少年H(上) (講談社青い鳥文庫)

  • 講談社
3.39
  • (2)
  • (3)
  • (13)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 38
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061485907

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 気楽に過ごせる場所がどんどんなくなっていくんだなぁと思った。

  • 遊びに悪戯に忙しい少年Hの目線から描かれる戦争の話。


    戦争の話というよりは、Hの思い出なのでしょうね。
    でもその中にポツリポツリと現れる戦争の影に、今だから気づけます。

    印象に残ったエピソードを2つ。
    『オトコ姉ちゃん』…「兵隊に行きたくなかったオトコ姉ちゃんは、死ぬしかなかったんやなあ。戦争で弾に当たって死ぬより、自分で首吊って死ぬほうがよかったんか?」
    優しくて、Hが酷い悪戯をしても変わらず遊んでくれたオトコ姉ちゃんに赤紙が来た。入隊せずに逃げたオトコ姉ちゃんの死んだ場所は営業停止したガソリンスタンドの汚い便所だった。
    そのことを思うと、戦争に行きたくない人は、こんなに惨めに死ななければならないのか…と。大好きだったオトコ姉ちゃんの最後の姿を見たHもどれだけショックだったのだろうと思います。

    『軍事機密』…「いよいよ二宮金次郎さんの銅像も出征することになりました。銅像は敵を撃つための大砲の弾になるのです」
    毎日見ていた二宮金次郎が戦争に連れていかれる。
    それも”出征”という言葉を使われているのが、怖い。
    ”祝・出征、二宮金次郎君”と書かれたタスキをかけられ、銅像すらも戦争に行くことを喜ばさせられるなんて…だんだんおかしなことが増えてきている。

    これが戦争のせい。

  • 太平洋戦争時代に少年だった著者の自伝的小説。

    好奇心旺盛なH(妹尾肇)は、洋服仕立て職人の父親と、敬虔なクリスチャンの
    母親と、優しい妹の好子の四人家族で、神戸市の下町に住んでいた。
    山にも海にも近いこの町で、楽しい少年時代を謳歌していたのだが、
    次第に戦争の気配がHのまわりにも、ただよい始めてきた。

    当時の一般市民が知りえなかったことが描写されていると、論議を呼んだことのある作品です。
    そのことを確かめるべく、関連書も読んでみようと思います。

  •  宗教を、キリスト教を否定するつもりはさらさらないが、それでも戦時中前後の厳しい期間に、自分の親が堂々とキリスト教信者として活動していたのを見て、肇は相当嫌だったろう。事実、少年期の肇は母親を含むキリスト教の街頭伝道の一隊が来ると友人からからかわれるため、すぐに隠れていた。私も、もし自分の親がそんなことをしていたら、親に反発するどころか、完全に拒絶していたと思う。中学に上がってからも教員からキリシタンだからといじめを受けていたようだし、かなり大変だったろうという印象を受けた。

  • 悲惨な戦争の体験を「辛かった」と語るのではなく、著者は「それが子ども時代だった」とまるでアルバムを開くように見せてくれる。成長過程において、段々と大人社会への疑問もちらつかせながら「自分は自分」であってもそれで人を切ることのない著者の気だての良さに救われる。

  • 少年の目を通して描かれた昭和初期の日本の風景。
    軽快な文体と描写でまるでその当時にトリップしたかのように、風景が浮かんでくる。
    古さを感じさせないのもすごい。
    小学生にも読めるようにと全ての感じにルビがふられている配慮も心憎いです。
    もうすこし大きくなったら息子にも是非読ませたいな(*^^*)

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

妹尾河童
1930年神戸生まれ。グラフィック・デザイナーを経て、1954年、独学で舞台美術家としてデビュー。以来、演劇、オペラ、ミュージカルと幅広く活躍し、「紀伊國屋演劇賞」「サントリー音楽賞」など多数受賞する。また、エッセイストとしても、『河童が覗いたヨーロッパ』『河童が覗いたインド』などの大人気シリーズで知られている。著書多数。『少年H』は、著者初の自伝的小説で、毎日出版文化賞特別賞受賞作である。

「2013年 『少年H(下巻) (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

妹尾河童の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×