サエズリ図書館のワルツさん 1 (星海社FICTIONS)

著者 :
制作 : sime 
  • 講談社
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本棚登録 : 811
レビュー : 115
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061388383

作品紹介・あらすじ

さえずり町のサエズリ図書館。
それは本の“未来”が収められた、美しく、不思議な図書館。
あなたにとっての大切な一冊は、きっとここでみつかる。

感想・レビュー・書評

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  • サエズリ町のサエズリ図書館。
    近未来、貴重品となった本が大量に所蔵されている。
    そんな貴重品の本を、誰でも自由に借りることができる。
    図書館の特別図書探索司書であるワルツさん。
    父から相続した膨大な図書の持ち主でもある。
    依頼に応じてどんな本でも探し、盗まれた本はどこまででも追いかける。

    「それでは、よい読書を」

    仕事上は、もうパソコンでのデータ検索が主流だし、以前みたいに
    本を探す手間も省けて便利で、もう昔には戻れない。
    でもやっぱり、読書は紙の本がいい。
    何でデジタル化の現在、紙の本なのかな?と自分でも思うけど、私は多分、
    本の内容だけというより、本の重みや匂いや温かさ、紙に触れ、
    紙をめくる行為、そういうの全部合わせて読書が好きなんだろうなぁ。
    こうやってレビューを書くのはスマートフォンだけど、どこかアナログが抜けない。

    サエズリ図書館はデジタル化した社会での特殊な図書館という設定だけど、
    この時代のように、全てがデジタル化して、本がなくなっていくのはあまりに寂しい。
    本は珍しいものではなく、当たり前にそこにあるものであって欲しい。
    子どもが生まれたら絵本を読んであげたいし、次世代にもその次にも、
    ずっと受け継いでいってほしいと切に願う。

    作者の、本への想いが、ワルツさんを通じて伝わってくる、温もりある一冊。

  • 表紙から想像するに、ほんわかしたお話かと思ったら。
    意外や現在より先のお話なのね。
    もう一般的に本は読まれず、高尚な存在になってる未来。
    それだけじゃなく、内容を読み進むうちに今より住みづらい世界になってるというか・・・

    あとがきを読んで納得。
    私も同じ病に思い悩みますから。

  • 緑に溢れたのどかな町にあるガラス張りで丸いフォルムの
    美しく静謐なサエズリ図書館。

    「図書館戦争」とはまた事情が違うけど、本が紙媒体であることが
    本来の姿ではなく、電子に役目を変わられて、本がとても
    珍しく高価で貴重なものになり、図書館は過去の遺物のような
    存在となり、自分たちで制御しきれない力を人間が暴走させて
    しまった代償を背負っている時代のお話。

    特別な資格「特別図書探索司書」を持っている、図書館の代表で
    若く美しい割津(ワルツ) 唯さん。

    本に埋め込まれたマイクロチップで本がどこにあっても
    その本の位置情報にアクセスができるワルツさん。

    本がとても貴重となってしまった時代の中で
    特に貴重な資料でも、本の損傷が激しくて修繕が必要なものや
    一部の特別な本以外は無料で貸出もしてくれるサエズリ図書館。
    でも、貸した図書はなにがあっても返却してもらう。
    それが唯一のルール。

    本を読む習慣がなく、本が読めなかった上緒さん。
    どうしたら本が読めるようになるかとの問いに
    「好きになれば読める」面白ければ好きになるし、
    ディスプレイで読むことと紙で読むことは「同じことだし、違うこと」
    と話してくれた老人、岩波さん。

    「嬉しい日の読書は楽しいし、悲しい日の読書も、格別だから、大丈夫」
    たしかに。本でしか感じられない空気や過ごせない風景もある。

    本の中からするすると流れてくる景色や感情、物語に
    心を任せて埋没していく幸せが、サエズリ図書館のそこここから溢れていて、
    改めて本を読めることの幸せを噛みしめたり、感謝したり。
    より本が好きになったり。

    絵本から抜け出したような、現実味のない綺麗な子供、
    本が嫌いな警備のタンゴくん、我が子に1冊の本を
    語り継ぎたいと思う母親。

    本の電子化。本がデータ化されることの便利性、かさばらず
    資源も使わず、紙の本にできないことを可能にしてくれることや
    素晴らしいこともたくさんあること。

    「データは本じゃない、と言うかね?」
    との問いかけに「データが魂だ、と思います」というワルツさん。
    「魂だけじゃ抱きしめられない」
    「どうして本なのかははっきりと答えらないけど、わたしの
    宝物が本でよかった。そう思います」と言うワルツさん。

    私もどうしてそんなに本が好きか、紙の本であることの
    必要性を問われれば、すべてを言葉として取り出して
    理由づけることができないけれど、やっぱ手で触って
    その本その本の手触りや匂い、本から感じる温度や音、
    行間、装丁に込められた想いも含めて
    本であることの感動が忘れられないから、やっぱり今日も本を手にとる。

    抱きしめるという行為は、生き物同士に限らず
    とても大切で幸せな行為だなぁと改めて実感したワルツさんの言葉。

    少しずつ明かされていく、何も持たずに始まったワルツさんの原点。
    愛の証となった記憶回路(ネオメモリー)。
    本に固執しながらも、本より大切なことがあることも知っているワルツさん。

    本は死なない。
    愛する人が、いる限り。

    本の世界。人間の世界。愛情。記憶。
    失われるもの、後に残るもの。

    本と本を愛する人たちへのあったかく包むように佇むサエズリ図書館。
    これからもたくさんの物語をサエズリ図書館の中で読みたいなぁ。

    小説に先駆けて読んだ、コミカライズ版のサエズリ図書館も
    とっても素敵だったから、コミックス化されるのも楽しみ♡

    • 九月猫さん
      あやさん、こんにちは♪

      うわー、これ読みたくてチェックしてたんです!
      あやさんのレビューが読めてうれしい♪
      ますます読みたく(積み...
      あやさん、こんにちは♪

      うわー、これ読みたくてチェックしてたんです!
      あやさんのレビューが読めてうれしい♪
      ますます読みたく(積みたく?)なってきました(笑)

      >私もどうしてそんなに本が好きか、紙の本であることの
      >必要性を問われれば、すべてを言葉として取り出して
      >理由づけることができないけれど

      ホントそうですよねー!!
      なんでこんなに本が好きなんだろう?ってわたしも思います。
      読書という行為だけでなく『本』そのものもとても好きなんですよね。
      電子書籍自体を否定する気はないし、時代が進んだことで選択の余地が
      増えたことは喜ばしいことだとさえ思う。
      ・・・けれど、
      自分で選ぶのはきっといつまでも紙の本なんだろうなぁ。

      たまに崩れて埋もれるけれど(^-^;)
      2013/06/06
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡九月猫さん

      九月猫さん、こんにちは~♡

      これ絶っ対惹かれちゃいますよねーー[笑]
      もぅ、本好きにとってたまらない要素が
      ...
      [♥óܫò]∠♡九月猫さん

      九月猫さん、こんにちは~♡

      これ絶っ対惹かれちゃいますよねーー[笑]
      もぅ、本好きにとってたまらない要素が
      詰まりすぎてる!♡♡♡

      お話はほんとに静かに進んでいく感じで
      美しくて静かな図書館の中でずっといる感覚も
      ほんとステキでした~[*Ü*]
      でも、図書館って小学校の頃から行ったことがなくて、
      今度ぜひぜひ行ってみたいですーっ♡

      電子書籍だと絶版とかで泣くこともプレミア価格で
      買う必要もなくなってくるし、今すぐ読みたい!
      ってあの衝動にいつでも応えてもらえる!と思うと
      すごくうれしいけど…でも紙の本であることに
      拘ってしまうのが本好きの性ですよね[*゚ω゚*]
      あのパタンと閉じる音もページを繰る音も
      すべてがあって本の世界だったりしますよね♡

      はっ、それに積読山を実際に積み上げることも
      崩すこともできない!!![笑]
      背表紙の美もまたたまらないんですよね~[*Ü*]
      ビブリアの栞子さんやワルツさんほどとはいかないけど
      やっぱり本の魔力って逃げられないですよね♪
      九月猫さんのレビュー、楽しみにしてますーっっ♡
      2013/06/07
  • 未来の、本がものすごく貴重になった世界の話

    本が今の本の形になってからそれほどたっていないと言われても、本が本の形をしていないというのは、なんかもったいない
    内容の充実を期待させる重さ、読み進めるワクワクとともにページをめくるときの紙の感触、時折挿し絵を伴って立ち上がる活字と組の美しさ、紙とインクと空気のにおい、目の前の手の中に物語がある感触を味わえないなんて、なんてもったいない 

    字面を追うことなく端末で認識してしまう言葉は、情報のカプセルなだけの役割しか持たなくなるのかもしれない
    それでも、言葉は道具ではあるけれど、意図を伴うものだからこそ、大事にあつかわれるべきだと思う

  • 紙の本が希少で高価なものとなった未来の図書館が舞台。
    この小説も面白かった!
    最初は紙の本が希少なものとなってるなんてわからず読んでたのですが・・・なんでこのような世界になったのか、だんだん明らかになってくるのも目が離せず一気読みした理由の一つです。
    続きもすごく気になる!早く図書館の順番回ってこないかな・・・
    電子書籍もいいけど、やっぱり私もワルツさんのように紙の本が大好きだわ(*^_^*)

  • 有川浩さんの「図書館戦争」とは、また違った時代設定の図書館の物語でした。 
    表紙のイラストからは、ほのぼの系の話かと思っていましたが
    設定がかなりシリアスな場面だと徐々にわかってきました。

    第三次世界大戦が起こり、図書は高価な嗜好品になっている世界のようです。
    電子書籍は普及してるけれど紙媒体の本は、ほとんどなくなっていて
    それを個人が運営する図書館に保管されている、とのこと。

    短編集ですが、話が少しずつつながってます。
    ラストは、続編がとても気になる終わり方です。

  • よい読書を
    このフレーズがとても印象的な本です。

    近未来のお話で、本がなくなって全部電子化されて、教科書も本じゃなくて、だからこのサエズリ図書館は貴重な図書館。
    元は特別探索司書、ワルツさんのお父さん、義昭が脳外科手術の対価としてでも集めた本たち。
    ”アレクサンドリアを忘れるな。”

    4話入っていて、1話めのカミオさんは、図書館に用じゃなく、無断駐車してご飯食べに行こうとしたら、まさかのとなりの車に当てちゃった!ってことで、図書館に申し出して、図書館通いになるお話。

    2話のコトウさんは、小学校の先生ながら母親で、娘は父親と一緒に住んでる。単身赴任状態。
    仕事にかまけて娘の買い物の約束をことごとく破る。
    最終的には「本を買ってあげるよ」の言葉に娘が「お母さんの本がいい」と、母親が使っていた辞書を欲しがって終わり。

    3話のモリヤさんはまー小難しいサラリーマンで大変。
    祖父がサエズリ図書館に渡した本の中に、特別なメガネで見ないと見えない和歌を残していて、それを読むために2時間かけてサエズリ図書館に。

    4話はワルツさんが特別探索司書として、シティに本を取り返しに行くお話。
    ワルツさんは孤児で、義父である義昭に育てられた経緯が書かれています。

  • 表紙から漫画だと思ってたけど小説だった。

    本を読まない人の気持ちというか感覚が少しだけ判った気がするがやっぱり解らないや。

    本にはいっぱい敵がいるのはわかっているけど守るにはお金も技術も個人では途方にくれちゃう(TдT)
    でも、今てもとにある私の本は私がいなくなったときにはサエズリ図書館の住人だったら安心だと感じた。

  • なんでもない日常をいやらしくない絶妙な具合で切り取る物語。偽善じゃない、一人じゃない、優しい空間。優しいだけでは世界は成り立たない。失われたもの、取り戻せないもの、生活を営む上で感じる様々な感情。包み込む優しさ。聖人でなく人間であるから嬉しかったり悲しかったり、生まれてきてよかったと思ったり思わなかったり、そんな日常。

    「本」そのもの自体が至高のものというわけではない。時代は変わる。想いは変わる。関わっている人々がいる限り本という媒体は途絶えることはない。

  • 電子書籍化が進み、紙の本が希少になった時代。人々はタブレット端末を多様化した。サエズリ図書館では本の大切さや、本を愛する人のあたたかい気持ちがやわらかく包みこむように描かれている。
    本はやっぱり本でなくちゃイヤだと強く思わせてくれる1冊。

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著者プロフィール

1984年、石川県金沢市出身。金沢大学文学部卒業。『ミミズクと夜の王』で第13回電撃小説大賞・大賞を受賞し、デビュー。その後も、逆境を跳ね返し、我がものとしていく少女たちを描き、強固な支持を得ている。

「2019年 『悪魔の孤独と水銀糖の少女II』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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