クレヨン王国のパトロール隊長 (講談社青い鳥文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061471344

作品紹介・あらすじ

5年生のノブオは、右田先生にしかられ、山おくへかけだしました。道にまよって、林の中の一けん家をたずねると、洋服を着たフクロウが……。いつのまにか、クレヨン王国へまよいこんでいたのです。ノブオは、王国のパトロール隊長として、冒険の旅に出ます。楽しい読み物に子どもの主張をおりまぜた「クレヨン王国」シリーズ2作め。

感想・レビュー・書評

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  • ノブオと右田先生との関係が生徒と先生であるにも関わらず、きっと前世では仇同士だったに違いない、他生徒からみても先生のノブオに対する態度はやり過ぎでは無いかと思われるほどだったりと、特殊な敵対関係の説明から始まる。
    また、実の母親は亡くなり、新しい母親と連れ子の妹ができたが、遊んでいた拍子に事故にあい、妹は失明。以降、母親は相変わらず優しいものの"信夫"の"信"が前の母親の名前と同じだから縁起が悪いのだ、名前をカタカナに変えよう、とノブオにしたり、そうゆう呪い関係に傾倒。
    事故の際、父親に強く殴られたが、それ以降は何もない。

    心が苦しんでいることを気の毒に思ったゴールデン王はノブオをクレヨン王国へ行かせることに。フクロウからパトロール隊隊長を引き継ぐ。クレヨン王国に来てから母のぬくもりを感じる、お母さんに会いたい、とフクロウにお願いすると、会わせてくれることに。太陽が母であり、ノブオが見ていなくても太陽は見ている〜のくだりはグッときた。それから、僕はもう大丈夫だよ、というノブオ。踏ん切りがついた成長。
    火の精と水の精の戦いを食い止めるべく冒険するが、なぜ父はあの時殴ったのか、父は死ねない、ノブオが死ねば良かったのだ、〜など、
    重いテーマによるノブオの成長と、クレヨン王国でのファンタジーな冒険。

    また読みたくなる1冊だった。

  • この本を読んだのは30年以上前の小学生のころ。クレヨン王国のシリーズにはまり、何冊も読んだ。このパトロール隊長はクレヨン王国シリーズの中でも初期の作品。
    主人公ノブオが辛い境遇に加え、ひどく不公平な先生のクラスになり、先生と喧嘩して森に駆けていくところから冒険が始まる。
    シリーズの中では深刻度は高く、この後の作品に見られるクスリとなるシーンもない。さまざまな冒険を通じて、ノブオは周囲の人の見方を変えていく成長の物語。

  • クレヨン王国シリーズのなかでも特に好きな作品のひとつ。
    冒頭で担任教師が、絶対的に理解し合えない、憎しみ合う存在として描かれているのが衝撃的だった。児童文学でここまで徹底して学校の先生を悪者として描くのは珍しいのではないだろうか。
    少年の悔しさ、やりきれなさが伝わり、深い哀しみと孤独が胸を打つ。
    暗く切ないムードが漂う作品だが、クレヨン王国での1年に及ぶパトロール隊長としての生活が、彼に多くのことを教え、癒しと再生を与える。
    希望をもって少年が元の世界へと戻るラストシーンは、明るい未来への祈りが満ちている。

  • 大人になってから初めて読んだ。こんなテーマが重めのクレヨン王国もあるのか。
     お父さんがぶった理由にこの歳で気づけるノブオすごい。憎いほど嫌いな人の嫌な部分を自分が引き出してしまっている、という文にハッとした。今読んでもとても深い。妹のきよ子が目が見えなくなったことによって救われている、という記述にも納得させられた。最近どうも直情的になりがちなので、反省しなければ。

  • ノブオと右田先生の話は、子どものころまったく理解できなかった。あきらかに性格が悪いとか、なにか嫌なことをされたというわけではなく、ただその人をどうしようもなく嫌いになることもあるのだと、あのころは思っていなかった。どうしても相いれない人というものがあって、その人の前では自分がみにくくなるから、もっともっと嫌いになっていく。すごく、わかる気がする。

  • 主人公のノブオは、学校でも、家庭でも居場所がない。担任なんて、ノブオの気持ちなんて全くわかってくれない。そういうささくれ立った心のノブオが迷い込んだクレヨン王国。フクロウ隊長が見つめるノブオのひび割れそうな心が痛々しく、自分のことのように悲しくて・・・。
    けれど、クレヨン王国で「パトロール隊長」として働き始めるノブオ。最初は自分勝手だったり、戸惑ったりで、うまくいかないことも多いけれど、さまざまな困難に立ち向かい、たくさんの人?と出会い、ノブオは大きく成長していく。
    そんなノブオと同様に、この本を通し、私にも「責任」と「大人になること」を教えてくれたように思える。ジュニアのみなさんにはぜひ読んでいただきたい作品です。

  • この本、最初のうちは何度読み返しても涙が止まらず、結末も過程もわかっているのにどうして自分は泣くのだろうと不思議でした。

    クレヨン王国に迷い込むのは小学校5年生のノブオです。ノブオの持っている家庭環境や学校の先生との関係が非常に現実的で、現実のように残酷で考えさせられます。そして、身につまされるのです。

    密度の濃いエピソード群で人間同士のにくしみや誤解から生まれる争いを描き、大人が何度読んでもいいと思う作品になっています。
    クレヨン王国シリーズの中で一番読み返しましたし、一番おすすめです。

    ネタバレは http://d.hatena.ne.jp/ha3kaijohon/20120628/1340867328

  • 小学生のころに大好きで何度も読み返していました。ノブオやワレモコウのこころの痛みや孤独。愛されたいという純粋なきもち。うまく伝わらない優しさ。当時からひとりでいるのが好きで、いつも教室で静かに休憩時間に本を読んでいました。不器用で可愛いらしく笑う女の子の輪にうまく入れずに、静かに読んでいたら自分のように感じてノブオの冒険がうまくいくように祈る気持ちで読んでいたのを思い出します。考えなくてもいい走るんだ、と蛇の子供に叫んだノブオ。本当に大切ならばときには、頭で何かを考えることと同じくらいに相手へ行動で示してゆくことが大切だなあと思いました。大切な思い出の本。間に歌が入っていて巻末に楽譜も載っています。ピアノで弾いて音程を確かめて「こんなかんじなんだ」ってそのイメージを膨らませることができたことも嬉しかったなあて思いました。

  • 自分が不幸なときに他人を思いやることはものすごく難しいこと。クレヨン王国でパトロール隊長の制服を身に着けていたからこそノブオもあれだけ素直になれたんじゃないかと思った。それにしてもノブオは謙譲語なんてどこで覚えたんだとつい野暮なつっ込みをいれてしまう。

  • 妹の不幸な事故。そりの合わない学校の先生。心の限界に近付いている少年が、クレヨン王国に迷い込み、パトロール隊長に任命されて旅に出発する。

    旅の途中で、少年はある言葉に出逢う。
    「あのひとはわたしの憎しみの心を駆り立てる。しかし、わたしもまた、あのひとの憎しみの心を駆り立てている。」

    そのとき、少年は、先生のことを思い出す。

    先生がじぶんを苦しめているように、じぶんもまた、先生を苦しめているのだと。

    小学生にとってクラスの担任は、絶対的な存在で、対等に話せる相手ではない。相性の悪いそんな存在に毎日指導されることは、彼にとって、けっして小さな問題ではない。

    先の言葉は、その問題のすべてを解決してくれるものではない。うまくいかない場面はいくらでもあるだろう。しかし彼はきっと、旅に出る前と違った気持ちでそれに向かえるようになっている。

    人間関係は大人になっても続く。どちらが悪いという訳ではないが「どうしても合わない」という場面は多々存在する。そんなとき、相手の考えを押し曲げて自分の考えを押し付けるのではなく、どうせ分からないのだと放棄するのでもなく、相手の考え方を、共感はできなくても理解しようと四苦八苦することはできるのだと思い出させてくれる。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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