電通と博報堂は何をしているのか (星海社新書)

著者 :
  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061386082

作品紹介・あらすじ

彼らは単なるモーレツサラリーマンであり、社畜である。
五輪エンブレム騒動、若手女子社員過労自殺……。いま、広告代理店に逆風が吹いている。ネット上には、「パワハラ・セクハラは日常茶飯事」「社員はコネ入社で使えない人間ばかり」など、虚実入り交じった悪評が連日書き込まれている。なぜ電通・博報堂はこんなにも嫌われているのか。それは彼らが高利益をあげ、高い給料を得ている(とされている)にもかかわらず「何をしているかわからない」からである。長らく広告業界は、敢えて自分たちの仕事内容を開示せず、クライアントとの情報の非対称を利用して仕事を進めてきた。そのツケがいま、きている。本書は、博報堂出身の筆者がおくる真実の会社案内であり、業界案内である。


【目次】
はじめに
「広告代理店社員」とは誰か
「電通陰謀論」一覧
サッカー日本代表のスタメンは電通が決めている?

第1章 超長時間労働を生み出す業界構造
箝口令「絶対に私の身元がバレないようにしてください」
『気まぐれコンセプト』の世界は本当か?
会議は続くよいつまでも
広告業界「トホホ」エピソード集

第2章 「パクリ疑惑と過労問題」広告業界に落ちた二つの爆弾
電通社員からみた博報堂
「融通」を自分できかせるしかないデジタルの仕事
あっぱれ! 電通流テレビ局食い込み術
私大出身者VS国立大出身者

第3章 「忠義」の電通、「ビジネス」の博報堂
こんなにある! 電通と博報堂の違い
中堅広告代理店社員の思い
電通に転職するには……
大手広告代理店を抜ける人たち

第4章 広告都市伝説の真偽
「全裸でコンドームを買ってこい!」と言われた新入社員
選挙にも広告代理店は絡んでいる
人気があるから「CMキング・クイーン」になるわけではない
炎上にビビりまくるクライアント

感想・レビュー・書評

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  • 元博報堂マンの著者が電博の社員に取材をし、企業の実態や内部の雰囲気を書いた本。選りすぐりの切れ者たちが入社していく電通や博報堂は中で実際どんな働きをしているのか気になって読んだ。

    本書を通して一番驚いたのは、電通がお客様に「できない」とは言えない下請け的な働き方をしているということだ。勝手なイメージだと場合によっては広告主の意向を無視してまで面白いメッセージ性のある広告を出してやるみたいなイメージだったが、広告主からの圧力に耐えながら長時間考え抜くという姿がとても意外だった。また、こういった「アイデアで社会を変える」ような企業であるのに、クライアントに頑張っている姿を見せるためにプレゼンぎりぎりまで会議をしたり、無駄に大勢でイベント会場に早乗りしたりする姿はとても意外で、電通でさえそんな合理的でない仕事が存在すると思うと、ほかの会社などはなおさらだろうなと思い失望さえ感じた。

    電通や博報堂には頭がとてもキレておもしろく、どんな問題も新たなアイデアで乗り越える、みたいなスーパーマンを想像していたのだが、実際にはメディアの買い付けやクライアントの意向を逐一確認するための営業など、クリエーター以外の人間も多く働いているのだなと思った(あたりまえだけど)入社の際はオモシロ人間を採用する仕組みにしているのに普通のサラリーマンとして働かせるのはもったいないなあと思ったりもした。

    本書では電通についての陰謀論がいくつか紹介されていたが、どうやらどれも大枠では違うようだ。「日本の政財界を裏で電通がすべて操っている」とかがほんとうだったら面白かったのにな。とにかく良くも悪くも電通や博報堂は想像しているよりずっと普通のサラリーマンたちだという認識が新しかった。

  • 電通や博報堂などのいわゆる高校代理店が、実際にどのような業務をして、社会にどのような影響を与えているかを記した一冊。

    正直、面白みはあまりなかったが、これまで広告代理店について知ることがなかったので、勉強になった。

  • 一昨年の電通過労自死事件は超過勤務による
    労災認定に端を発し、その社員が東大卒の才媛
    という、そのプロフィールもメディアの格好の
    餌食となった。また、ネット広告過大請求総額
    2億3千万円の不祥事も加わり、連日敵意溢れる
    論調が飛び交った。

    そこには大手代理店、とりわけ電通が政財界を
    牛耳り、情報を操り暗躍する会社といった、
    得体の知れない畏怖の念に対する「意趣返し」
    にも似た感情があったのは疑う余地がない。

    これらを踏まえ、元博報堂社員の著者による、
    「広告代理店って、何をして儲けているのか?」
    「電通と博報堂の違いは?」など、
    現役社員へのヒアリングと自身の経験談を
    交え語る広告代理店論。

    東京五輪エンブレムの顛末にはじまり、
    電通の都市伝説や広告業界あるあるを揶揄した、
    漫画「気まぐれコンセプト」の真偽等、著者は
    二大代理店の差異を「愛」ある目線で語る。

    広告会社は自社でモノを作って売っているわけで
    なく、クライアントから要請を受けて初めて
    仕事が動き出す典型的な受注産業。
    広告制作には「こうすればできる」という
    システムがあるわけでなく、大まかな手順は
    あるが、その都度がカスタムメイド。
    何かしらの予期せぬ事態やクライアントの指示
    変更等に遭遇しながら、如何ともしがたい納品日
    やプレゼン日に向け、リスケを繰り返し着地を
    目指す。

    そう、僕自身、労働集約型産業ゆえ長時間勤務も
    致し方なしという認識を持っている。
    政府の掲げる「働き方改革」について、
    まったくもって懐疑的なのは広告マンだと 思う。
    だってクライアント企業がお帰りあそばされた
    日没後はケータイも鳴らず、メールも届かない
    格好の企画立案タイムであるからだ。
    これだけを見てもブラックな業界だよなって
    つくづく思う。

    ただ、電通・博報堂は何と言っても厚遇であり、
    看板(ブランド)があり、そこの社員であるという
    プライドが、理不尽な要求や社畜と嘲笑されようが
    それを受け流すことができているのも確かだ。

    むしろ懸念するのは、この国の広告代理店の
    ビジネススタイルがヤバいということ。
    これまで代理店が標榜していた、
    「我々に発注いただければ、アド〜SPまで
    『ワンストップ』で対応できます!」が
    クライアントに通用しなくなってきている。

    本書にも「電通デジタル」が紹介されているが、
    デジタル分野においてはネット専業代理店に
    遅れをとっているのは明らかである。
    その主たる原因が、入稿してしまえば
    とりあえず一丁上がりのメディア広告に比べ、
    ネット広告はレスポンスが即把握できるため、
    際限なく追加ややり直し作業が延々と続く。
    その割には売上的に美味しくないという現実。
    CM制作という甘味を知っているがゆえ、
    デジタル分野での収益と比較 してしまい、
    本腰稼働にほど遠い。

    この世界に永く身を置く者として、
    メディアの興亡に従って「代理店不要」という
    流れに向かわないようにするには、
    会社に属してはいても「ひとり広告代理店」の
    意識を持てるかどうか。

    要するに、属人的な発想から脱却し、
    広告屋として培った人的ネットワークとスキルと
    現場力を活かし、いかにしてクライアントを
    プロデュースするか。
    オリエンで提示された与件を条件と見なさず
    それを足かがりにし、プロジェクトを
    より魅力的なものに仕立てるか。

    これがこの業界に30年余、身を置く者としての
    坦懐であり、近未来予想図である。

  •  非常に重要なことをいくつか言っていて面白かった。残業の多さについて、結局は「広告は100点が何かわからないので、考え抜いたことが重要になる=残業」という体育会系の努力主義。信頼を勝ち得るための、凄まじい献身。そして、著者は、「やっぱり電通は考えるキャンペーンのダイナミックさがすごい」と認めているところが面白い。保育士不足とか、様々な問題も、電通に頼めばなんとかできそうな気がする。自治体は、電通に保育士不足解消のキャンペーンを依頼してはどうか。

     あと、この文章のなかで、博報堂のクリエイティブな面について言及していて、「賞とりますといって本当にとってしまった」ってあの「森の木琴」のCMだろうか。

     この本の中でもっとも重要な一行は、「自民党が電通。民主党は博報堂に依頼する伝統が存在する。CM、キャンペーン、ポスター、世論ウォッチ、SNS代行など行っている」のところだった。というのも、私は、この事実について、全く知らなった。立憲主義とか、あのツイッターSNSの妙に刺激するハッシュタグとか、もしかして「日本死ね」も……? いや、あれはさすがに広告代理店じゃないだろう。でも、広めたのは代理店? 確かに陰謀論は外れているがそれにつながるような事象はある。この本の冒頭にも、枕営業が実際にあったことが書かれているわけだし。でも、みんながみんな枕営業しているわけじゃないということだけだ。また「有識者会議」も広告代理店が紹介したり、集めたりしているのも書いてある。こういうところってめっちゃくちゃ重要だと思うのだが。それは「政府を裏から動かす」ではなく、あくまで「要望にサービスしている」のである。全力でサービスしているので、別に陰謀を持っているわけではないのだ。電通の陰謀論ではなく、政府がめっちゃ電通を使っているだけだ。それは民主党も同じだ。

     立憲民主党や自民党と、そのまわりの知識人の騒ぎようと……。それから広告代理店と。
     政党があり、金があり、広告代理店があり、そこに連なる知識人があり、扇動される一般大衆あり……。この本は結構、一気に見えてくるものがある重要な証言本だと思うのだが。
     そして、いつも損をするのは、がっかりするのは、振り回されるのは、まじめに保守をやったり、自由について考えている勉強熱心な庶民だけだ。
     これから、ツイッターはさらに、広告代理店アカウントみたいなので、いったいどの知識人に広告代理店がついているのかわからないなかで、激戦になっていく。

  • 顧客第一主義が生み出す光と闇。元博報堂社員の著者の経験と、電通・博報堂現役社員に取材して得た情報をもとに、広告代理店を舞台とした仕事のあり方とそこで働く人々の考えやクライアントの関係を、実態に即して綴る。

    著者は一橋大を出て博報堂に4年間務めたものの、激務で辞めてフリーライターとなったという。現在も業界と密接な関係にあるので、匿名とはいえ現役社員たちの生々しい声が綴られ興味深い。電通と博報堂の社風の違いなど、なるほどと思わせる記述も多い。広告業界を描く長寿連載漫画「気まぐれコンセプト」の描く世界は「8割が当たっている」というのには笑えた。
    (B)

  • 中川淳一郎さんによる、元博報堂社員として、また、一ライターとして見る電通と博報堂の姿。多くの現役社員へのインタビューも含めてまとまっていて、就活生にも、取引先としてかかわりがある人にも面白いんでないでしょうか。
    自分の業界の常識は他の業界の非常識。にも関わらずいろんな業界とかかわるがためになんとなく気になる広告代理店の姿。
    正解のない仕事・終わりのない仕事であるがゆえの難しさ・面白さは僕自身も転職して強く感じたところだったなぁと懐かしい気持ちになったり。

  • 20231016読了

  • 四年で卒業されてるのはもったいない気がします。

  • <どんな本?一言で紹介>
    かつて博報堂に18年務めた著者がおくる、頭脳と肉体を限界まで酷使する、大手広告代理店マンたちの壮絶な仕事ぶりが描かれた本。

    <どんな人におすすめ?>
    広告代理店を目指す就活生。
    広告代理店の業界研究をしている人。
    広告代理店はブラックといわれているが本当か知りたい人。

    <読んだら、どんなことが分かるの?>
    相手の意見を取り入れて、共感と感情移入を起こさせながら、自分の仕事を強く、太く、大きくしていくためのスキル「質問力」。

    ・大手広告代理店マンのすごい仕事ぶり
    ・広告代理店は家内制手工業!?

    ・大手広告代理店マンの素顔
    ・スーツは戦闘服である ――広告代理店マンの身だしなみ

    ・営業マンのすごい接待
    ・飲ませろ・抱かせろ・やらせろ ――本当の『電通“裏"「鬼十則」』とは

    ・大手広告代理店の知られざるお仕事
    ・広告代理店の海外進出は難しい

    ・大手広告代理店のメディアコントロール
    犯罪は激減しているのに報道されない

    ・大手広告代理店の黄昏
    ・昔エリート、今肉体労働者? ――広告代理店マンの凋落

    <日々の生活、仕事などに活かせるポイント>
    1.営業職の使命は課題(イシュー)を特定すること

    2.電通は『クライアントファースト』、 博報堂は『クリエイティブリード』

    3.デジタル部署の疲弊が激しい原因は「24時間結果が見られる」ことと、「物理的に変えられる」点にある

    <感想>
    現在も変わらない体質なのかと思うと、本当にエリートが哀れ。能力の再分配が強制的に起こるような出来事が、自然発生しない限り、難しいのかもしれない。

  • 電通には商売道具の「やります感」があり、しごを断らない。
    デジタル部署の疲弊が激しい理由は、24時間結果が見られる事と、物理的に変えられる点にある。

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著者プロフィール

編集者、PRプランナー、ライター
1973年生まれ。東京都立川市出身。大学卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターとなり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々なネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、当時主流だったネット礼賛主義を真っ向から否定しベストセラーとなった『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』『内定童貞』(星海社新書)など。無遠慮だが本質を突いた鋭い物言いに定評がある。

「2020年 『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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