クレヨン王国 月のたまご PART4 (講談社青い鳥文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061472464

感想・レビュー・書評

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  • 第3付属物扱いされるアラエッサは可哀想だが、扱いが理不尽すぎて1番面白かった。

    カメレオン元総理の暗殺(未遂)と三郎との再会、まゆみは子馬とペーターに助けられて海の小人を研究するドラスゴー氏と出会う、ストンストンは養子に、アラエッサはストンストンの第3付属物に。
    (第1は永遠に、第2は可及的速やかに)
    ダマーニナは馬で競走するのにお互いを縛り、遅れた方は引きずられるというむごいやり方。

    まゆみ達が蔵から盗んで食べていた小麦粉擬きは、蔵自体がストンストンを養子にしたナレンナーのもので、古い小麦粉にみみずの粉末などを混ぜてみたもののフナも食べなかったので持て余していたのを無料で貰って食べていたのだった。

    ストンストンがナレンナーに、「なんでも正直に話せという者に疑問がある」ことをぶつけてる場面が印象的だった。非常用の防具やボタンなどが本当に正しく使用/作動するのか疑問に思うのもわかるし、見知らぬ人相手にちょっとした日常の不愉快なことで一々口に出すべきなのか。

    「そこで疑問なんだ。思ったことをぱっと言える人って、はじめから、汚いことや人を傷つけることなんかは思いつかない人なんですか。そういう生まれつき立派な人がいるんですか。言うと叱られるようなことばかり思いつく僕は、よほど駄目なんですか。そういう人と、僕とは、分かり合えるでしょうか。さあ、お母さま、教えてください。僕は普通じゃないんでしょうか。」p126

    ナレンナーは回答せずにそうゆう感受性は素晴らしいわというようなことしか言わなかったが、アラエッサにも言えない心の内を吐き出せて嬉しいストンストン。同じ種族(ブタ)で、母親にみたてたからこそ。
    その後、アラエッサとはどこかギクシャクした関係になるのもなかなか、複雑な心模様である。

  • 児童書だけど、書いてあることは大人の世界ですね。
    ただ、それぞれ方向性は違うけど真っ直ぐな感じがするのが、児童書っぽいところでしょうか。
    ダマーニナさんの普段の足がどうなっているのかがよくわからないな。
    それから、今では無理だろうなという差別的表現も。
    やっぱり古いんだな、この作品と改めて思いました。

  • 20年前くらいに読んだ記憶が、朧気ながらに戻ってくる。
    三木さんの挿し絵が好き。
    クレヨン王国の登場人物はみな、わが道を信じているところが好き。

  • まゆみと再び分かれてしまい、その行方を追おうとする三郎たち。
    イルダ夫人の賢さといったら。
    ストンストンが三郎の正体を明かして協力を求めたら、それを疑うでもないが、本物であることをしっかりと確かめる手腕。さすがはゲートック医師の奥様!


    p76あたりの、カメレオンがヌラリン中佐を犠牲にして生き残ったシーン。
    本当に本当に、容赦ない!と思った……

    カメレオン総理をヘリコプターで迎えに来たヌラリン中佐。
    しかしヘリコプターには爆弾が仕掛けられていた。
    非常脱出用パラシュートを装着しようとするふたり。が、カメレオンは不意に気づいて、ヌラリンのパラシュートを取りあげる。

    「わしは、きみのパラシュートで――きみには、わしの。」
     中佐の顔が、ぐんにゃりゆがみました。それは怒りとも、うらみとも悲しみとも、いいようのない屈辱をあらわしていました。
    ……中佐の、つまりカメレオン向けに用意されていたパラシュートは開かず、中佐は海に落ちていく。略……中佐は、もちろん、この悪だくみを知らされていなかったのです。それが、パラシュートの交換のときの、あのなさけない顔つきに、はっきりと出ていました。中佐は、カメレオン総理から、あらぬ疑いをかけられて、どんなにつらかったでしょう。しかも、その疑いが正しかったことを、無惨な死をもって証明しなければならなかったのです。
     ――中佐、永久にさよならだな。きみは天国へいくさ。わしは、とっさに、きみをころしたから、そこへはいけんな。――

    このあと、カメレオン総理はずっとこのときのことを悔い、悩まされるわけです。
    が、この老齢の総理らしい、まぬけに見えて実はこれだけの時間を総理として生きのびてきただけのことはある、狡猾とすら言えないことはない判断。そして、後悔。故郷に病身の妻がいるから、転勤に口ぞえをしてほしいと願っていたヌラリンの死亡。本当に、児童文学の枠じゃない。


    p119
    福永さん、馬好きなんだろうな。ディックもかわいかったけれど、目の見えない白馬ピーターもかわいい。ピーターは喋れない馬なので、行動だけで、行き倒れていたまゆみを助ける。

    ピーターは、ふたりが安心して眠れるように、鼻面で穴を掘って、その鼻面で土を避けて……と、ねぐらを確保してくれた。二時間もかけて。
    「まわりの見えない孤独なピーターにとって、土の中にもぐることだけが安心してねむれる、ただ一つの方法だったのでしょう」
     …略…
     なにか、わけのわからない大きな感動が、まゆみをおそっていました。…略…かのじょは、いつまでも子どものように泣きじゃくりました。
     …略…
    「びっくりさせて、ごめんね。こんなことも知らなかったと思ったら、なんだか、むしょうに悲しくて泣けてしまったの。いままで体の不自由な人を何度も見ていたのに、ちとも気がつかなかった。あの人たち、つらい人をはげますために生きるっていう使命を受けていたんだわ。そんなつらい仕事があるってわからなかった。だって、自分がほんとうに犠牲になってつらくないと、その仕事は果たせないんだもの。あんまりつらすぎる。ピーター、あなたはそうやって、あたしに生きる勇気をくれたのよ。あなたたちが神さまにえらばれた強者だってことが、いま、はじめてわかった。あなたの偉大なほこりも、その苦しみの尊さも。」
     ――野鳥クラブで仁科先生に富士山に連れていってもらったとき、森林限界の黒い溶岩地帯に一本だけ、枝もふきとばされそうに立っているナナカマドがあったわ。あの木は、体が右半分はひきちぎられていて、とっても感動的だった。なのに、同じ人間のときには、それが、わからなかったんだわ。――

    まゆみはしょっちゅう詩を口ずさむのだけれど、福永さんが「伊勢物語から、詩が物語に欠かせないものだと知った」というようなことを書かれていたのを思い出す。彼女の詩が。物語の場面場面で、とてもよい転換点、変哲もない移動の部分にすら、時間の流れを作っているのを感じる。


    ストンストンが胸に抱えている不安、楽しく過ごしあう友人であるアラエッサには言えない不安をナレンナーに打ち明けるシーンは、物悲しい。
    友人と家族のあり方、つきあいかた、そんなものを思う。
    ふざけあうのは楽しいけれど、苦楽を共にしていたけれど、あれだけのつきあいをしているアラエッサとストンストンの間でも、言えないことがある。
    このさびしさ、距離感は、初読時からなんとも言えない、苦い種のように引っかかった。

    あとがきより。
     しかし、物語を書くことはやさしくても、人をひきつける文章を書くことはむずかしい。
    …略…いろんな見えや、体裁や、打算、おもわく、その他もろもろのすべてをぬぎすてたところで、わたしは、自分一人にだけ、こっそり耳うちするようなしみじみした気持ちで、
    「じつは、神さまが人間に許した才能は、ただ一個あるだけ。それが努力じゃないかな。」
     そう思っているのである。
     努力ということばは、学校の先生たちによって、「いやなものを、むりやりやる。」という暗いイメージを着せられて仕舞ったが、本来は、とても楽しく、幸福で、空想的な分子に満ちたものである。でなければ、だれが努力なんかするであろうか。

  • さらにシビアな展開に。カメレオン総理の脱出の件で濡れ衣を着せられた中佐が哀しすぎます。まゆみちゃんと三郎さん、早く再会して;;こちらが照れてしまうほどの純愛と、悪辣な陰謀がやわらかな雰囲気で表現されてて面白い!さあ二人は無事再会できるのか。そしてストンストンとアラエッサは合流できるのでしょうか…。

  • やっと再会できた三郎とまゆみ。しかし、三郎が「月のたまご」を救出している間に、王国ではずるがしこいダガーの勢力が大きくなっていた。その状況をさぐるため、単身旅だったまゆみ。指をおそった激痛で、まゆみの危機を直感した三郎は、アラエッサとストンストンをつれ、王国とまゆみを救うため立ち上がった。一方ナルマニマニ博士に襲われたまゆみだったが、その後馬のピーターと出会い、三郎のもとへ向かおうとする。

    せっかくの再会もつかの間、二人はまたばらばらに。今度はアラスト組も別行動なので何だか寂しい。でもやっぱりまゆみの詩はいつ読んでも深い。だいぶ染み入る詩も多くて好きだなぁ。サードへの限りない愛にあふれてるのを読むと温かな気持ちになる。ピーターへの言葉で気づかされることもあって、さりげない道徳が入ってるところで初めて児童書っぽいなと思った。クレヨン王国シリーズは結構子供を舐めずに厳しいところがあるから普段はあまり感じないのだけれど。ところでプーチをすぐ下のポストに置くあたりが気に入らん。ジンジャー戻ってきて!早く続き読みたーい。

  • 0607

    ダガーのだがぁにイライラする。

  • 2008/05/07読破。
    ストンストンの意外な一面に驚いた。誰もが気づかないままに抱く疑問、それをぶつける姿は、今までのストンストンからは想像もつかなかった。
    ダマーニナの足。それから自由になりたいという思いと、離れたくないと思う足。
    人の中にある、離れがたい【嫌な所】のことなのではないだろうか。

  • いよいよ4ですが、全く収束の気配なし!どうなるのかな〜。まゆみと三郎がなかなかあえないのが気になるし、ナルマニマニがその後どうなったのか、全然分からない。早く早く、次々〜!!!

  • 倒れた三郎を休ませ、単身旅だったまゆみ。しかしまゆみに危険が。それを直感した三郎はまた旅立つ。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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