかわらず
     ミィはかっこいいし・・
     冬から春への空気の変化がほんと上手い!

  • ムーミン一家不在のなか、仲間たちが集まり、季節は秋から冬に向かっていくお話。

    「ムーミン谷の彗星」という最初期の作品しか読んだことがないのにいきなり最後の作品を読んでしまったからなのか、なかなかに難しいというかわかりにくいというか…ではあった。
    ただ、それぞれのキャラクターのおもしろさ、仲間たちはもちろん、ご先祖様や、海や山や木々や風などとのつながりのなかで生きていること、人生の喜び悲しみ、何かとても深く神秘的なことを表現しようとしていることはわかった。

    8月にフィンランドに行ってきたので、なんとなく気候や風土への理解が深まって、そのおかげでそのあたりの描写も楽しく読めた。
    「いちだんと日が短くなり、寒さもましてきました。雨はほとんどふらず、毎日お昼ごろ、ほんのしばらく、ちらっと日の光が谷底にさします。すると、地面がぱっと明るくなって、はだかの木のかげが、黒々とうかびあがります。でも、昼前も昼すぎも、夕がたのように薄暗くて、そのうちに、とっぷりと、暗やみにつかってしまいます。」(P163)
    「あかるくうき出ているのは、オレンジ色の、指の形をしたきのこだけです。まるで、暗やみから、何本もの小さな手が、にょきにょき出ているみたいです。木のみきには、大きなこぶのようなものが見えました。白っぽいクリーム色のビロードのようなこぶしでした。」(P257~258)

    あと自由を愛するスナフキンが看板嫌いというのも面白かった。
    「立入禁止とか、境界とか、閉鎖とか、しめだしとか、ひとりじめをあらわす感じのことばは、なにがなんでも、スナフキンは大きらいなのです。」(P123)

  • 再読
    2015/10/10

    シリーズの中で1.2を争う。大好き。何度読んでも飽きることがない。三十路半ば。
    再読 2016/11/10

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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