- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061472266
作品紹介・あらすじ
少年アグバと子馬シャムの旅は、フランスの宮殿が終点ではなかった。牢獄に送られたり、はなればなれになったりしながら、イギリスに渡りついた。"小むぎっ子"の暗示どおり、不運の連続の旅だった。この物語の主人公の子馬シャムこそは、のちに競馬界で名をはせる、サラブレッド種の親馬だったのだ。この名馬の半伝説的な話は、アメリカの女流作家、ヘンリーによってまとめられ、1948年に出版された。アメリカ図書館協会、ニューベリー児童文学賞受賞作品。
感想・レビュー・書評
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何年振りかに宮本輝『優駿』を読み返して、この本のことを思い出した。幸い図書館で借りることができた。古い青い鳥文庫。
正直で働き者だが口のきけない少年アグバと、風の王シャム。たびたび不遇な目に遭う。それでも希望は捨てていない。何度も嫌がらせを受けたりひもじい思いをしても、互いを信じる心が少年と馬を救う。
シャムはやがてゴドルフィン伯爵のもとで美しい雌馬とのあいだに速くて強いこどもができるとみんなそれぞれに出世していく。
シャムこそがあらゆるサラブレッドの父なのだ。
こどもたちがレースに出るニューマーケットでアグバがシャムを走らせてみたくてたまらなくなる気持ちが痛いほど伝わる。
日本語訳は、令和の今では「不適切」な表現もあるが、臨場感にあふれ、熱が伝わってくるようだ。挿絵も素晴らしい。
図書館で、この本はいったい何人の子どもたちに読まれただろうか。『優駿』では博正が久美子にこの本のことを語るシーンがあるのだが、セリフもそらんじることができるという。作者の宮本輝も何度もこれを読んだとあとがきにあった。
こういう物語こそ多くの子どもに読んでもらいたいとおばさんは、切に思う。
ところであの看守に破り捨てられたシャムの血筋の書いた紙にはなんとあったのだろうかと気になってしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示