僕たちのゲーム史 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385245

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、ゲームと共に生きてきた「僕たち」のための本です。

    僕たちの暮らしの中にゲームが登場して、30年ほどの時が流れました。本書ではその歩みを辿ってゆきますが、ソフトの売り上げ、あるいはハード戦争といった事柄に重心を置いた記述はしていません。なぜなら、日本のゲームは、「ボタンを押すと反応する」という基本を巧みにアレンジしつつ、一方で「物語」との向き合い方を試行錯誤してきた歴史を持っているからです。このような視点でゲーム史を編むことで、「スーパーマリオのようなゲームはもう生まれないのか?」「最近のゲームはつまらなくなったのでは?」といったあなたの疑問にもお答えできるようになりました。さあ、ゲーム史をめぐる冒険の旅に出ましょう!

    ■試し読みはこちらです。
    http://ji-sedai.jp/book/publication/game.html

  • 語り落とされるものたちの歴史、について考える。

    歴史は勝者の書くものだ、ゆえにそれらはすべて偽史である、というような言説に対し、まあそうだよな、というスタンスでいる。それはそうだと思う。

    だったら今の歴史は、もしくは今よりちょっと前の歴史は、誰がつくるのか、と疑問に思ったりもする。勝者は誰なのだろう、と。そのときに悩んでしまうほどに、もしかすると今の世の中は多様化していて(よく言われるアレですね。最近はそうでもないんじゃねえかというアレもありますが)、ほんとうに誰が勝ったのかということを誰が決めるのか、よくわからないのである。

    自分自身がおそらく多数派の中にいないのではないか、という焦燥、逆にいうと妙な選民意識、それも否定はしない、だって誰しもそういう感覚は得たことがあるはずだ、それもあって、たくさんの価値観にあふれた時代(そう括ってしまおう、もういっそ。)において、誰が歴史を書くのか、という疑問以上に不安に思うのが、誰がそれぞれの価値観における歴史を書くのか、ということである。自分自身の知っていたこと、頼りにしていたこと、もっといえば、信じていたこと、それらがまるっと、そう遠くない未来に、なかったことに、わからないことに、なってしまうのではないか、と、たとえば大きな本屋の歴史書の棚や、図書館の郷土史のコーナーを前にして思うのである。自分より前にいたひとたちのしっていたことは、これだけではない、と。そりゃそうなんだけど。

    でも、そういう不安を思うひとたちは多くいるはずだ、と妙に信じているところがある。「いままでのあやまちを繰り返してはいけない」という言葉のもつ強さに引き寄せられて声高に繰り返すひとたちがいるけれども、もちろん自分だってそう思う時がある、過去に消されたより良い選択肢を忘れずにいることさえできれば、これから先われわれは同じ局面で間違うことはない、と。うしなわれた知識や技術を守るためには、遺していくしかない、せめて書物の上にだけでも、と誰しもおもうはずだし。

    そういうのを今に当てはめてみる。そして自分自身に当てはめてみる。そうすると、「あの古きよき少年時代に夢中になったTVゲームの面白さというものは、急速に塗り替えられてゆくそれらの歴史の中で、もうすでにうしなわれてしまったのではないのか?たった30年とそこらの間に。たったそれだけの間のことも、たったそれだけの間のことだからこそ、わたしたちは書き遺してゆくことをしてこなかったのではないか、だとすれば、今からでも遅くはない、歴史を、遺してゆかなければならない、何が勝ち残った、ということだけではなく、何が変わらずにあり、何がうしなわれていったのか、ということを、さもなければ、それらについて知っていたひとびとの記憶からまずうしなわれ、そしてそれらについて書かれたものがうしなわれてしまうからだ」ということになる。おおげさに言えばね。

    とはいえ本当に心配なこともある。一般的な雑誌に載っていたことならさいあく国立国会図書館にゆけばなんとかなるかもしれない。でもそれぞれのゲーム会社の中に蓄えられたもの(それはひとの中にしかない知識だったり、社風だったりするかもしれない)は、もう解散してしまったところのものについては、ほんとうにうしなわれてしまった、と言ってもいいかもしれないし(どこかに移った誰かがそれらを引き継いでいるかもしれないけれど)、おそらくTVゲームの黎明期から存在するであろう同人誌たちの中で語られてきたことは今はまだどこかにはある、と言えるかもしれないけれども、それほど遠くない未来に散逸、消失してしまう可能性は高いと思う。web上の記事や、パソコン通信や、ツイッター、ニコ動ニコ生、ユーストなども、個々には今現存していても、いつまでもあるという保証はない。でも、TVゲームというものは、ハードやソフトだけでなく、そういったものの集まりの上にこそ成り立っているのだから、それらがうしなわれていくことは、その魅力、ゲームというものの本質をうしなってしまうということにもなりかねない。

    だからといってすべて一括してアーカイヴ化するところが必要だ、というところまではいかないが。できるのならばそれにこしたことはないけど。大事なのは、その文化の集積の中から、その文化の核たるものを抜き出して遺していく作業が必要なんじゃあないか、ってことで。誰かと誰かが切磋琢磨して知識と技術を高めあって、ぱっと見ではどんどん進歩成長しているなあ、って思うところに、別の視点から、それはどうなのかどういうことなのか、って考えてみる誰かが必要になってきているのだと、これはわりと切に思うのだが、まあそれは要するに「批評」なんだろうけれど、だとすると、過去から現状までをただなぞるだけではなく、他の分野の批評の形式をただ借りてくるだけではなく、TVゲーム批評というものが、もっともっと鍛え上げられてもいいのかな、と思ったのがこの本。ようやく「この本」と言えた。この本はそのよいきっかけになるのではないかな、と思ったほどよい切り口を持った本。だと思う。

    はー長かったけど大したこと書いてないー
    とーもだーちなーらあーたりーまえー

  • 帯に書いてある「ゲーム30年史」はある程度納得。パラダイムシフトは過去に何度も起きていた、という感じかな。

  • 著者自身の主観的な意見を徹底的に省き、資料からの引用によって過去その当時のプレイヤーが何を感じたのかを読み解いていくことでコンピューターゲームの歴史を正確に捉えることに成功した名書。最近ゲームをしているしていないに関わらず、ゲームというメディアに愛着がある方には是非オススメしたい一冊。読み終わった頃にはゲームの見方が少し変わるかもしれない…?

  • ドンキーコングの後継がスーパーマリオって・・・マリオ・ブラザーズは黒歴史かよ!
    ということで、ファミコン世代には懐かしいゲームの歴史の書。
    家庭用ゲームの話が主体だが、アーケードの話もちりばめられている。昔は、アーケードで流行ったゲームが家庭用に移植されるってのが基本だったからなぁ。
    しかし、本書のクロージングが「ソーシャルゲー」ってのもな。

  • 400 馬場北

  • 記述と構成がよく出来ている。ゲームに限らず、近過去の歴史を扱う際のよいお手本だと思う。

  • 「次世代ゲーム機戦争はこうなる」的な産業(ゼニカネ)目線でもなく、「あの頃こんなゲームがあったの知ってる?」的な懐古路線でもなく、当時の関係者の発言やゲーム誌の記事を引きつつゲームの来し方を振り返った良書。皆が陥る「世代的な記憶、ハマったゲームを<あるべき姿>と思い込む」引力から逃れ、つまりはそうした向きから「こんなものはゲームではない」と批判されるようなものこそが次の<ゲーム>として現れる、という展望はいささか現状肯定的すぎて批判的精神を欠くと云われてしまうかもしれないけれど、つねにゲームはそのようなものとしてあったということでもあろう。

  • 当時の雑誌とかインタビューからコンテンツ周囲の空気感を描く、僕好みのアプローチ。ゲームを作品ではなくコミュニケーションで消費される文化として捉えるのに、このやり方はとても正しいと思う。

  • まさしくコンピューターゲームの歴史。日本のゲームが物語を体感させるものとしてどのような発展を遂げたか、ゲームセンターはどうやって生き残ったか、ハードの戦争、ポケモンやモンハンといったリアルのコミュニケーションよ要素も含めての発展、そして現在との同期など。

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著者プロフィール

ライター・評論家・マンガ原作者。1974年北海道生まれ。大学卒業後は、個人ニュースサイト「ムーノーローカル」を運営(1999年~2001年)しつつ、音楽業界・出版業界での会社勤務を経て、ライターとして執筆活動を開始。小説、マンガ、アニメ、音楽、映画、演劇、ネットなどについて幅広く評論する。著書に『僕たちのゲーム史』『一〇年代文化論』(共に星海社新書)、『キャラの思考法』(青土社)他多数。マンガ原作に『qtμt キューティーミューティー』(作画・ふみふみこ/スクウェア・エニックス)がある。

「2017年 『僕たちのインターネット史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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