文学の読み方 (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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本棚登録 : 162
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061386006

作品紹介・あらすじ

''錯覚,,と苦闘する、日本近代文学の一〇〇年史
いったい、日本の文学とは何なのでしょう? 本書の出発点は、そんな素朴な疑問にあります。明治以来一〇〇年以上に及ぶ歴史がありながら、具体的で納得できる「文学」の定義はどこを探しても見つかりませんし、権威ある文学賞の授賞基準もいまだに一定しないようです。なぜ、日本の文学はこんなふうになってしまったのでしょう? 実は、その原因は「文学は現実を描ける」「文学は人間を描ける」といった、いくつもの“錯覚”にあるのです。本書では、それらの錯覚がどのように生まれたのか、各時代の史料から確認しつつ、日本近代文学史を記述していきます。さあ、ともに教科書では語られない、秘められた文学史をさぐる旅に出ましょう!

感想・レビュー・書評

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  • 帯の惹句は『文学は、「現実」も「人の心」も描けない。』というもの。
    1974年生まれのさやわかさんが、定義をはっきりとさせず曖昧なまま始まってしまった明治以降の『日本文学』様のメッキをポロポロと剥がれ落とす。
    よく『人間が描けてない』とか『現実が描けてない』とか言いますよね。
    『人間や現実を描く』なんて、そんなこと単なる「言葉」でできるかどうか。
    『描けている』と思ってもそれは錯覚にすぎない、とこの本は言い切ります。
    その上で私たち(私)は『文学』とどう付き合っていくか。

    私には難しく苦労して読んだのですが読んでよかったと思えました。

  •  意外にも芥川再評価の本。
    「文学とは、人の心を描くものである」
    「文学とは、ありのままの現実を描くものである」
    「人の心を描く」とは何か。「現実を書けていない」とは何か。明治にさかのぼって検討していく。
     文学とは、中国ではそもそも学問一般をさしている。福地桜痴や成島柳北ら新聞社の人物らが「日本には文学がない」と吠え、それに坪内逍遥がこたえることからはじまる。そこから花袋やら鴎外やらが出てくるのだが、ここで作者が「文学とは何か」のアンサーとして基本にしているのが、芥川の「文芸的な、余りに文芸的な」であることに驚いた。確か志賀直哉の焚火が良いとか言ってたように思うのだけれども、彼の言う……言いたかった「純粋な小説」とは何のかを、さわやか氏は取り組んでいく。で、芥川は「文学とは、ありのままの現実を描くものである」という錯覚を超克しようとしていたと述べる。
     いくら、現実を一生懸命書いても、現実そのものには到達できない。ならば、どこまでいっても現実は書けないという現実を受け入れつつ、表現を深めていく。書き手の「目」を表現し続ける。現実がすぐ目の前にあっても、いくらでも虚構をかましてもいい。だから、どれだけ嘘を現実より面白く味わい深くかましてくれたかが大切なのだということになる。
     だから、「著者は現実や人の心がわかってない」という批評は検討違いということになる。「現実や人の心がわかってないからこそ書かなければならなかった」のである。
    「あたかも~のように思わせる」というその錯覚。ただそれだけが重要だというのも、わかる。
     本著で、気になるのは、西洋はどうなんだ? 西洋人は錯覚とかしてなくて、何もかも分かっているのか。西洋は書けていて、日本人は書けないって、それは明治のころのスタートとあまり変わらないのではとか、と、谷崎の「筋」に対するこだわりも、べつに「あたかも~のように思わせる」につながるのではないかということ。結局芥川は「林檎の木」みたいなロマンチックな倫理を、西洋に負けない日本風でやりたかっただけで、彼が現実を避けたのは、たんに「家族の目」とか色々あったからではないのかとか、この議論の中心にいる志賀直哉の作品はさわやか氏にとってどうなのかとか、いろんな議論はあるだろうけれども、「やれやれ、近頃の若い者は人間の心や現実がわかっとらん」みたいな人間を一掃するにはとても良い本であると思える。

  • さやわか氏による、文学の認識史?というべきか。文学とはいかに「錯覚」を生み出し「現実」を描いているように思わせるのかの歴史であり、それを巡って明治から始まる文学史を語り直す。その流れに東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生』に結びつけ(というかこの本が発端かしら)たのも個人的には大事のように思う。
    なにせ読みやすくわかりやすく、楽しく読んだ。氏の守備範囲の広さには毎度驚かされます。

  • 文学とは何か。literatureの訳語としての文学を明治時代から現代まで辿っていく本です。ゲンロン中継でも活躍するさやわかさんの視点の面白さが味わえます。著者は実は文学好きでもあったんですね。

  • 著者は、又吉直樹の『火花』が芥川賞を受賞したことに対して、和田アキ子が「文学だとは思えない」と評したことに注目して、文学の「文学性」はいったいどこに存在しているのかという問いを提起します。そのうえで、近代日本文学史をさかのぼり、「文学とは、人の心を描くものである」とか「文学とは、ありのままの現実を描くものである」といった理解がどのように形成され、変容していったのかということをたどっていきます。

    著者は、「文学とは、人の心を描くものである」とか「文学とは、ありのままの現実を描くものである」といった理解は「錯覚」であるといいます。この二つの「錯覚」は、たがいに相容れない内容をもちながらも、こうした「錯覚」をめぐって近代以降の日本の文学が書かれつづけてきたことが明らかにされます。

    こうした見かたは、現代の文学研究においてしばしば語られていますが、本書では村上龍の芥川賞受賞作である『限りなく透明に近いブルー』と村上春樹の『ノルウェイの森』の考察を通して、「文学とは、現実を描くものである」という「錯覚」が虚構にすぎないことが露見し、そのことが現代の文学シーンにまで影響していると論じています。とりわけ著者は、ライトノベルを執筆する「方法」をあけすけに語りながら、同時に「現実」がえがかれることを希求した大塚英志と、そうした「リアリズム」を解体して「ゲーム的リアリズム」を提唱した東浩紀の対立にも言及しています。

    ただ、近代以降の日本文学史の形成過程については、大塚も彼自身の問題関心にしたがった考察をおこなっており、本書の議論がそうした大塚の見かたとどのような関係にあるのかということが、直接的には語られていないことにもどかしさをおぼえました。

  • 要は、小説は現実を描いていないし、そう感じるのは錯覚である、ということ。これは、現在の国語教育にも通じている。誰の作品が重要な文学として教材になるかという問題も、その時代によって作り出された象徴でしかないことがあり得るから、ただ「鷗外が消えた。漱石が消えた」と騒ぐのは当たらない批判であるということだろう。(ちなみに、石原千秋は、鷗外も漱石も消えておらず、メディアが一部のみ切り取って騒いでいるだけ、と言っていた。)そして、従来の国語の授業では、小説からその時代やあるいは作者の生きていた時代や歴史がわかると考えていること(これは歴史研究者が文学を扱う手法)、また、小説から作者の思い、つまり、なぜこの作品を書いたと思うかという答えがわかると考えていること、これらも大きな錯覚であり、この本の内容はそうした国語教育のあり方に通じている。
    この本の中に挙げられる多くの引用がとても役に立つ。こういう資料を調べる作業は本当に大変だと思う。ありがたい。

  • うーん、なんかイマイチ評価しかねる。やや牽強付会では?

  • 日本文学の受容が平易に書かれている。昨今の文学の虚構性を村上龍、春樹と繋げてラノベへと結びつけるところは非常に刺激的。ただそれも一過性の現象で、誰にも信じられていない擬制としての文学の権威は今後も続くように思われる。ニッポンの文学と併せてどうぞ。

  • 文学とは何ぞや!?という疑問に踏み込んだ名著。
    結局、我々は個々の中にある「文学」というものの共通理解を図れていないまま、「文学」について語ってしまっているのだ。

  • 錯覚を共感と読み替えても良いかもしれない
    絵画や漫画同様に写実的だからとか内面的だから共感が得られる訳でなくあえて下手ウマみたいな絵の方が共感を呼ぶ場合もある
    文学におけるリアリズムや内面描写も一つの方法論であったというと事だろうか
    まあ評価が混乱していることで、多様な作品が出てくるのは良い事かなと思う

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著者プロフィール

ライター・評論家・マンガ原作者。1974年北海道生まれ。大学卒業後は、個人ニュースサイト「ムーノーローカル」を運営(1999年~2001年)しつつ、音楽業界・出版業界での会社勤務を経て、ライターとして執筆活動を開始。小説、マンガ、アニメ、音楽、映画、演劇、ネットなどについて幅広く評論する。著書に『僕たちのゲーム史』『一〇年代文化論』(共に星海社新書)、『キャラの思考法』(青土社)他多数。マンガ原作に『qtμt キューティーミューティー』(作画・ふみふみこ/スクウェア・エニックス)がある。

「2017年 『僕たちのインターネット史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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