ふしぎな目をした男の子―コロボックル物語 4 (講談社青い鳥文庫 18-4)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061470354

作品紹介・あらすじ

コロボックルのどんなすばやい動きも見えてしまう、ふしぎな目をした男の子タケルと、へそまがりのコロボックルの老学者・ツムジのじいさまが友だちになった。タケルが小さいころ遊んだ池が、すっかりあれてしまった。この池をすくおうとする少年たちと、かげでそれを助けるコロボックルたちとの楽しい物語。


  もくじ

   はじめに

  第一章 つむじまがりの学者

  第二章 タケルとヒロシと用水池

  第三章 二つのいいつたえ

  第四章 かわいそうな池

  第五章 ほんとうのトモダチ


<A日本の名作 小学上級・中学から>

感想・レビュー・書評

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  • コロポックルが全力で走っても見えるふしぎな目をした男の子のお話。

    ある日ツムじいが人間の公園の梅の木の穴に引っ越して、公園でふしぎな目をした小さいタケルくんを見つけて仲間になろうと小さい頃からタケルがコロボックルになれるように度々会いに行き...。

    面白かったです。
    タケルくんすごいと思いましたし、いいなあと思いました。
    だってコロボックルがまだいたら見えるんだもん。
    いいなあー。

  • 今までの「せいたかさん」たちがコロボックル山で過ごしていた頃とは少しばかり時が流れたようです。
    ただ、当時の建国のヒーローたちもまだまだ現役ですし、せいたかさん一家もたまには遊びに来ているようなので、全体としては大きな舞台設定の変更は起こっていません。

    それまで人間と関わってはならない、という掟がありましたが、1人ならトモダチになってもよい、と決まりが変わります。
    その掟の変更に大反対だった、つむじ曲がりの「ツムジ」おじいさんが2歳ほどのタケル君と出会い、物語は始まります。

    タケルを孫のように可愛がるツムジおじいさんの様子や、日々成長してゆくタケル少年の姿は読んでいて爽快ですし、児童文学ならではの「王道、定型」のストーリー展開も安心して読める要素となっています。

    読後感も良好ですし、小学生に是非勧めたい作品です。

  • 再読。ひねくれもののツムジィが出会ったのは、思いっきり駆けるコロボックルも見ることのできる男の子。このシリーズで一番私が好きな巻です。なんといってもツムジィが素敵!私は一見ひねくれなじじいがだいっすきなのですか、そのタイプまっしぐらな感じなのです。その淡々とした、けれど面白い暮らしっぷりが大好き。

  • セイタカさん一家はもうコロボックル山には住んでいなくて「たまに遊びに来る」程度みたい。それならもう10年以上たってるのか?と思いきや、コロボックルたちは3作目までの登場人物がまだ活躍中なので前作からは4.5年程度か??

    コロボックルの国では人間たちとの距離をもっと近くしようと新たな決まりができました。
    「1人のコロボックルは1人の人間と仲良くなっていい」「人間の町に住みたければ住んでいい」「これらは事前申請不要で、事後報告でいい」
    これに激怒したのがツムジ曲りの
    「わしらはずっと自分たちの国を守ってきた!人間と近くなりすぎたらわしらは自分たちでは何もできなくなってしまう!!」そして人間の町へ出て行ってしまう!…そう、「人間と近づいていい」と言われて激怒して人間の近くに住むというのがツムジ曲りの所以と言うところで(笑)

    まあそんなツムジじいさんは町でまだ幼い少年に見つかってしまいます。
    さて、コロボックルたちは非常にすばしっこくて人間の目には留まらず、非常に早口で人間の耳には聞こえないので、そんなコロボックルの姿が見える目を持つ少年は非常に珍しい。
    コロボックルの国ではこの少年と仲良くなりたいと思います。そこで選ばれたのがツムジじいさん。ここはあまりツムジを曲げずあっさりと不思議な目を持つ少年と友達になることを承知します。

    さて、コロボックシリーズに出てくる人間は「セイタカさん」「オチャ公」などあだ名だったんですが、この4作目では名前が出てきます。
    不思議な目をした少年は”タケル”です。

    タケル少年と、ツムジじいさん略してツムジイは友達であり師匠でもあるような関係になって行きます。
    そこで出てきた小さな池の埋め立ての話。
    すでに小学中学年になっていたタケル少年にとっては思い出の土地です。
    そしてツムジイさんの調べではこの池はコロボックルが水を通し、人間が池にしたという共同作業によるもの。
    池が汚され埋められることを阻止するために行動を起こすタケル少年と、池を蘇らせるため陰から頑張るコロボックルたち。
    この密かな共同作業は成就するのか…

  • 老人のコロボックルが人間の子供と友達になるのを通じて、頑なな心を開いていく。田舎風景の開拓工事やそれによって得たもの、失ったものを人間の子どもの心と行動から表現されていて分かりやすかった。コロボックルも「引き継ぎ」で若い世代へ交代していく。

  • このシリーズの中で KiKi にとって一番読み応えがあったのはこの第4作かもしれません。  もっともそれは KiKi 自身が既に齢50を超えているからこそ感じる感慨であって、これが子供時代に読んでいたのだったら、ひょっとしたら一番つまらなく感じてしまった作品だったのかもしれないのですが・・・・・。    

    そう思うのは、今回のメインキャラがツムジィというコロボックルの老人だから・・・・・ということと無関係ではないような気がします。  まぁ、KiKi の子供時代は今と比べるともっと地元のお年寄り(要するに身内ではないお年寄り)と子供の距離が近かった時代なので、見知らぬおじいさんと子供が友達になるという設定にさほど違和感はなかったとは思うのですが、それでもやっぱりある種のテンポ感、ノリみたいなものが、やっぱり前3作と比較するとどこか枯れています。  しかもこのツムジィ、職業が古いものを調べてきちんと記録する学者さんときています。  そういう意味では「発展」がキーワードだったこれまでの作品とは異なり、「振り返り」がキーワードになっている印象があります。

    さて、そんな筋金入りのつむじまがりの学者ツムジィは物語冒頭ではコロボックルと人間がトモダチになることに猛反対の立場をとっています。  ところが、さすがつむじまがりのじぃさま、やることが面白い!!  怒りに任せてコロボックルたちの王国がある山から飛び出し、こともあろうに人間の住む街に行くというのですから、その偏屈ぶりには苦笑するしかありません。  でも、つらつらと思い返してみると、KiKi の子供時代に知り合った偏屈なおじぃさんも「冷静に考えてみると言っていることとやっていることが矛盾している」人が数多くいたような気がしないでもない・・・・・・・。

    こうして、人間嫌いなはずのツムジィは何となく人間のそばで暮らすようになり、そこで動体視力の著しく優れた2歳児と出会い、俄然その子供に興味がわいてきて、物語冒頭ではあんなに反対していた「トモダチ」に自分がなってしまうのです。  しかもその子供、タケルの成長を暖かいまなざしで見守っているうちに、まるで守護霊のような、心の友とでも呼びたいようなそんな存在になっていってしまうのですから、世の中何が起こるかわかりません。

    物語ではそんな「トモダチ関係」がツムジィの老いと共に変化していき、最後は次の世代(ツムちゃん)に引き継がれていきます。  そんな物語の流れがとても素晴らしいと感じました。  ただ1点だけ、このシリーズでずっと登場してきたせいたかさん一家はコロボックルたちにとって「味方」であるのに対し、タケルは「トモダチ」という立場なのだそうですが、KiKi には「味方」と「トモダチ」の違いがよくわからなくなってしまったのですが・・・・・。  

    作中ではコロボックルが王国を作るほどの集団であり、矢じるしの先っぽの国に大勢が暮らしているというコロボックル最大の秘密を知らされているのが「味方」でそれを知らされず、ただひとりのコロボックルとだけ親しくなる人間が「トモダチ」だという定義が書かれているのですが、タケルはせいたかさんちのおチャメさんと同じようにコロボックルの秘密を感覚的に察知しているようなところがあるし、しかもコロボックル2世代と「トモダチ」になるわけで、そういう意味では「ただひとりのコロボックルとだけ親しい」わけではありません。  それでも最後まで「味方」には昇格できないのはなぜなんだろう??  タケルとせいたかさん一族とはどこが違うんだろう??

    ま、それはさておき、この第4作で KiKi を唸らせた最大のポイントは、物語の終盤でコロボックルと人間がかつてお互いにそうとは知らないまま共に開き、大切に守ってきた水場が汚染されてしまい、その水場を守るために人間界ではタケルとタケルの人間のトモダチ、ヒロシが頑張る一方、コロボックルたちもツムジィを筆頭にツムジィの後を継いでタケルとトモダチになったツムちゃんたちが頑張るというお話の奥深さです。  

    このヒロシ君。  実に素晴らしい環境観察者で、かつては綺麗だった水場から自分の部屋の水槽に環境一式を移植して、それを前にタケルに「自然の循環」を熱弁するんですが、その内容たるや、小難しい学者先生のご弁舌よりもはるかにわかりやすく、本当に素晴らしいと感じました。  と、同時に、これまでこの「コロボックル物語シリーズ」で描かれてきた「人間とコロボックルの共生」というテーマは、つまるところ「人間と自然の共生」というテーマだったのだなぁと深く感じ入りました。

    ちょっと長いけれど、この時のヒロシ君の熱弁を転載しておきましょう。

    「なあ、タケルちゃん、このガラスの中の水はね、ちゃんと生きているんだ。  みじんこたちは、水の中に落ちた細かいごみや、藻の切れっぱしなんかを食べて増えていく。  そうすると、そのみじんこを食べて、くちぼそ(魚)が生きる。  みじんこの死んだのやくちぼその糞は、水草や藻のこやしになる。  だから水草なんかもずっと生きていける。  水草や藻は植物だ。  だから、日にあたると水の中の炭酸ガスを吸って、きれいな酸素を吐きだす。  その酸素を、みじんこやくちぼそが吸って炭酸ガスを吐きだす。  な、この水の中で命が回っているんだ。」

    「ちょうどいい数だけみじんこが増えて、ちょうどいい数だけくちぼそが育って、ちょうどいいだけの水草や藻があって、うまくつりあいが取れているんだよ。  だからこうして、いつまでたっても、水はきれいに澄んでいる。  海や湖や川やきれいな池なんかは、このガラスの中の水と同じで、命がうまく回っているんだ。  それがほんとなんだ。  ところが、人間が薬をまいたり、ごみをぶちこんだり、やたらに魚を取り過ぎたりすると、つりあいがぶっ壊れる。  そうなると、もう命はうまく回らなくなるんだ。  どこかで止まってしまう。  水が死ぬのさ。  水が死ねば命も死ななくちゃならない。」


    この水槽(熱帯魚用の立派な水槽)はヒロシ君がそれまで何年もかかってためたお小遣いを全部はたいて、遠くの大きな町のデパートまでわざわざ出かけて買ってきたのだそうです。  そんな彼の純粋さまで描かれているので、妙な説教臭さを感じさせません。  

    自然界の不思議に「神」を見てきた日本人。  そんな「神族」の1人である「スクナヒコサマ」はコロボックルの御先祖様なのだそうです。  第1作から出てきたこのお話が見事にここで帰結したように感じます。  

    最後に、ヒロシのお爺さんがヒロシとタケルを連れて、水場の水の神様にお供え物をあげに行くシーンが描かれます。  コロボックルにも世代を超えて受け継ぐべきものがあり、人間にも世代を超えて受け継ぐべきものがある。  そして人間がそれを忘れなかった時、いろいろなことのつりあいが保たれ、水場の環境は再生し物語は幕となりました。  良書だと思います。

  • このお話にでてくる子どもたちがとっても魅力的。コロボックルたちはもちろん賢いけど、子どもたちも綺麗で純粋で、でも思慮深いところもあって、登場人物みんな尊敬しちゃう。

  • 「つむじまがりの学者」
    変わっていく世界。
    味方を見つけたからというのもあるだろうが、現代にあった生き方をしなくてはならないのだろう。
    あれだけ騒いでおきながら、あっさりと友人を見つけた様子は見ていて面白かったろう。

    「タケルとヒロシと用水池」
    小耳に挟んだ話し。
    気付いていたとしても子供だから大丈夫だと話を進めていただろうが、侮ると痛い目を見るだろう。
    無くなっていくのは悲しいことではあるが、今必要な物かと問われたら分からないかも。

    「二つのいいつたえ」
    次のオトモダチは。
    種族による違いだけで顔が似ているなど、初めて見た時は驚いただろうし不思議な事だと思ったろ。
    年齢のせいもあるだろうが、偶然見えた未来の恐ろしさに慌てていたせいもあるだろう。

    「かわいそうな池」
    昔の景色は無くて。
    過去の綺麗な状態を知っているからこそ、開発により汚れてしまった場所を見るのが辛いのだろう。
    自分と似た顔の者が現れたら驚くだろうが、同時に興味も凄くわいてきそうな気もする。

    「ほんとうのトモダチ」
    皆で力を合わせた。
    偶然の出来事であったのだろうが、掘りたかった場所を的確に掘ったからこそ取り戻せたのかもな。
    子供の悪戯レベルだったのかもしれないが、水を流してしまったからこそ出来た事だな。

  • つむじいがかわいい

  • 【あらすじ】
    コロボックルのどんなすばやい動きも見えてしまう、ふしぎな目をした男の子タケルと、へそまがりのコロボックルの老学者ツムジのじいさまが友だちになった。タケルが小さいころ遊んだ池が、すっかりあれてしまった。この池をすくおうとする少年たちと、かげでそれを助けるコロボックルたちとの楽しい物語。

    【感想】

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著者プロフィール

1928年、神奈川県横須賀市に生まれる。1959年、『だれも知らない小さな国』を出版し、毎日出版文化賞、国際アンデルセン賞国内賞他を受賞。コロボックルシリーズをはじめ、『かえるのアパート』、『おばあさんのひこうき』などの名作を次々に発表。日本の児童文学の代表的作家の一人。

「2009年 『もうひとつのコロボックル物語 ヒノキノヒコのかくれ家 人形のすきな男の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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