クレヨン王国 月のたまご PART6 (講談社青い鳥文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061472662

感想・レビュー・書評

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  • アラエッサの鶏がなぜ朝鳴くかの話は、その前置きの後でアラエッサがコケコッコーと鳴き、ストンストンと共に心が温かくなった。
    うさぎと鷹の話(うさぎの伝染病が流行ったが、鷹達が多い地域で伝染病初期て弱ったうさぎ達がみな殺されたことによりそれ以上の広がりは食い止められた話、うさぎはうさぎ、鷹は鷹として生きる話)が印象的だった。

    伝染病・青ころりの蔓延、アラエッサが故郷で朝鳴く感動的なコケコッコー、ダマーニナはベッド内の水が減りつつあり以前の2分の1を摂取、まゆみは図書館で三郎の情報がないか毎日新聞を読んでいたがある時青ころり蔓延を知り症状が三郎と似ていたので水車に戻ってアラエッサの秘薬を手に青ころりの病院へ。原因と思われる鏡の城にまゆみとナース1号が行くと、ダマーニナが隠れていた。

    自尊心のない人と
    ありすぎる人との間を
    白い帆をあげて走っていく
    楽じゃないな
    一方をさげれば一方に近寄る
    岸辺のマンジュシャゲども
    火のような目で見送る
    女と女の海峡風景

    ↑まゆみが病院へボランティアに行くと、秘薬は効果を発揮。ナース1号と2号と共に看護師として働くが、1号は気が強く古株として2号とまゆみを従える。2号はあっさり受け入れてしまうので、まゆみも従わざるおえない、その苦痛。
    病院の紙に上記の詩を走り書きしたのを1号に見られ、「自尊心の強い女で悪かったわね」と言っていて、現実的な仕事のストレスを思い出す笑p210

    「どんな人も、自分のほんとの顔だけは見ることがてきないというのは皮肉ね」p224
    「〜友達の顔と、鏡に映った友達の顔を見比べればわかる。自分にはわからない本当の自分を他の人はちゃんと知っている。気持ちが悪い。あなたにはきっと、私は意地悪で気の強い女に見えるんだろうな。それほどじゃないんだけどね。」
    鏡の城にオートバイでまゆみを連れていってくれた1号は、城を探索して怖くなったまゆみをまたオートバイに乗せて1周して(気持ちがスカッとするわよと)くれたり、上記のことを語ったり、婚約者を青ころりで亡くした辛さもあり、ただの意地悪な女じゃないのだとわかる。

  • 伝染病とは穏やかじゃない…。
    犠牲も山ほど出てる。
    公害病か、放射能か…。
    そんなイメージも思い浮かぶ。
    それぞれがバラバラに動いているように見えるのだけど、いつか一点に収束するのだろうか。

  • アラエッサの朝のあいさつ。

  • p87 自然観察クラブの仁科先生が、まゆみにしてくれた話
    「――一九五〇年代にフランスで発生したミクソマトシスというウサギの伝染病は、またたくうちにヨーロッパ全体に波及してウサギを全滅寸前にまで追いこんだ。しかし、南スペインまで怒涛のいきおいで広がったおそろしい病気が、そこで停止した。南スペインの山岳部は、ウサギの天敵であるタカやワシが、ひじょうに多いところで、ウサギが生きていくには、いちばんむずかしい場所だった。ワシ、タカがねらっているうえに、そこへおそろしい伝染病がおしよせてくる。ふつうに考えればウサギたちは一も二もなく完全にほろびてしまいそうに思われた。ところが、そうじゃなかった。じつは、ここでウサギたちが生きのびて種の絶滅をまぬかれることになる。なぜか。伝染病にかかって、すこしでも弱ったウサギは、かたっぱしからワシやタカの餌食になった。伝染病の初期の段階で、ワシやタカがウサギをしまつしてしまう。さすがの伝染病も広がる隙がないのだよ。」
    …略…
    「いいか。タカは、ほんとうにウサギの敵なんだぞ。見つけしだい食べてやろうと、それしか考えていない。だが、その敵がいたためにけっきょく、ウサギは絶滅しないですむんだ。敵が敵として殺して殺して、それが味方になっていくんだ。
    自然というのは、なんという雄大なスケールだろう。神さまの帳じりは、じつにすばらしい。神さまは、どえらいやつだ。信用していいよ。この話から先生が感じたことはな、神さまのことは神さまにまかせておけ。人間が、ああこう考えたってしかたない。みんなは、ただ信じるとおりにいけばいいってことだ。ウサギにはウサギの道、タカにはタカの道だよ。」
     まゆみが仁科先生から学んだことは、草や鳥の名や習性など数えきれないほどありましたが、ほんとうの意味で心にしみこんだのは、このウサギとタカの話と、あとは、植物たちが異人種の動物を受けいれる決意をして、葉や根や茎が、みんな会議を開いて、それぞれの美しい花を作りあげた、というこの二つでした。
    「自分がやさしくないとき、他人をゆるせないときは、この花の話を思いうかべろ。花が、なぜ虫でもないわれわれにきれいに見えるのか、その意味を考えろ。」
    と、仁科先生は口ぐせのようにいっていました。
     タカとウサギについては、たった一回、なにかのはずみで興奮して話しただけでしたが、その後、まゆみは、決心しても勇気が出せないときには、いつも、この話を思いうかべて、自分を鼓舞するのでした。



    以下、「わあ、なんだか読書感想文というか後悔吐き出しているだけでは(苦笑)」と思ったので、苦手な人はここまでで。


    「自分がやさしくないとき、他人をゆるせないときは、この花の話を思いうかべろ。」
     自分を許しづらいな、と思っていたときに、ちょうどこの箇所を読むなんてね。ゲートック医師の「しゃべる必要のないことを、しゃべってはならない」を何度も思い返していたときにね。
     道徳的に今まで自分が正しいと思って行動してきた規範に沿っていない行動を取ってしまったと後悔し(誰に何も迷惑をかけたわけではなく、ただ自分にしか影響のない行動ではあるにせよ)。
     もいっちょ。これはもう無理、行動しても仕方ない、これに時間を割くことに意味はない。と、決断し。しかしながら、無理、と思ったことにも相手のいることであり、向こうは向こうでそれはないと文句を言ってきて。うーん、それは言っちゃいけないことだよなあ。ルール違反だよ。何故そう言われたかあなたわかってないでしょう。と、思いつつも、自分がそこは無理して笑顔で対応するべきだったのかと、責められたことに対して、どう返事しようか、これは「しゃべっちゃいけないこと」なんだろうか、私の思いあがりか、偽善かと惑って。
     そんなときに読んだ言葉でしたよ。
     これだけでは、white lieを必要とする自分のずるさを実感するだけで、どうしようもなりそうにないので、言葉をもらいました。ずるさの整理はついていながら言い訳したいだけのような気分だと了解しながらね。

    「どれが一番自分にとっていいのかを選ぶのは、君なんだよ。そこで君がやさしくして、この先人生ずっと我慢するの、それでいいの?」

     色々とすごいことを言ってもらって、これが中でもっとも重要。とても楽になった。
     卑怯なほどの自己正当化、他人を気遣わないのではないかと思うほどの行動は、いずれ自分に返ってくるだろうと。因果の報いというものは、世の中がつながって回っている限り来るだろうと恐れながら、すっぱりと断ち切って向かえないあたりが小狡さだと自覚しながら、でも、その状態を続けてでも、それでもいいと、最終的に自分が思える選択を出来るように。自分の倫理観にちょっと横向いていてもらって、もうちょっと、よりよい結果をめざす。何がイヤだって、そういう自分が友人に胸をはって会えないようで、その行動で信頼を裏切って、お天道様に向かえないようでイヤだったのだけれど、その隙間でもがくのも、ときには勘弁してもらいましょう。伊集院曰く、「ちょっと脇においてね。棚にあげちゃダメだよ、脇においとくだけ。また戻せばいいんだから。ただね、しょっちゅう脇においとくと、そのまま忘れちゃうことがあるから、そこだけ注意しないとねー」てな感じのことでした。
    「わがままになっていいときなんだよ」
    と、許してもらえる、ありがたさ。


    アラエッサの朝のあいさつが素晴らしい。


    青ころりが発生して伝染病だとみんなが逃げていくサースデンへ向かうまゆみ。
    三郎を助けた、ニワトリ社会の秘伝の吐き薬を持って。
    自分たちには免疫があるから、と思っていたとしたって、三日くらいで死んでしまうような流行病の地へ行くなんて、まゆみのやさしさの深さが、恐ろしいくらい。でもこの子の書かれ方のすごいところは、そんなに尊いことしているのに、どこまでも弱くかつ強い少女で、流されているように見えて、でも使命感ではないけれども、自分の手を必要とするところへ向かいたいっていうのが伝わることと思う。

    ゲートック先生、再会のときに
    「きみは、えっ、君じゃないか。」
    アラエッサ、ストンストンとも同じような会話していたけれど、ゲートック先生、名前が思い出せないのか、まゆみの名前出しちゃいけないのをわかってなのか……

    ナース一号がまゆみにつらく当たる。患者の眼前でまゆみの頬を平手打ち。ゲートック先生、
    p211
    「ま、ゆるしてやれ。あいつは、きみよりずっと不幸だ。この青ころりで婚約者を亡くしたばかりだ。」
    「はあ、そうだったんですか。」
     まゆみは、それからは一号になにをいわれても気にならなくなりました。


    黒川伊保子さんの息子さん「なじる人は傷ついている」
    怒る人は傷ついている。相手を責めるのは、期待しているから。腹が立つのは、依存しているから。
    ここらはズーニーさん。
    そう思っても、確かにそうで、黒川伊保子さんの息子の、あの「なじる人は傷ついているから」と、まず相手を思いやって自分から謝るのを思い出した。
    悲しいから、わかってもらえないから、どうにも出来ないから、自分よりめぐまれているように見える人や、自分以外につらくあたってしまう。
    ローランの「mother」の歌詞で「人の悲しみを知らずに 人をうらやんではいけない あなたの言葉痛いほど この街で感じています」というようなのがあって、自分がそういう気持ちになると、これを思い出す。
    まゆみは、もうここも過ぎているんだなあ……

  • 地球に平和をもたらす「月のたまご」の危機を救った三郎とまゆみ。いま、三郎は、白馬のピーターの案内で、カメレオンとともに海の小人の国へ。まゆみは、三郎やアラエッサをさがして一人旅。三郎という核をなくし、ずるがしこいイタチのダガーの勢力が強くなったクレヨン王国に、奇病「青ころり」がひろがって鏡の森の城を壊そうという動きが出る。まゆみは青ころりの患者に、アラエッサが作った薬が効くのではと考え、取り残された地域へと向かうが・・・。

    ピーターが何をしようとしているのか気になるところで、まゆみの様子が中心になってしまって結局分からず終いでした。サードと早く再会できるといいなと思ったのですが、ダマーニナに見つかってしまったのでまだ困難が待ってますね・・・。アラスト組の活躍が少なめだったので、もっとどたばたやってくれないかしらと7巻に期待を込める。キラップ女史が最強すぎて面白いので、何かやらかしてくれるかな。カメレオン総理も早く戻ってきて欲しい。

  • ○感想
    6で終わりではなかったことに、ちょっとびっくりしました。
    謎解きが出揃いはじめて、後は何をどう料理するか、というあたり。
    知識を得るのに遅すぎることは無いんだなと、あとがきに勇気づけられました。
    しかし…水爆が海底に59個沈んでいるらしく…小説より事実のが怖いって嫌な世界すぎる。

  • 0608

  • 読んだだいぶ後での更新。先がきになってきになって仕方が無いので、かなり飛ばし読みをしていた様な・・・それでも、どんどん話は展開していく。きっと子どもはこれについていけないかもなぁ。

  • クレヨン王国に奇病「青ころり」がひろがってゆく・・。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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