キャバ嬢の社会学 (星海社新書)

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  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385467

作品紹介・あらすじ

ガリ勉京大院生、キャバクラに潜入す――
一流大学に通う筆者は、女らしさを売りにするキャバ嬢たちを“そうするしかない人たち”と哀れみ、自分とは違うと決めつけていた。しかし、ある時知人に「彼女たちもあなたも変わらない。違うと思っているなら、それはキャバ嬢を差別しているだけだ」と指摘され、愕然とする。真相を確かめるべく潜入したキャバクラは、想像以上の“魔窟”だった。女の矜持を刺激するランキング、“全て自己責任”のセクハラ対策、“素人性を売りにするお水”という矛盾。予想通りのくだらなさを感じつつ筆者は、徐々に夜の世界に“ハマる”想定外の自分に気づく……。キャバクラとは、病みとは、女とはなにか。八六年生まれの俊英が送る、“武器としての社会学”!

感想・レビュー・書評

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  •  北条かや氏といえば、「炎上」というイメージが強いけれど、実際に著作はどんなもんだろうと思い、手に取ってみた。
     「女としての自信のなさ」「うぶさ」「まわりから遅れていること」「ビッチではないけれど、まあまあ美人で、ほかの人より頭はいいけれども、その頭のいいことは、逆にがり勉で全然モテなかった自分につなげていること」をひたすら主張する女である。つまり、自分がちょっとモテるのはわかっているけれども、「もてないですよ~ぜんぜん」と言うタイプである。いや、もっと闇は深い。

     彼女は言う。「自分はキャバクラ嬢を馬鹿にしていた」と。
     
     あと、僕が上司に連れていかれたのは、キャバクラではなく、ホステスであるということが分かった。
     ホステスとキャバ嬢の違い。
     男同士の絆を深めるためにいるのがホステス。
     それぞれの話し相手になるのがキャバ嬢。
     これはあんまり気づかなかった。
     神戸のキャバクラに、えらい人らに連れていかれた時、いろいろキャバ嬢がやってきては立ち去っていくので、自己紹介ばかりで大変だった。「私、お酒とか苦手で~」と金髪のキャバ嬢が言ったので「いや、お前、声がらがらやんけ!」と突っ込んで二人で笑いあった思い出がある。自分自身がまあまあ若いので思うのだが、今更こんな女としゃべってどうするんや……としか思えない。終わった後のバーで会って俺と飲んでくれ! 接客されたら何をしゃべっていいか遠慮してしまうので、何もしゃべられへん! 
     この金髪のキャバ嬢にも思ったのだが、キャバ嬢は「商売で出会うには面白くなさすぎる」ということだ。というか、風俗行った時も感じたのだが「こんなもん、普通に遊んでたらおるわ!」という「レア度」が全然ないのである。音楽ががんがんかかるクラブに行けないから、ここでわざわざ話すのだろうか。貴重さがわからない。すぐやらせてくれる頭のおかしい普通か少し下ぐらいの顔のサブカル女性と話す方が、千倍楽しいことを、彼女らは理解できないのだろうか。

     北条かやの素晴らしいところは、「女を売り物にするのは、めちゃくちゃハマるし面白い」ということを素直に言っていることだ。「ついに女を売りにしてしまったぞ!」という妙な高揚感があったという告白は、ピースボートに乗った古市氏と比べたらはるかに褒められるべきことだと思う。
     これは、別に「キャバクラ」でなくても、ジャーナリストだろうが、北条かやを批判する女性だろうが、やっていることで、それはそれは山ほど、サル山のボス猿現象(どんだけ世間ではきもい人間扱いだろうと、狭いサークルの世界でトップに君臨していたら、死ぬほどモテる)を経験した俺にとっては、この北条かやの告白はとてもよい。ただし、キャバクラの違うところは、サル山のボス猿現象をボス猿でもない客に対してやらなければならないということだ。

     あと、えらいさんに新地のホステスに連れていかれたが、これもクソつまらなかった。なぜなら、私はえらいさんと親交を深めるなど毛頭ないからだ。一番奥の席に座り、一番太っているえらいさんのおっさんに抱き着いて過ごした。場は「ぽか~ん」となって、副会長から、「あんたそんな酔って」と遠回しにたしなめられたが「いえ、酔ってません。テンションがあがって」と答えた。もう二度とないだろうと思ったが、なぜか、一年後も連れていかれた。

     キャバクラの時給やセット料金を見ていると思うが、この世の中の女性、みんなキャバクラで働いた方が幸せになるんじゃないかと思うくらい、恵まれている。
     また、この本は、大箱は50名以上、中箱は20~30名、小箱は20名以下で、店内の構造まで載っているという丁寧さだ。携帯電話の使用に関する規則もかなり面白い。社長が手を出す以外は、かなり「乱倫」にならないよう、倫理的規定がある。狭い文化系サークルよりもよっぽど倫理的な世界だ。
     キャバ嬢の会話で「お父さんが」といったらそれは旦那。「お兄ちゃん」「弟」といった場合、それは彼氏である。俺は「お父さん」の写真を見せられて、「へ~立派な親父やね~」とマジで信じていたので、自分の馬鹿さに、思い出し笑いすること多数だが、キャバ嬢をやっていた女が彼女になったりしてそいつが肉親と遊びに行った話をはじめたら、たいていそれは男である。これは俺が見つけた法則であり、キャバ嬢の社会学には書いていない。あと、目を付けた女性にラインで送っていたけれども、やっぱりママに全部観られていた。怖いことだ。
     もう一度言う。水商売の女が言う、弟、兄は彼氏。お父さんは旦那。そしてラインはすべて見られている。そう、覚悟すべし。

     軽いおつまみ、あの謎のラムネとかオカキとかよくわからないチョイス。いったい何なんだといつも思う。誰だよ、このおつまみ買ってきたやつ! といつも思う。ラムネが酒にあうわけねーだろ!! チョコレートはどうか。サキイカで十分だが、店内がくさくなるから避けているのだろう。そして、このおつまみのことを「チャーム」ということがはじめて本著でわかった。

     50代のウェイターが更衣室を覗きにくる描写は素晴らしい。こういうところが良いのだと思う。結構細かいところを覚えるタイプなのだから、私小説(自分の失敗談を、誰もがあるあると思える形で書くタイプの人)作家になればいいのになと思った。
     アパレル店員の時給850円と、ソファに座って時給2500円のキャバ嬢。ランキングで競争心が煽られる仕組みについて、実際に自分の心が巻き込まれていくさまも書いていてよかった。あと「指名」についてもよくわかった。こんな程度の女性しゃべるのに、座らせ続けるために金を払うのか!! どんだけ寂しいんや!! と思ったが、確かに、キャバクラで働く女性を応援する気持ちはよくわかるが、何の生産性もないのに大丈夫だろうかと思う。けれど、社会人になると、人によってはめちゃくちゃ男友達が少なくなる。金をつかって「どや!」と本当の親友にいえる機会は少なくなる。俺も友達K君に、焼き肉おごったり、いくらでも金を使いたい。でも、今は彼は子育てしている。キャバクラで「金を使う」孤独をやってしまうのはよくわかる。だが、そんなところで金を使うのではなく、キャバ帰りの女が立ち寄るバーに深夜に行くほうがゆっくり話せるので、そういうバーを探すと良い。

     キャバクラでは、素人バイトのキャストたちを何とか継続的に出勤させ、ポイントを気持ちよく稼いでもらうかに重点が置かれている。P132の営業マニュアルはコピーして取っておこう。

     接客において、キャバ嬢らしさを出さないのが人気になるという矛盾が面白い。「ウーロン茶はお金がかかるから、水にしておいたら?」など。逆に男受けが良いという。キャストは客と長期的な関係を築くため、「騙す意図を持たない、信頼できるキャバクラ嬢」=「普通の女の子らしさ」をアピールする。
     客とのトラブル例で、P193があった。ここはちょっと間違っている気がした。「水商売ということで馬鹿にされた」と結論されていたが、そうではなくて、「水商売というプロを楽しんでいたのに、あまりに素人すぎる」「デートの女の子以下。自分の妻以下」だったからだろう。待ち合わせして、遅刻の理由が朝まで働いていて眠くて寝ていたなんて、彼氏彼女や友達同士でも通用しない。せめて事前に連絡しろよである。友達以下にされたのがぶち切れの原因であることにまったく気が付いていない。
     女を売り物にすることの、女としての楽しさ。女は若い方がいいという流れ。28歳になったキャストが引退してウエイトレスになっているのも面白いエピソードだ。
     北条かやとは絶対に結婚したくないけれども、楽しい友達にはなれそうである。

  • ガリ勉京大院生、キャバクラに潜入す__ 一流大学に通う筆者は、女らしさを売りにするキャバ嬢たちを〝そうするしかない人たち〟と哀れみ、自分とは違うと決めつけていた。しかし、ある時知人に「彼女たちもあなたも変わらない。違うと思っているなら、それはキャバ嬢を差別しているだけだ」と指摘され、愕然とする。真相を確かめるべく潜入したキャバクラは、想像以上の〝魔窟〟だった。女の矜持を刺激するランキング、〝全て自己責任〟のセクハラ対策、〝素人性を売りにするお水〟という矛盾。予想通りのくだらなさを感じつつ筆者は、徐々に夜の世界に〝ハマる〟想定外の自分に気づく……。キャバクラとは、病みとは、女とはなにか。八六年生まれの俊英が送る、〝武器としての社会学〟!

  • キャバ嬢になるという著書の実経験を基に、この社会にある「カオとカネの交換システム」を解き明かそうとする一冊。
    「女らしさ」がカネになるという現実は確かに存在し、それを「どこまで許せるか」は女性一人一人の判断によると主張する。
    その意味では性を売り物にするキャバ嬢と彼氏の前で女らしく振る舞う一般の女性に明確な線引きはない。「全ての女性はキャバ嬢になりえる」これが印象的だった。

    社会学というよりは、単なる一女性の潜入レポートと捉えた方が入りやすいと感じる。

  • 高等遊民の遊び、中々面白かったけど、最後の感想で私もキャバ嬢になりたいって感想で失笑してしまった

  • 実際にキャバクラに入店し、文字通り体を張って調査した記録と考察。著者のキャバ嬢体験談はさらっとしか書かれていないが、相当の悩みや苦しみがあったのではと推察する。
    すべての女は「カオとカネの交換」システムから逃れることはできず、イコール「すべての女はキャバ嬢になりうる」という著者の主張には諸手を挙げて賛成する。私も「カオとカネの交換」の対象である自分に違和感を感じていたから。

  • 修論ベースらしいが卒論レベル。キャバクラのシステムについては参考になった。

  • 社会が豊かになって、酒がハレの日の飲み物ではなくなった。

    社会学では、インタビューで、答えが社会的期待に沿ったものに変質してしまうことを重視する。

  • 女性の性風俗に興味のなかった著者が、社会学の見地から実際に体験取材していくもの。

    キャバクラに夢を抱いてる人は読まないほうがよいかも。
    そうでない人にとってはとても勉強になる一冊。

  • リアルキャバ嬢体験記と考察。
    キャバ嬢の着替え室はまさに代理体験。ユダや黒い太陽とは違った角度からキャバクラに行きたくなくなる本です。

  • 前半はキャバクラの歴史や文化、後半は著者が実際にキャバクラで働いてみての体験記や考察です。著者は修士論文を書くに際しての調査のためにキャバクラで働き始めたようで、素人から見たキャバクラが書かれています。男性を気分良くさせる会話術や、キャバ嬢同士に競争を促す店の構造など、全く知らない世界が広がっています。普段、キャバクラによく行く男性が店の裏側を知るために読むのもアリかもしれません。最後に、これは内容とは関係ないことですが、修士論文のためとはいえ自らキャバクラに潜入した著者の行動力に拍手を送りたいです。

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著者プロフィール

ライター。1986年、石川県金沢市生まれ。東京在住。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。「BLOGOS」「Yahoo!ニュース」をはじめ複数のメディアに社会系・経済系の記事を寄稿・提供。NHK「新世代が解く! ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。著書に『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)、『インターネットで死ぬということ』(イースト・プレス)など。

「2019年 『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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