マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書)

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  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061386167

作品紹介・あらすじ

我々が生きる「この宇宙」は、物理法則も次元の数も異なる無数の宇宙の一つに過ぎない……第一人者が迫る、驚くべき最先端の宇宙像。

感想・レビュー・書評

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  • 野村泰紀(1974年~)氏は、東大理学部卒、東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了の物理学者。カリフォルニア大学バークレー校教授、バークレー理論物理学センター長、ローレンス・バークレー国立研究所上席研究員、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究者。専門は素粒子論、宇宙論。
    本書は、最新の宇宙論である「マルチバース宇宙論」の核心部分を紹介したものである。
    この最新の描像によれば、我々が全宇宙だと思っていたものは無数にある「宇宙たち」の一つにすぎず、それら多くの宇宙においては素粒子の種類、性質およびそれを支配する法則、さらには空間の次元に至るまで多くのことが我々の宇宙とは異なっており、また、我々の宇宙の命は無限ではなく、通常我々が考えるスケールよりははるかに長いものの、有限の時間で全く別の宇宙に崩壊すると予言されているのだが、それを、以下のような構成、内容で明らかにしていく。
    第1章:「宇宙」って何?・・・我々の住む宇宙ができた仕組みと現在の姿。
    第2章:よくできすぎた宇宙・・・我々の宇宙を記述する素粒子の標準模型は、生命、星、銀河等を含むあらゆる複雑な構造ができるように、極めて巧妙に作られているように見えるが、これを神のなせる業とせず、科学的に説明することは可能なのか?
    第3章:「マルチバース」―無数の異なる宇宙たち・・・前章の疑問を説く最も有力な理論こそ「マルチバース宇宙論」である。この理論は、1998年に観測された宇宙の加速的膨張を10年以上前に予言し、また、自然界の基本理論として最も有望と思われる超弦理論や、一般相対性理論の予言であるインフレーション現象等の自然な帰結である。この理論によれば、マルチバースとは、永久に膨張する時空の中に無限の泡宇宙が生まれ続け、また、その泡宇宙の中にまた別の泡宇宙が生まれ続けるという、無限の入れ子のような構造となっている。尚、我々の宇宙は、いずれ巨大なブラックホールへ崩壊し、最終的に別の泡宇宙に飲み込まれてしまう。
    第4章:これは科学?―観測との関係・・・「マルチバース宇宙論」は、我々の宇宙が始まる前(外側)や崩壊した後をも記述する壮大な理論であり、その対象は我々人間が直接には行ったり見たりできない領域にあるため、科学の理論と言えるかという疑問を提示する向きがあるが、理論と(間接的であれ)観測による検証を積み重ねて真理を突き詰めるということにおいて、他の科学と何ら変わることはない。
    第5章:さらなる発展―時空の概念を超えて・・・「マルチバース宇宙論」によれば、時空が指数関数的に膨張するため、無限に泡宇宙が生まれ続けることになるが、それは確率の世界に(のみ)存在するのであり、それは「量子力学的多世界(パラレルワールド)」と同じ現象(確率的重ね合わせ)である。我々に比べてはるかに大きなスケールで起こった場合にマルチバースと呼び、小さなスケールで起こった場合に量子力学的多世界と呼ぶに過ぎない。

    私は文系出身の会社員で、宇宙論や物理学については、これまで一般向けの新書等を何冊か読んできた程度であり、詳細な説明には理解できない部分も多々あったが、著者のわかり易く(しかし、雑にならないように)書こうとする姿勢には好感が持てたし、一般向けの新書として伝えようとした概要は掴めたような気がする。(理解し難い部分は多少飛ばしても論旨は追える)
    最新の宇宙論に触れ、知的好奇心を刺激される一冊である。
    (2021年8月了)

  •  ネットで宇宙に関する動画を見ていると、ちょいちょい出てくるのが多元宇宙論という言葉。SF等でもちょいちょい出てくる概念で、今いる宇宙とは他にもたくさんの宇宙があるという仮説だと理解している。ただ、素人目には、実証可能性がなかったら仮説どころかただの想像に過ぎないんじゃ、みたいな考えもしてしまう。
     本書は、マルチバースという概念が実際に現在観測されている説明し難い現象を説明し得る理論であり、それを実証する方法も無いわけではないことを説明する。
     あとがきに「本当に興味のある人はゆっくり読んでもらえればその内容が分かるように書いたつもりである」とあるように、ちょっと知的好奇心を満たしたくて新書買ってみました、という姿勢で読むとあまりにも難しく、結句流し読みしてしまった。
     でも、分かるところは面白かったし、荒唐無稽な戯言でなく、観測に基づいてるきちんとした理論で実証も可能なんだよということが分かった(気がした)だけでも良かったなとは思う。Newtonとかブルーバックスでも本があるそうなので、マイナーな新書買うよりは寄らば大樹の陰だっただろうか。

    まとめ
    ①宇宙はちっちゃい状態からインフレーションを起こしビッグバンが起きて今の状態になった。でも、素粒子の構造とかよく見ると、まるで神が創造かのようによくできすぎている。
    ②でも、それは地球が宇宙の中心かと思ったらそうじゃなくて数えきれないほどある星の一つに過ぎなかったみたいに、今いる宇宙も数ある宇宙の中の一つなのかも、という疑問が浮かぶ。
    ③で、宇宙の加速度的膨張とか真空のエネルギーとかそういう従来の理論で説明できないものを説明する方法として、マルチバースという概念がある。別に、宇宙は一つじゃないかもねという妄想ではなく、観測された事実を理論的に説明するツールとして存在する概念だってことを作者は強調する。
    ④そんなもんどうやって観測するんだよという疑念は浮かぶが、「負の曲率」があるかを観測する、他の宇宙と衝突した名残を見つける、などの観測方法を提示する。
    ⑤波動関数が崩壊せず量子のナントカを説明する方法としての多世界解釈とマルチバース諭は一緒なんじゃないか云々(よくわからなかった)。

  • 難しいが知的好奇心は大きく刺激された。ロマンのある話だ。

  • 10次元もしくは11次元の極小中空弦を仮定する超弦理論に基づけば、超微視的量子力学的世界から超巨視的世界まで統一的に記述でき、その世界には構造の全く異なる超多数の宇宙が併存するというマルチバース理論が極めてわかりやすく解説されている。

    文章も平易かつ簡潔で良いが、図表が何よりわかりやすい。

    結局この世は量子力学的世界だった。

  • 宇宙の知識がとても広がった。難しい話をできるだけ平易に書かれており、難しい所は飛ばしながら読むと、少しずつ理解できた。真空のエネルギー、宇宙は一つでなく泡宇宙が無数にあるという話など、想像力を掻き立てる

  • 宇宙が一つではないという挑戦的な仮説。光速以上のスピードで広がり続ける空間にあらゆるバリエーションの時間軸と多種多様な物理法則の宇宙が無限に存在し、もう一人の自分どころかあらゆるパターンの人生を生きる別の自分がそこにはいるかも知れないという、どんなSF作家の想像力も全く及ばない、それこそ法華経の説く世界観ですらスケールが小さく感じるほどの宇宙感。我々の宇宙が最後(個別の宇宙には寿命がある)にあらゆる煩悩を捨て去った解脱のような状態になるのが仏教的だった。

  •  読んでいてものすごくきつかった。頭の中に入れるのが困難というか、どうすればいいかというか。
     とにかく日本語らしきものにできる範囲で書いてみる。

     宇宙を観測すると、どうも何かが足りない。ガスとか、物質の量が、少なすぎるのだ。何か見えない質量でないと宇宙の全てが測れない。
     で、3割は粒子を解明できたけれども、のこり7割はこの世界・宇宙が何でできているかさっぱり観察できない。ダークマターやらは全然捕まえられない。私達の知っている粒子はほんの一部でしかない。

     ビッグバンから、この宇宙の成り立ちを計算する。地球から観測しておそらくこうだろうという全物質・全宇宙の値と、理論的に計算で打ち出された宇宙の値を計算すると、「真空のエネルギーの観測地が理論予測より120桁も小さい」ということが分かった。この宇宙だけのエネルギーでは、全然足りないということだ。観測が理論に追いついてない。

     宇宙は物質と反物質の均衡のずれによって生まれたという。10000000000が物質で、反物質が99999999994の値で、いま全銀河はこの物質-反物質の残りカスのようなものである。超高温高密度のバランスのとれた世界が、やぶれ、対消滅して、大爆発して、いまも膨張し続けているのだという。

     むかし、ディラックの海……だったろうか。この私たちのいる宇宙は、泡粒に過ぎない。しかもそれは、巨大な宇宙の海で鯨が跳ねた時に出来た、ほんの泡の一粒らしい。壮大なイメージで、物語だと思ったが「リアルでそうらしい」のだ。
     これは、考え方を変えれば、私たちは奇跡の生命体となってしまうが、そうではなくただ、「そうではない宇宙にはなにもない」だけである。無限に近い数の中で、人間の宇宙が偶然できただけである。他の無限には何もないだけである。

     超弦理論によると10の500乗種類もの宇宙が実現可能で、インフレーション理論によれば無限に膨張する空間には無限の泡宇宙が生じている……とのこと。 そして私たちが見ることができるのは、光が届く範囲だが、過去から来ているもので推測するしかないのだ。

     そして、著者は、量子力学の世界と宇宙空間を結び付ける理論を述べる。量子力学において、観測前の確立空間と、観測後の確定された世界は、「両方とも成り立つ」ということだ。
     では、この観測で変わるというのはどういうことか? 犬が見たら変わらないのか? それとも虫だったら?
     答えは、世界は確立空間そのものであり続けている、ということだ。何秒単位だかわからないが、宇宙は、私たちを含めて分岐し続けている。そして別空間の宇宙は、観測されていないが、確立空間にある。別宇宙は確立空間として、観測者がいないだけで、存在はしている。世界は無数の波動で成り立っていて、全宇宙ごと分岐し続けている。

     これはまるで動的平衡である。何か一本の時間軸にいるようで、確立空間に絶えず私達はいる。宇宙空間・観測できる世界は、人間の体が動的平衡で、川の流れのように生成と破壊を繰り返すように、この世界・宇宙そのものも、絶えず生成(観測後の世界)と破壊(観測されなかった世界)で成り立っているのだ。

     もう、話がでかすぎて、逆に「人間は奇跡の存在だね」となってしまう。でも、地球が太陽のまわりをまわっていると聞いた人々も、たぶん、こういう思いだったのだろう。

  • 分かりやすい。前提として特殊相対論は知っておいた方がよい。
    マルチバースは科学であることが腑に落ちた。

    ・ビッグバン宇宙論では、宇宙の曲率について答えることができない。
    ・一様性と平坦性は違う概念。

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著者プロフィール

カリフォルニア大学バークレー校教授。バークレー理論物理学センター長。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員、ローレンス・バークレー国立研究所上席研究員を併任。
1974年神奈川県生まれ。1996年東京大学理学部物理学科卒業。2000年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。米国フェルミ国立加速器研究所、カリフォルニア大学バークレー校助教授、同准教授などを経て現職。ローレンス・バークレー国立研究所上席研究員、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構連携研究員も務める。著書に『マルチバース宇宙論入門』(星海社)など。

「2022年 『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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