クレヨン王国109番めのドア PART1 (講談社青い鳥文庫 20-26)

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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061473737

感想・レビュー・書評

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  • 時を進める力を持つ金バト、
    時を戻す力を持つ銀バト。
    2羽の時バトを解放してしまい、連れ戻すための冒険が下巻に続く。
    登場する東大生が、昔の対人関係が苦手なガリ勉のイメージで面白かった。

    ーーー人間たちは、進歩しか願わない性質によって、地球上の大半の生物を破滅させた後、そのもっともずるがしこい者たちだけが、新しい次の星を破滅させるためにとび去っていった。彼らに欠けていたたった一つの要素は、他への尊敬であったーー。p122

  • ずっとクレヨン王国を読んできたのに、私の頭は本当に忘れやすくて、理解力が足りないんだなあ……
    でも、脳みそのどこかしらには残っているからこそ、今でも好きなんだろうけれど。
    経済についての福永さんの意見とか、今でこそそう考えられるけど、これを意味がわからないでも叩き込んで覚えておけば、自分の物差しが不痩せているのにね。
    あ、そうか、本は物差しなんだっけか。
    そういう読み方を出来る人もにいるのに、私は書かれたものを書かれたとおりにしか、いまだ読めない。読めるよう訓練していかないとねえ

    水色の魔界よりもなお、自然破壊についての意見が痛烈だった。


    自然を守る行動についての終わらない議論
    原発の議論と同じ。
    塾の佐久間先生が、子どもたち規子とのりさん、東大生野末くんに熱弁を振るう。
    p116
    「森がいくらあってもたりやしないよ。よく、『日本が木材を輸入するから熱帯雨林がきえてしまう。』という人がいる。それも、うそじゃない。だけど、『日本が輸入をやめたら森は切られないのか。』といえば、とんでもない。
     先進国じゃ、切った木のうち、燃料に使うのは三割だが、発展途上国では、七割が燃料なんだ。電気もガスもわずかしかないんだからね。毎日木をもやしていかなきゃ、食事もできないんだからね。先進国の人口は七億人、その他の国は四十数億人。その四十数億人の人たちが、日本人と同じように電気も使おう、神も使おうという生活をめざせば、森林をつぶすしかないだろ。『そうしちゃいかん。』とだれがいえる?……略」

    「…略…『自然をこわすな。』といってもむりでしょう。五十億の人間が文化生活をするには、土地がいるんだから。」
    「じゃ、一、二の三で、みんなが原始的なくらしにもどればいい。」
    と、規子がいいました。
    「そんなことはだれも賛成しやしないよ。今だって税金が少し上がれば大さわぎになるじゃないか。それどころか、われわれは死に物ぐるいで、もっと経済を拡大しようとしつつあるんだ。それはまたそれなりの根拠があるんだよ。
     たとえば、現に中国の石炭燃料による公害で、日本にも酸性雨がふっている。ここは、進んでいる日本の公害防止の技術で、中国を援助してあげなくちゃならない。そうしないと、われわれ自身にふりかかってくる。だが、その援助の金はどこから出る? われわれの税金だろ。景気がわるくなって企業が赤字なら、税金がとれないから、援助もできない。ところが、景気をよくするということは、物をどんどんつくって、それをみんながどんどん使うという状態をいうんだよ。それをどこの国の政府も目標にしている。『みんなで貧乏をやって生きのびよう。』と公約したら、だれがえらんでくれる?」

    p120
    「大部分のひとはね、自分が今もっている利益をまもることが正義だと思っている。それをおかそうとすれば猛然と戦う。そこには損得のほかに正当だという気持ちがあるんだな。たとえば、デパートが進出しようとすれば、地元の商店街は一致して反対する。これまでうまくやっていたのに、わりこんでくるやつが悪いと思っている。今までそうだったから、それを変えるやつは、ひどいやつなんだ。
    …略…
     今ここに、ぜったいに虫歯にならないぬり薬とかができたとしたら、歯科医師会は、自分たちの死活問題だといって、売らせないし、売るならば補償を要求するかもしれない。
     無公害の電気自動車なんかは、実用化の研究がされつつあるけれど、今の経済が混乱するようなドラマチックな登場のしかたは、ゆるされやしない。車のメーカーも、ガソリンスタンドも、石油会社も、産油国も、みんながこまらないような条件をととのえてからでないと、出られやしないのだよ。
     ところが、そんな、こんなのうちに汚染はすすみ、人口は爆発的にふえつづけていく。」
    「それじゃ、知っててみすみす破滅するの?」
    「みんな、自分の生きてるあいだぐらいはだいじょうぶ、と思ってるんだよ。……略」

    その無公害の電気自動車を動かすための電気も、発電で原発を使えば放射能の、水力ではダムの、火力では二酸化炭素と燃料の問題。燃料はガスでも石油でも石炭でもシェールガスでも環境破壊、土壌汚染。あ、日本はまだ石炭採れるから、売れなくなったから採掘しなくなっただけで、結構良質な石炭がまだ採れるから、対応する仕組みにすれば使える燃料らしいですよ。



    ピンクのクレヨンは、調子のいいのりさんに、そこらのものにさわらないよう注意しておいたのに、のりさんは、時バトさまを逃してしまうという大失態をやらかす。
    なのに、このピンクのクレヨン、偉いんだ。こんな心を鍛えたい。
    p205
    「最初に、おわびを申しあげます。」隊長は、沈痛な表情で、「ドアつくりの名人相澤一平さん、孫の規子さん、そのお友だちの松田則子さん。せっかく、わがクレヨン王国108グループにおまねきしたのに、わたくしの説明不足、不行き届きにより、不愉快な思いをさせてしまったことを、心より残念に思い、おわびいたします。また、グループのみなさまがたにも、ご心配、ご苦労をおかけする結果となってしまいました。つつしんでおわびします。」
     規子は、
     ――とてもえらい隊長だなあ。――
    と、感動しました。のりさんの行動をまったく非難しないのですから。

  • 挿絵を思い出す。これも読みたい。

  • 小学校のとき読んで妙に印象に残っています。
    なんとも不思議なお話。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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