小さな国のつづきの話―コロボックル物語 5 (講談社 青い鳥文庫)

著者 :
  • 講談社
3.87
  • (30)
  • (11)
  • (32)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 232
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061470385

作品紹介・あらすじ

図書館につとめる杉岡正子が、コロボックルの娘、ツクシンボとトモダチになった。ツクシンボは、コロボックル通信社の優秀な通信員で、元気な「かわった子」。正子も、ふしぎな雰囲気のある「へんな子」。2人の登場でコロボックルと人間の世界は広がっていく。多くの人に愛読される「コロボックル物語」の完結編。小学上級から。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • コロボックルシリーズ最終話です。
    この話を描くにあたって作者は葛藤があったようで。
    主人公は人間は松岡正子さん。コロボックルの主人公はスギノヒメ愛称ツクシンボのツクシ。コロボックルシリーズ初めての人間とコロボックル女同士の”ともだち”の話です。
    正子さんが勤めているのは小さな海辺の図書館。
    …そこで作者の葛藤。
    コロボックルの話は現実のこの世界と同じものとしている、と言うことは図書館にはコロボックルシリーズの本があるはずではないか!するとコロボックルの国の話を知っている人間とコロボックルの出会いをどう描くべきだ?!

    というわけで最終話はいままでのコロボックルの話のつじつま合わせ…というか説明が多いです。
    セイタカさんとその一家は今どうしているか、今まで出てきたコロボックルと友達になった人間たちはどうしているか、そして作者とコロボックルの関係は?

    正子さんとツクシの友情はコロボックルの国の掟をまた少し変えていきます。
    そしてコロボックルと同じように小さいチィサコ族たち。土地に定住するコロボックルたちとは違い、年の大半を旅暮らしそして冬だけ一族の土地に戻るすみれ色の髪の小人たち。

    この物語を最終話としたのは、「コロボックルたちが人間に知らせるべきことはすべて知らせた」と言っているからとしています。

    人間と、チィサコ族との新たな交流を迎えるコロボックルたち。
    作者はこの現実の世界とコロボックルの世界を同じものとしています。
    いままさにこの世界のどこかにコロボックルたちがいます。

    そうして作者物語の幕を閉じました。

  • コロボックルの物語の「完結編」にあたります。
    基本的には「せいたかさん」の周囲でおこるコロボックルとせいたかさん一家のあいだの出来事として始まったコロボックルの国の物語は、しだいに「トモダチ」となる人間の数を増やし、その規模を大きくさせることになりました。

    「どのようにしてこの作品が世に出たのか」ということや作者と「せいたかさん」の関係など、これまでのシリーズを通して読者が疑問に思っていたこと、これからのコロボックルの過ごし方も含めて読者が気になるであろうことが明らかにされていますし、シリーズの最後として綺麗な終わり方をしている、といえると思います。

    ただ、個人的には「世界観を広げすぎ」ているようにも感じましたし、もう少しひっそりと、「どこにあるかわからない」「あるかどうかもはっきりとはしない」という不思議な国であってほしかったと思いました。
    子どもが読んで「自分にもコロボックルのトモダチができるかもしれない」と夢を膨らませることのできる作品だとは思うのですが、やはり「遠い世界」出会って欲しかったという想いが残ります。

  • ついにコロボックルシリーズ完結!
    この話を読んで、今まで背高さんイコール佐藤さんだと思ってたけど違うんだと知った。
    全部読んだ感想は、コロボックルの友達欲しい!!
    こんな素敵な友達がいたらどんなにいいだろう…
    古いファンタジーだからと読まなかった自分が情けない…名作はいつでも名作ですな。

  • この作品ですが、これまでの第1作~第4作とはちょっと風味の違う物語になっていました。  もちろんコロボックルは登場するんだけど、最初の何ページかはこの物語の主人公、ちょっと「ヘンな子」の杉岡正子さんのご紹介に費やされています。  それもその子が「いかにヘンな子」なのかが細かく描写され、「あれ?  これ、ホントにコロボックル物語??」と思わないでもありません。

    さらに「まくあい」と題された不思議な章が間にさしこまれ、そこには作者が登場しちゃったりします。  で、恐らく作者が多くの読者から寄せられた質問に答えるようなお話が語られます。 

    挙句、その主人公杉岡正子さんは図書館勤めの女性なんだけど、その彼女の勤める図書館にはちょうど KiKi が Review を既に書き終えている4作が置かれていて、杉岡正子さんはその図書館本により「コロボックル」を知るに至ります。  ・・・・・と、こう読んでくると、同じように図書館本で過去作を読んでいた KiKi にとって杉岡正子さんは、もはや他人とは思えなくなってきます(笑)。



    で、ここから先はあたかも読者サービスかのように過去作の登場人物たちが成長した姿で登場します。  あの「星からおちた小さな人」で村上さんの美しい挿し絵とともに強烈な印象を KiKi に与えたおチャメさん然り。  同じ作品でおチャメさんと知り合った腕白坊主のおチャ公ことイサオ君然り。  要するにこれまでの作品でコロボックルの「トモダチ」だったり「味方」だった人たちが次々と出てくるんですよね~。

    でも、杉岡正子さん個人にしてみれば、彼女がコロボックルと出会うのは初めてなわけです。  で、その時の反応は・・・・と言えば、これが原点回帰とでも言いましょうか、まるで「せいたかさん」がコロボックルに初めて出会った時を彷彿とさせるような、極めて自然な受け入れ方をするんですよ。

    彼女が傍目にはかなりあっさりと、大きな動揺もなくコロボックルを受け入れた様を読んだとき、KiKi は思いました。  なるほど、このあっさり感を本当っぽく語るためには正子さんは「ヘンな子」でなければならなかったんだなぁ・・・・と。  要するに今の時代、現代人感覚が余りにも強い人ではコロボックルとこんなにスンナリと知り合い、トモダチになるのは難しいということです。

    端的に言うなら「狐に化かされる」という話を「そんなことがあるわけない、迷信、迷信」と考えるようなタイプの人はなかなかコロボックルとお友達にはなれないのじゃないか・・・・・。  そんな風に感じました。

    と、同時に正子さんはコロボックルたちに会う前に「だれも知らない小さな国」から「ふしぎな目をした男の子」までの4作を読んでいます。  つまり私たち読者と同じように「コロボックル・シリーズの物語」の世界にある種の感動を覚え、心の中のどこかで「私もコロボックルに会えるかしら??」と考えていた女性です。  そしてそんな彼女の所に「かわったコロボックル、ツクシンボ」が現れてくれます。  このエピソードには、コロボックルの存在を否定せず、ある種の謙虚さを兼ね備えた(≒ あるがままに受け入れる)人間のところにはコロボックルが現れてくれるかもしれないというある種の希望を抱かせます。

    しかも、このシリーズではこれまではある1つの地域の小山にある「コロボックル王国」だけがこの小さな人たちの住処かだったのが、別の小さな人、チィサコ族(コロボックルと同サイズだけど、髪の色がスミレ色で忍者のように覆面をしているらしい)が登場し、別の場所で別の暮らし方をしていることが描かれています。  このことにより、「ひょっとしたら私の住む地域にもコロボックルでもチィサコ族でもない又別の種類の小さな人が住んでいるのかもしれない」という希望(?)をも抱かせます。  そうなってくると、KiKi の所に「小さな人」が姿を現す可能性だって否定できません。



    でもなぁ・・・・・



    子供時代、母から「あんたは夢見る夢子ちゃんだから・・・・」と言われていた時代の KiKi のまんまだったらその可能性はなきにしもあらずだったかもしれないけれど、その後 KiKi は成長の過程で「より合理的な、より理論的な」人間になれるよう自主的に自己改革を行って生きてきたという前科があるから、なかなかコボシ様のお眼鏡にはかなわない人間になっちゃっているのかもしれないけれど・・・・。

    いずれにしろ、大人になってこの物語に出会った KiKi にとっては最終巻を飾るに相応しい内容だったなぁと感じました。  ただ、もしも子供時代にこの最終巻に出会っていたら、杉岡正子さんというキャラの性格上、この最終巻だけは「何だか面白くない」と感じたかも・・・・・しれません。

  • 小学生の頃からシリーズで読んでたけど、不思議の目をした男の子くらいまでしか読んでなかったので●十年ぶりの佐藤さとる作品。
    世界観を全然忘れてなくて、昔のままの面白さが甦ります!
    イラストの村上さんもそのままで嬉しいv

    昔の四六版のでそろえてたけど、新書版で揃えなおしちゃいそう;

  • 「小さな神さま」
    お守り様の姿とは。
    気を抜いていた所を偶然見られてしまったのか、それとも意図して見せたのかどちらなのだろうか。
    本当の事だという者は何を根拠に言っているか分からないが、友達なら言わないのでは。

    「わたしはコロボックル」
    近い内に隠れ家を。
    トモダチとして見定める時間は短い気がしたが、本能と子供たちの言葉を聞いて決めたのだろうか。
    気付いて貰う方法は沢山あるが、余りにも直接的で痕跡を残すというやり方は危険では。

    「みんなのトモダチ」
    二種類に分けられ。
    最低限の情報を共有するだけの者と、皆の事を合わせて色々と話をする相手を決めるのは大事だな。
    本の内容を知っているから安全という訳では無いから、慎重になるのは重要な事だろう。

    「めぐりあい」
    旅先で出会った者。
    気になったのはあるだろうが、あの様な初対面では敵意があるのではと勘違いされてしまいそうだ。
    繋がりがあるからこその昇格なのだろうが、そうでなくとも近い内にしていそうだよな。

    「思いがけないこと」
    巡り巡って繋がる。
    周りからは不思議な縁に見えるかもしれないが、知る者からすると必然的な出会いであるのかもな。
    自分たちの暮らしとは全く異なる事が多いだろうが、受け入れ暮らすのは楽しいだろ。

  • 日本には、ひっそりとコロボックルという小人たちが住んでいた。幼いころからヘンな子と言われてきた正子は、図書館に務めるようになっていたが、相変わらずヘンな子と言われていた。コロボックルシリーズ最終巻。
    正子さんのひっそりとした魅力がたーまーらーん~。チャムちゃんがひかれるのもわかる。これで最終巻なのはさみしいけど、コロボックルは今もどこかで私たちのことを見ているのかもしれない、と思わせてくれます。コロボックルたちがこの世にいない、という証拠はどこにもないんだもん!

  • 残念!あんまりおもしろくなくなっちゃった!

  • 読みやすい。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1928年、神奈川県横須賀市に生まれる。1959年、『だれも知らない小さな国』を出版し、毎日出版文化賞、国際アンデルセン賞国内賞他を受賞。コロボックルシリーズをはじめ、『かえるのアパート』、『おばあさんのひこうき』などの名作を次々に発表。日本の児童文学の代表的作家の一人。

「2009年 『もうひとつのコロボックル物語 ヒノキノヒコのかくれ家 人形のすきな男の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤さとるの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×