中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385658

作品紹介・あらすじ

6億人のユーザーを抱える独立国が、ネット上に出現した!
2014年末、中国政府はGoogleを完全に遮断し、ワールドワイドウェブから独立を果たしました。Twitterなどの西側サービスを拒絶し、国外サイトへのアクセスを制限された世界は不気味にも思えます。しかし、そこでは6億人が、パクリ的な国内サービスを使ってインターネットを楽しんでいます。では、このネット上の独立国はいかにして成立したのでしょうか? その過程を探ると、いくつもの興味深い事実が明らかになりました。ネット導入は政府主導だったこと、パクリでも国産サービスが選ばれること、しかし国内のIT企業は常に世界を目指していたこと……。さあ、ネット上に国境線が引かれるまでの20年を、共に辿り直しましょう!

感想・レビュー・書評

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  • 中国のインターネットがWWWから独立を果たすまでの経緯をサクッと読み込めた。ネットにおける糞青と小資といった属性の成り立ちや、微博がいかにして凋落していったか等、通史的アプローチの流れの中で微に入り細を穿った解説を元に理解することができて満足。

  • 中国におけるインターネット発展の歴史。

    電話やインターネット環境の整備で欧米や日本に遅れをとったものの、いつの間にか日本の遥か先を走っているネット大国、中国。「後出しジャンケン」で米国IT企業(や日本企業)のサービス・コンテンツをコピーて提供し、大成功を収めたBAT等の新興IT企業。一方で、検閲と遮断により強力なネット規制をかける中国政府。

    著者によれば、中国政府は「ハイテク製品が好きで、ゲームキューブが好きで、横文字が苦手で同胞の繋がりが大事。時々は社会問題に若干の興味を持つけれど、決して本気ではなく、むしろ商人気質で儲け話に飛びついてしまう」典型的な中国人民に居心地のいいネット空間を作り上げることに成功しているのだとという。

    四年前の本だが、中国ネット事情を知ることができた。

  • 90年代にネットが登場して以来、中国のインターネットがどのように発展してきたのかを記した初の通史。著者は2002年に昆明に移り住んで以来、その歴史をつぶさに見てきた。中国人だと発信し得ない検閲制度の発展ぶりについても記してあり、大変に貴重。
    ワールドワイドウェブからの独立というのは言いすぎのような気がするが、ローカライズされたネット環境に大半の中国人が満足しており、ネットが民主化の起爆剤にならない現状や、そうさせないための中国当局の手腕のすごさが手に取るようにわかった。

  •  近いようで遠い中国。独自のネット文化を持っている国。ネット文化の開花から「金盾」によるWWWからの独立まで、その時々に台頭したサービスや製品、ネット民の動向まで追った本。見栄っぱりで実利的、同朋思いの中国人の生活、中国政府のインターネットに対する捉え方。今まで考えたことの無い視点で読めた。

  •  中国の活力、エネルギーを感じることのできる現代文化史で、事実を淡々と追っていてかなり良い本と思った。
     達成することはできなかったと書いてはあるけれども、金字工程は見ていて心地いいほどの国としての力強さを感じる。日本の総理は総活躍とかじゃなくて、こういう工程を示してほしい。
     金庸という武侠小説家が、武侠RPGパソコンゲームのヒットの背景にあるというのも面白かった。
     中国のインターネットは95年、清華大学BBSからスタートした。が、尖閣諸島問題などが盛り上がり始めた98年ごろには活発な意見交換を避けるためにはやくも運営が停止される。
     中国のITを進歩させたのは「SARS」である。人々ができるだけ外出を避け、在宅で様々な用を足せるインターネットの各サービスが急激に普及するきっかけになったという。また、中国人は面子のために背伸びして分不相応なものを持つという習慣があり、パソコンの普及に一役買っているという指摘も興味深い。「他人を信用しない」という中国人の基本的な性質を乗り越えるため、阿理巴巴が、商品が到着して中身を確認してから支払いを行うサービスや販売者と購入者をつなぐ専用チャットソフトを用いたことで信用を勝ち取ったという。IT企業の熾烈な商戦が目まぐるしい展開で、そこにちょくちょく政府が介入し、絶妙にコントロールしている。
     中国がひたすら推し進めた公安の情報化・金盾工程の行き着いた先はワールドワイドウェブからの独立。「中国はネットワークの国境を作るべきだ。領土・領空のように領網を作るべきだ」としてグーグルを完全に遮断。あの何億もの民がネットによって民主化すると思いきや、ネットこそ体制のための有効なツールであるとしてしまった。この本は、文化史と同時に、インターネットの持つ自由の活力をどうしたらコントロールできるかの、企業と政府のタッグによる民衆への戦いの歴史を書いたものと思った。偏見もなにもなく書かれてあるので、大国のエネルギーに絶望的になる。強烈な一冊。億単位なのに別世界という、不思議なとてつもなく分厚い壁を感じる。
     中国版ネット右翼が、急に登場したのではなく、徐々に醸成されていたことや、そのネット右翼をたしなめる側もあり、言論の空間は禁止ワードを除いて保たれていることも書かれてある。(これも不思議な分厚い壁だ)
     なぜ億単位の国が成り立っているのか。この本でのジャスミン革命や雨傘革命の書き方は、悲しいまでに、勝ち目なしを感じさせる。それも、とても勉強になる。

  • 中国のインターネットについて書かれた本があまりないのでありがたい本

  • 正にタイトルの通り、中国のインターネット史を振り返る内容です。インターネットに付随してAV機器やゲームなど周辺の話も語られています。インターネット史よりもインターネットを使う中国人の特徴が印象的でした。安くて便利なら海賊版を使うという実利的な一面が一貫して存在することを感じます。日本では結果より過程が重要視されることがありますが、この本を読んだ限り、中国では結果が圧倒的に大事に思えます。そうなると、クラウドファンディングのような過程の段階から応援するタイプの課金が難しかったりするのかなと疑問に感じました。

  • ガラパゴス化もその絶対数が多ければ新しいスタンダードになる。

    輸入して、マネをして、囲い込む。日本が高度成長期にやってきたことを中国のインターネットは10年ほどで成し遂げた。

    その間、日本の通信業界はどうだったか。日本製ガラケーが席巻していた10年前からは考えられないほど縮小した。
    反対に、今現在中国では小米のスマホが世界三位の売り上げを誇っている。

    さて、なぜ日本のガラケーは絶滅して中国のスマホは売り上げを伸ばしたのか。

    国内市場の絶対数によるものだ。

    日本市場はこれからの成長が見込めない。世界に打って出よう←グローバル化の波で討死

    対して中国市場は13億強の人口を誇る中国では北京上海などのメガシティに加えて、内陸部の無数の百万都市という市場が残っている。
    市場開放せずとも国内市場で賄える圧倒的絶対数だ。

    ガラパゴスも絶対数が多ければスタンダードになる。

    そして、スタンダードになったからこそ言論統制や検閲も、それが当然ののこととして市民に受け入れられているのだろう。


    終章で気になったことがある。

    「90年代生まれを中心に中国のアニメを受容する世代が出現したのです」
    「21世紀生まれに対しては、さらに日本のコンテンツの影響は薄まり、中国の閉じたコンテンツ環境で育つでしょう」

    クールジャパンって、ほんとに海外で受け入れられてるの?

    日本の電気製品大人気、とか言っておきながら、いつの間にか衰退してたでしょ。

    もしかしたら、日ごろ新聞ニュースで言われる景気のいい輸出話は大本営発表かもしれないね。

    無意識に「日本の○○こそ世界に輝く素晴らしい技術」と思ってる日本人はうま~くシビリアンコントロールされてるのかもね。

  • インターネット普及発展の裏側にある中国(人)の習慣、制度、事件について知ることができる一冊

  • 中国のインターネットの歴史に関するステレオタイプを払拭してくれ良書、急成長する中国のインターネット業界を俯瞰し、情報を整理するためのベースになる。

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著者プロフィール

アジアITライター。1976年東京都出身。東京電機大学卒。システムエンジニアを経て、中国やアジアを専門とするITライターとなる。現地の消費者に近い目線でのレポートを得意とし、バックパッカー並の予算でアジア各国を飛び回る日々を送っている。「文春オンライン」「ASCII」「engadget」などを中心に多数の連載を持ち、単著に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立』『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本』(いずれも星海社新書)などがある。ツイッターは@YamayaT

「2022年 『移民時代の異国飯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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