知中論 理不尽な国の7つの論理 (星海社新書)

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著者 : 安田峰俊
  • 講談社 (2014年9月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385580

作品紹介

内在論理を知れば中国は怖くない──反中・嫌中の先へ
尖閣諸島への露骨な野心、反日デモにおける破壊行為、言論統制や少数民族の弾圧─。日本人の目から見た中国は、理不尽で横暴、人権も民主主義も認めない「悪い国」にほかなりません。しかし、中国を論じる視点を彼らが「バカ」で「悪」であることだけに求め、感情的な反中・嫌中に走るのは得策でしょうか? 中国には中国なりのそうならざるを得なかった事情もあるのではないか?本書ではそんな視点から、日中間に横たわる諸問題の背景にある文脈を丁寧に解きほぐしていきます。日本にとって中国は、二〇〇〇年近い交流と対峙の歴史を持つ隣国です。いま最も必要なのは、蔑視も理想論も捨ててリアルな中国と向き合う態度なのです。
中国人漫画・孫向文による漫画『中国のヤバくない日常』を併録!

知中論 理不尽な国の7つの論理 (星海社新書)の感想・レビュー・書評

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  •  世にヘイト本というものがあるのならば、そのヘイト本をほぼ全滅させるのがこの知中論だと思う。リベラル側から、この知中論の意見が積極的に出れば、保守と言われる人びともネトウヨも全滅するのではないか。
     星海社新書の本はいつも素晴らしい。ヒトラーと橋下を比較する本を書いた著者のあとがきの良さとか、この本とか、とにかく渋いのだ。いい感じに終わらせてくれる。

     中国は、強烈な被害者意識とナショナリズムが絡み合っていて、今後も世界中が再び陰謀をこらし、全世界が中国を陥れるのではないかという疑心暗鬼の国家意識になっているという指摘。いじめられっこであることが、ほんとうのことではなくなっているのに、いまだに本当に信じている人がタカ派や一般大衆にはいること。そして中国古典からわかる、ハートフルである一方、ときに伝統的な暴力肯定文化が、暴動発生の下地になっているということ。歴史と文化と現地取材を絡めて、論じていく。
     水滸伝をはじめ、西遊記でも、孫悟空は何の理由もなくいろんなものをぶちこわし、乱暴狼藉の限りを尽くす。それが喝采を受けるのだ。儒教的な正義の論理を持ち込もうと、士大夫層は努力するが、民衆はそんなものを見ていないという。あと、暴動でぶっ壊された百貨店が、日系百貨店の平和堂とかだったり、ところどころ挟まれた挿話が面白い。
     中国が現在の政治体制を維持し、下層庶民層の人たちが「張飛」や「孫悟空」の伝統を持ち続ける限り、反日デモは今後も発生し続けると著者は言う。庶民はいったいどんな政治家を求めているのか。殿上人があえて庶民の立場に降りてきて彼らと視点を共有し、「名君」として政策に反映するという「気さくで庶民の心がわかる名君」のイメージが大事であるという。中国は専制体制だからこそ、ポピュリズムが必要で、政権が選挙の洗礼を受けていないからこそ、中国共産党は常に、自分たちの統治の正当性を人民に向けてアピールする必要に迫られている。
     靖国の問題についても著者は触れていく。
     中国人の価値観において、個人の罪業やそれに対する後生の人びとの憎悪は、当事者が死んでもなお半永久的に継続するという。それを踏まえて、P156から157にかけてはかなり重要なことを言っている。戦争はどれだけ悪いことをしても勝った側が正義で負けた側は悪であり、常識として固定化されている現実をどうしていくか、かなり困難であり、今後もずっと靖国の霊は世界共通の敵であるという認識は続くという前提も、そうだろうなと思える。日本国内の認識と世界からの認識を分けなければいけないと言う。
    (ちなみに著者は、日本国内の認識を世界に広めようとも、世界の認識にあわせないといけないとも書いていない)
     P159への、靖国参拝をめぐる保守政治家の国防上の姑息さは、トラブルをおさえる妥協点として「英霊」の意図に反しないという理解も良い。P220の、嫌韓、嫌中への言葉もその通り。読み終えて、とにかく決定版という感じがする。

     著者の専門はいわゆる「あの珊瑚密漁の船団の正体」である。中国をすぐに共産「党」として考えるのではなく、やくざな海洋民族がいるという、歴史を知っていれば、単純な見方は回避できる。知識の重要性(専門書を読んで勉強しろ!という著者の最後の主張の通り)、調べることの大切さがこの本からわかる。

  • 全ての思想信条から距離を置いた、あくまでクールな視点に徹した現代中国に関する解説本。アブク銭目当ての穢らわしい差別本が横行するなか、純粋な「なぜなのか知りたい」という欲求に応えてくれる。こういうのでいいんだ、こういうので。

  • ネット上で著者の事を知り、購入。
    比較的軽い文体を深い知識の裏付けを持った状態で書いているように思える。北京に現在在住し、もろもろの中国人を触れる中で感じることをわかりやすい表現で例えてくれている気がする。個人的には内政が陰謀ばかりだからといって、外交はすべて陰謀による諸外国(特に西側)からのイジメというような認識を一般大衆が持っているのはどうにかならんのかと思う。自信と劣等感の同居、さらに特に歴史や政治に関して矛盾点を突っ込まれるとただ感情的に反応するか意味不明な論点のズラシになるか、ほんとどうにかしてほしい。もっと建設的な意見の交換をしたいものだと常々思ってします。

    面白かった表現をいくつか抜粋。

    P36 中国とは、人間に例えれば図体もでかくカネも社会的地位も持つようになった大人が、普段は自信満々で傲慢な言動を繰り返しているのに、心の中では過去に受けたイジメに対する屈折した被害者意識と警戒心を持ち続けているようなものです。非常に面倒くさい人間になってしまったわけですね。

    P126 中国の官僚はもともと、ちょっと私腹を肥やしながら豪快に業務を進めていくのが常で、逆に言えばそういった仕事のやり方しか知らない。彼らは汚職や職権乱用を禁じられると、従来のような悪い事をしなくなるかわりに、働く事もやめてしまうというのです。

    P176 少数民族問題に関して
    当時の㈱チャイナ産業と㈱モンゴル草原商事・㈱チベット仏教物産・㈱新疆テュルク・イスラム興業といった潘部との関係は、共通の持株会社・大清帝国ホールディングスのもとでの子会社同士という位置づけです。大清帝国Gの一員という意識はありながらも、対等の子会社であったチャイナ産業の社員としての意識はなく、大清帝国HD破綻後、残務処理事業を引き継いだチャイナ産業の支配を受けることに抵抗をしめした。

    以上。

  • 福建の漁民の話は面白かった。

  • こういう視点の本待ってました。目から鱗とはまさにこのこと!尖閣問題は「ムラバトル(械闘)」?反日デモは「孫悟空」??一家に一冊置いとけば、無益なデマにも流されない!!? 全国の嫌中・嫌韓論者へ!

  • 「『歴史上の悪人』を許さない」という文化という話は面白かった

  • 中国の影響の増大に危機感を覚える。
    ゆえに、中国が嫌いである。

    現在、一般的日本人の中国に対するイメージはこういうものではないか。
    俺もそうです。そうじゃなかったらゴメンナサイね。

    ラオスやカンボジア、周辺地域の取り込めそうな国には金をばら撒き仲間にし、領土で利害が対立するフィリピン、ベトナムのパラセル・スプラトリーには大量の漁船を送り込む。

    金に物を言わせてアフリカ、南アメリカのインフラ受注に精を出す。

    お金あるからって何でもできると思わないでよね!!(と、憤慨するのはかつてのバブル期の日本をそこに見る同族嫌悪も含まれるのだろうか)

    日本に対して反日でやりたい放題、小笠原にはサンゴの密漁(もはや密漁でなく盗人猛々しい)に押し寄せる。

    自国民のチベットウイグルに対しての民族同化政策で内乱状態なのに。

    ここまで民度が低くて、よくも一等国を自認出来るものだ。好かれる要素まるでなし。


    一体、中国はなんなのか。そのアイデンティティを歴史から探るのが本書の目的である。

    中国は産業革命以前は世界最先端の国だったことは間違いない。

    周辺国に対する朝貢制度でアジアの全域を手中に収めていた。

    しかし、西洋諸国の帝国主義が全世界に波及するにつれて中国は没落の一途をたどる。

    「昔は世界一だったのに、どうして俺らがこんな目に会わなきゃいけないんだ」

    過去からルサンチマンを抱えたままというのが中国のアイデンティティだ。


    今後も反日暴動は起きるのか、
    靖国神社はなぜ問題になるのか、
    そして、私たち日本人はなぜ中国に腹が立つのか。

    全部で7つのテーマで中国を分析する。


    上海で一日にして8万円をぼったくられたのはいい思い出です。クソが。

  • 日本の漢字文化は中国から伝わりましたが、日本はそのまま受け入れずに享受したわけではありません。日本は日本独自の知恵・文化で漢字そのものを日本流の文かとして呑み込み、新たな日本文化を形成したのです。文化の始まりは中国の方が早いかもしれないが、それ自体が事の優劣を決めるものではありません。だから、日本人は胸を張って中国に害されることなく誇りを持って生きれば良いのです。
    本書は、あくまで参考程度に読ませていただきました。内容によっては、著者の歴史観の認識不足があることは否めないでしょう。しかしながら、本書は中国を否定した内容ではなく、理解を深めるための参考書なのかもしれません。著者にとっての「知中論」は、擁護論と認識しました。
    古代中国文化について尊ぶ点はありますが、近現在史において学ぶ点は一切ありません。聖徳太子の言葉に「日出処の天子より、書没する処の天子へ」をお忘れなく!
    最後に著者は、以下のように書いています。
    『中国は中国であるがゆえに、民主化しないのだ』と。
    民主化しないのではなく現政権の粛清が怖くて出来ないのである。64天安門事件をお忘れか。出来ないから中国人民が我慢しているのである。逃げられないから我慢しています。どうにもならない体制を、命を張って革命を起こすことが出来ません。言論も報道も規制され、手足を捥がれてしまった中国人民に自由が無いのはわかりきったことですね。共産党の暴走は誰が止めるのでしょうか。中国の現状は理解できるが、著者の主張は日本人には受け入れられません。プロフィールを見るとまだ32歳、尻の青い若造よ!勉強やり直せ!

  • 物事の考え方や捉え方の違い、根本的な立脚点の違いが判りやすく書かれており面白かった。
    読み易い文書で通勤通学時に手軽に読める。
    なかなかにオススメ。

  • いわゆる嫌中本ではないのかもしれませんが、やはりそういう文脈で読まれ、売れているのではないでしょうか? 言っていることは至極もっともで、こういう問われ方をしたら中国人も答えに窮するかもしれません。の靖国問題に対する著者の意見も妥当なところではないかと感じました。

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