クレヨン王国の花ウサギ (講談社青い鳥文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061471030

作品紹介・あらすじ

ウサギのロぺは、ちほと健治きょうだいの大のなかよし。ある日、ゆくえ不明になった健治たちをさがしに出かけたちほは、ロぺの案内でクレヨン王国へ。そこで、悪魔のアオザメオニと対決することになったが、それには、どうしても伝説の花ウサギのすむヤマボウシの木を見つけなければならない……。『クレヨン王国の十二か月』の姉妹編。

感想・レビュー・書評

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  • サラッと辛辣すぎて笑った。

    ちほは、なんだかかなしくなりました。
    このきれいな海が、くさっているというのです。
    くさっているのは、海ではなくて、漁師たちではないでしょうか。p26

    そのひょうしに、クレヨンは、ばらばらに海の中にとびこんでしまいました。
    「あ、クレヨンの投身自殺だ!」
    と、男の子たちがわらいました。p27

    全体的に良い話だけど、落ちをどうせならきっちり〆てくれた方がすっきりできて良かった。

  • 子供の頃に読んで、難しいことはよくわからないなりにラストシーンの切なさやアオザメオニの怖さだけ記憶に残ってた。
    大人になって改めて読むと、かなりしっかりと環境問題をテーマにしてることに驚いた。
    書かれた当時は80年代、まだ公害問題も過去の話ではなかった時代だもんね。作中で書かれてるような再開発推進派と反対派の対立も、当時なら子供にとってもニュースで聞いたりしてまぁまぁ身近なものだったんだと思う。
    たぶん発売された時代の子供の感覚で読んでたら「こんな環境破壊なんてひどい!」って感想を抱いたんだと思うけど、令和の大人の立場で読むと「人間の生活水準維持と自然の保持、両立させられる道があれば本当に素敵なのにね……」って思っちゃう。
    変な押しつけがましさがないから、読むタイミングによって受け取り方が変わるんだなぁ。

    記憶に残ってたラストシーンは、思ってたよりだいぶあっさりだった……
    もっと悲しい感じだった気がするけど何か他の話と混ざったかな?

  •  自然破壊・環境問題について深く考えさせられる作品。山へハイキングへ行ったちほの兄・健治と同じ班の児童3人、校長先生が悪魔のアオザメオニによって虫や鳥、魚などに姿を変えられてしまう。ちほと飼っているウサギのロペは兄の救出へ向かう。
     ヒキガエルが毎年産卵する池へ向かう途中に高速道路が敷設され、多くの仲間が死んでしまったり、せっかく水辺を見つけても洗剤などで汚されていたり、無数の生き物が棲息する池が工事により枯渇の危機に陥ったり。生き物の目線から描くことで、自然破壊の影響を間近に感じることができる。
     ヒキガエルのエピソードは特に印象的で、幼少期から深く心に残っている。今はカエルや虫とふれあったりはできないが、生き物側の視点は忘れてはいけない。
     レモン色の満月と白いヤマボウシの花の描写がとても幻想的で、やさしい挿絵もたまらなく好き。

  • 子どもの頃、この本を読んで『ヤマボウシ』の木が欲しくなって親に頼んで買ってもらった思い出があります。今でも家の『ヤマボウシ』は元気です。そろそろこの本のように上の方が雪のように白くなります。

  • 子どもの頃は「クレヨン王国の十二か月」が好きすぎて、ユカちゃんやシルバー王妃が登場しない上に知らない植物の名前が多すぎてあまり面白いと思えなかった。
    けれど何となくずっと気になってはいたので、今改めて読んでみたら、とても素晴らしい作品だった。
    三木さんの挿絵もあってとても愛らしい印象だけれど、自然破壊に警鐘を鳴らす辛辣な内容で、大人な今の方が断然胸に響きました。
    クレヨン王国だけに色の描写が美しい。

  • クレヨン王国の中でも、身近な自然破壊に対する嘆きや憤りが強く伝わってくる作品。

  • 私が決定的に本好きになった本
    それまで絵本も児童書も読んでいたけど、これほどきっかけが明確な本はない

    小学2年生の時、肺炎で学校も休んで1週間程寝ていた時に
    「治ったら読んでいいよ」
    と親が買ってきてくれたんだよね

    それがなければ、私は福永作品と出会わなかったかも知れないのか…

    ちなみに、小学生時代の思い出はたいてい2年生と押し込んでいるので正しくはいつか不明


    主人公はちほ、ウサギのロペ
    ロペは実はクレヨン王国の住人で花ウサギの子孫
    ほか、話の筋はだいたい覚えていたし「オヒシバ メヒシバ エノコログサ 食べた昔がなつかしい」も暗唱できたのに、ちほの兄さん健治の存在がまるまる記憶から抜けていた!
    もともと、健治を探すためにクレヨン王国に行くのに!
    そして指先を健治がロペに噛まれたのは覚えていたのに!なんて奇妙な忘れよう…

    陶工ワニエモンもすっかり忘れてた…こちらは読み進むうち、ワニエモンの壺の手ざわり迄ちゃんと思い出した(記憶の中の)

    私は片仮名が正しく読めない事があるので、一時期ある症状を疑ってた程だったけど。「アオオニザメ」と思い込んでた敵は「アオザメオニ」だった…そうか、悪魔の鬼だったか…


    福永さんはたいそう自然が好きで、大事にしなきゃいけないって事を、人間もその一部だから、という形で書かれる

    ミジンコ→メダカ→フナの食物連鎖を、それぞれが歌う
    これらが自分たちを「べんとう」と呼び、「食べられるのは元気でおいしいから」「べんとう池の住人は誰かがいなくなったら、いずれみんなが困る」と歌う
    人間は自分を捕食するものが現れたら、とてもそうは歌えまい…


    フナにされてしまった健治が「覚悟を決めて」自分を大切にしつつも、命をかけて他の生き物を救うところ
    白鼻のトナカイが、自分の役立つ場所を見つけたところ
    ここらでもう、涙をこらえるのに必死

    満月に舞う花ウサギの美しさは格別だからこそ、その後の日常に訪れるだろう空洞が切ない

  • クレヨン王国シリーズの中でも、好きな作品。
    ちほとうさぎのロペがあくまに変身させられたお兄ちゃんを救うための冒険物語。
    クレヨン王国のテーマである自然の大切さをテーマに、元気なちほとロペが大活躍する。虫や魚に変えられてしまったお兄ちゃんたちの、それぞれの視点から見つめる自然破壊の悪影響も、私の自然に対する考え方を育ててくれた。
    子どもにも、ぜひこの本やその他のシリーズを通して自然を感じてほしい。

  • 自然破壊を行う人間に対する辛辣なまなざしが、作品全体に暗い印象を与える。
    姿を変えられた子どもたちは人間に戻り、元の世界へ帰るけれど、それで人間の自然破壊が止まるわけではなく、多くの生き物が住む場所を奪われて命を落とす現実は変わらない。
    でも、人間と自然が互いに助けあえる道があるのではないかと、作者が提示する小さな希望が救いでもある。

  • 私も昔うさぎを飼っていたので、読んでいて子供のころの思い出が蘇っていろいろな気持ちが押し寄せました。ロペは福永さんが飼っていたうさぎさんの名前なのですね。植物への観察眼がすごい福永さんですが、うさぎを見つめる目も優しく、心が温かくなりました。(私は子供のころ、こんな風に生き物を見つめることはできなかったな…、と反省もしました)
    巻末にロペちゃんの写真が掲載されていてかわいかったです。
    物語は今回も秀逸で、校長先生や子供たちがカエルやテントウムシになって懸命に生きる様子がなかなか考えさせられます(特に、フナになったお兄ちゃんの行動は感動的でした)。人間は自然をもっと大切にしなければと嫌でも思ってしまいます。
    とても面白い本なので、みなさんにおすすめしたいです。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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