キヨミズ准教授の法学入門 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385276

作品紹介・あらすじ

山の上の高校に通う2年生の僕は、放課後に寄り道した喫茶店「赤ひげ小人」で、近所にある港湾大学のキヨミズ准教授と出会う。大学で「受講生0人の法学入門」を受け持つ少しヘンなその先生は、お願いもしてないのに、法的思考のすばらしさを高校生相手に嬉々として語り出して-。「高度な内容を分かりやすく」を信条に首都大学東京で教鞭をとる若手憲法学者が、進路に迷う高校生や法学に拒絶反応を示す文学部生にも分かるように、物語の手法を用いて生き生きと、そして最高に面白く語る「日本一敷居の低い法学入門」。

感想・レビュー・書評

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  • メディア出演も多い憲法学者・木村草太先生による法学の入門書。憲法というより、刑法も民法も踏まえた、法学全体像を掴むための本です。構成は男子高校生と大学准教授を中心としたストーリー仕立て。ですから、大学生に限らず高校生でもしっかりと理解できるようになっています。大学で木村草太先生の講義をとっており、薦められて読みました。まさに、大学法学部生の4月、あるいは高校生で法学部志望の子などにもおすすめだと感じました。法学って何をするのか、ただ法律と睨めっこしたり六法を暗記するだけではないのはよく聞くけど実際のところは!?という内容が詰まっています。ぜひご一読を!

  •  大学1回生の時に読みたかった! と思わされる本がまた一冊出ました。

     本書を手に取れば、表紙からラノベチックとも言えるイラストがあり、パラパラとめくると章のトビラ毎にイラストが入っているのがわかります。物語の中でキヨミズ准教授により説明される法学の話を読んでいると、『もしドラ』や『夢をかなえるゾウ』を思い出すかも知れません。

     取っつきやすく読みやすいのは確かですが、そういう"外観"に惑わされてはいけません。ものすごく理解しやすく、わかりやすく書いてくれてはいますが、その内容は深いです。
     例えば、法学部に入ると「法的三段論法」(大前提(規範)を小前提(事実)にあてはめ、結論を導く)というものを習います。が、なぜ法律家がこのような思考要式を採用するか? と聞かれると、おそらく少なからぬ法学部生でも答えに詰まるのではないでしょうか?
     そういう「お約束」や「作法」とされているものがなぜそうなっているのか、その理由から説明してくれているので非常に読み応えがあります。

     本書では、高校生のキタムラ君と、近所の大学のキヨミズ准教授、そしてキヨミズ准教授の同僚・ワタベ先生があちこちで出会い、そこで法学についての話が開陳される、という流れになっています。著者らしいユーモアが随所に溢れていて「単に物語、ラノベ形式にしました」というおざなりな作りではないので、ちゃんと物語としても楽しめます。
     その上、本書の中で説明されるのは、法的三段論法(Chapter1)の他に、他の文系学問の特徴とそれらの違い(Chapter2)や法律の体系(Chapter3)、法解釈の仕方(Chapter4と5)、そして法制史(Chapter6)と、法学入門の名に恥じないボリュームとラインナップです。しかも、これだけのことについて、その概略ではなく根幹の考え方、そのエッセンスの部分をわかりやすく説明してくれています。
     本書の登場により、法学に関する最初の一冊はこれに決定したと言って過言ではありません。

     法曹に興味があったり法学部進学を希望している高校生は言うに及ばず、法学とはどういう学問か何となく興味があるという大人から、法律を勉強しているけど今イチ自分が何をやっているのかよくわからないという法学部生、そして宅建などの各種資格試験で法律科目を勉強しないといけなくなったけど法律ってようわからん! とお嘆きの方、およそ法律に関心と関係がある全ての方にオススメする入門書の名著です!

  • とても良い。お恥ずかしながら、タメになることも多く(法学部四年目)巻末の参考文献もいい。

  • 法学の基本を対話調(小説仕立て?)で紹介した本。今までない形の入門書だと思う。
    高度なことを本当にわかりやすく書いてある。法学部に興味を持った高校生だけではなく、他学部も含む学部生や社会人にも勧めたい。基本的にここで書いてあることは法学部の教養課程で教わることだが、教わり方は必ずしも整理された形で教わることは少ないと思うので、漠然とした理解で学部時代を過ごすことになる。そのようなことが整理された形で非常に明確に書かれており、目から鱗。
    いやー、学部生の時にこの本に出会っていたら、もっと実定法系の科目でいい成績がとれたかも・・・。なんちゃって。

  • 私が高校生の時、こんな本に出会えてたら嬉しかったなぁと思う。まぁ読んでもよくわからなかったかもしれないけど。
    でも今、具体的に勧めてあげたいなぁ、と思う子の顔が浮かぶ本。社会科学に進みたいなぁという茫漠とした進路を思い描く子たちにひとまず渡したい。

  • 私の大学の法学部で一番有名な木村草太教授の本。ライトノベル調にかかれた法学入門書。なんとなく読みましたが、その「なんとなく」がめちゃくちゃ効いてます。初学者にとって目的論的解釈の説明がすごくわかりやすかった。最後のおすすめ本紹介は参考になります。

  • 法学部に入学するので、授業が始まる前にと思い読んでみた。
    感想としては、読んでよかった。
    法学の魅力が伝わってきた。
    魅力的な法解釈のできる法学者を目指したい

  • 「法律入門」というよりも「法学学習のガイド」というカテゴリの本。法学部の1年生に配布される冊子とかにこういうのはあるけど、ストーリー仕立てになっていて、読みやすく楽しい。
     
    基礎法と実定法のそれぞれを初歩から説明しているのは当然として、社会科学の中で政治学、経済学、社会学との比較において法学を位置付けているのは、こういう本ではあまりないような気がする。
    「法学通論」と「法学原論」の違いを述べているのは有意義。私の出身法学部にはこの区別がなく、その区別さえ明示してくれればあの頃に憤らなくてよかったのにと感じた(「法学入門」とかいう名称で通論の講義をされ、私は原論じゃないことに腹を立てていた)。
     
    最後の章に、登場人物から手紙という体裁で読書案内がされているのだけど、橋爪大三郎の『言語ゲームと社会理論』を実定法の先生が紹介しているのは意外だった。
     
    余談だが、作中の舞台となっている町についての地図が載っていて「横浜じゃん(大学以外は)」と思ったら、木村さんって緑ヶ丘なのね。

  •  1980年生まれの若き憲法学者(首都大学東京准教授)が書いた、「日本一敷居の低い法学入門」(カバーそでの惹句より)。仕事の資料として読んだものだが、勉強になったし、面白く読めた。

     カバーと本文のイラストは、マンガ家の石黒正数が担当。
     「港湾大学」の准教授が、町で偶然出会った高校2年の男子生徒に、法学の基礎をレクチャーしていくという物語仕立てになっている。というより、「ラノベ仕立て」といったほうがよいか。こんな趣向の法学入門が書けるのは、若いこの著者だからこそだろう。

     もっとも、「ラノベとして読んでもストーリーが面白い」というところまではいかない(あたりまえだ)。それでも、“ラノベ仕立てにすることによって、法学入門を面白く読めるようにする”という企図は十分に達成されている。

     序盤の「法的思考とは何か?」という話は、「法的三段論法」「法命題」「裸の価値判断」などという堅苦しい語が頻出して、なかなか本の中に入り込めない。
     が、話が具体的になってくる第3章あたりから、俄然面白くなってくる。

     法学を学ぶことは、法曹界に進む者以外にとっても大きな意味があると説明したくだりに、なるほどと膝を打った。たとえば――。

    《「あと、法律っていうのは、これまで生じた様々な社会問題への対応マニュアルなんですね。その勉強をしておくと、社会では、これまでにどんな問題が起きてきたのか、そこではどんな価値や利益が問題になって、解決のためにはどういう道筋を通るのが有効か、っていうのが分かってくるんですね」》

     入門書ではあるが、わりと高度な内容までがつめ込まれている。たとえば、法科大学院で古代ローマ法や近代西洋法典編纂史が必修となっている意義について、歴史を遡って簡潔に説明されている。
     法曹界に進みたいと考えている若者にとってのみならず、一般人にとっても有益な法学入門なのだ。

  • 法学は奥が深い。
    憲法学者の知識の深遠さを覗くことができる。

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著者プロフィール

木村草太(きむら・そうた)
1980年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業、同助手を経て、現在、東京都立大学大学院法学政治学研究科法学政治学専攻・法学部教授。専攻は憲法学。著書に『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK出版新書)、『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)、『憲法という希望』(講談社現代新書)、『憲法の急所 第2版』(羽鳥書店)、『木村草太の憲法の新手』『木村草太の憲法の新手2』(共に沖縄タイムス社)など。共著に『ほとんど憲法(上下)』(河出書房新社)、『むずかしい天皇制』『子どもの人権をまもるために』(共に晶文社)などがある。

「2022年 『増補版 自衛隊と憲法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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