森田療法 (講談社現代新書)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061488243

作品紹介・あらすじ

他人の視線に怯える対人恐怖症。強迫観念や不安発作、不眠など、心身の不快や適応困難に悩む人は多い。こころに潜む不安や葛藤を"異物"として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として、有益なヒントを提供する。

感想・レビュー・書評

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  • 私は、臆病な人間で、不安で石橋をいつまでも叩き続けて渡れない。
    けれど、人生は、選択しなければ前に進めないし、選択せずに逃避してしまったら、不安を避けることはできるが、目的は達成できずにタイムオーバーだ。
    怖いけれど前に進む選択をすること。そうすることが大切なんだと教えてもらった。
    これからも悩んだりしたときに読みたい。


  • 本書は末期ガンによる副作用で失明した筆者が、担当編集者への口述筆記で完成させたものですが、ガンの痛みや身体の不自由さを抱えながら、なぜそこまでして書き上げたかったのか。そこに、筆者自身が「森田療法」具現者としての生き証人足らんとした事実を知ることになります。筆者による「あとがき」で明らかにされる事実はまるで、重厚なミステリーの種明かしを聞かされる様な衝撃と感動が味わえます。
    森田療法とは、神経療法の理論全体を指す言葉です。キーワードは「あるがままを生きる」。ここでの「あるがまま」とは、症例として現れる不安や苦痛をあるがままに受け入れながら、こうありたい自分像に向って(目的本位)行動し、自己実現を目指すことを目的とします。
    対人恐怖症だった銀行員の話など具体的なケースが理解を助けます。
    結局、神経症自体、当事者にとっては苦痛以外の何ものでもないが、実は苦悩や葛藤を通じて、「とらわれ」からの解放を経験することでより自由で豊かな人間形成を可能とする面にも注目するのが森田療法です。

  • 自分の自己肯定感の低さや、あがり症について、なんとか乗り越える糸口はないものかとあれこれ探している中で、以前に「森田療法」という言葉を聞いたことを思い出しました。

    森田療法での「あるがまま」という概念の真髄が解かれており、思いのほか勇気付けられました。

    自分にはやはり、何もしないうちからあれこれと考え、恐れる傾向があるのですが、最終的には「怖いけど、やってみる」、やらないうちの恐怖は妄想、というシンプルなことに行き着くのだなあと思いました。

    「逃避的な考えを認めたうえで、それを「あるがまま」にし、さまざまな葛藤をもったうえで、とにかく新しい行動に自分を賭けてみようと「目的本位の行動」をとるのである。この場合、結果は良い目が出るか悪い目が出るかわからない。しかし大切なのは自分がよいと思ったことに自分自身を投げ出し、行動をしてみることなのである。」

    この言葉に尽きます。

  • 興味があったから買ったのに、途中興味を失ったりするフェーズがあってなかなか進まなかった。この本の内容が悪いのではなく、私が読書に集中できない期間があったっていうことです。
    自分の大炎上した心を落ち着けるには、とても有効でした。適度な諦めと、心理的距離をとるのは、ずっと前から私が一番苦手にしていることなので、、、、

  • あるがまま。人としての自由な選択。
    少し軽くなったような気がします。

  • 普通に泣いた。

  • 有名な本なので読んでみた。さすが読み継がれるだけあって内容は難しいが、各章は短くシンプルにまとまっているので、このページ数なら読めるなとスルスルいけた。これは何度も読みたい。
    今でいう不安症が主。強迫観念、対人恐怖症、不安障害、書痙、不眠神経症など。三章に症状と簡単なメカニズムと解決策。四章に具体的な治療法。
    不安と欲求は誰にでもあり、どう対処しているかで不安症になるかどうかにわかれるとあったことから、この病気は誰にでも起こり得るので健康な人にも是非読んでほしいと思った。人間として確立して生きるためにも、周りの不安症への理解を深めるためにも。

    「かくあるべし」が根底にあることで「かくある」とのズレが生じるほどに葛藤が生まれる。「かくあるべし」にとらわれてしまい現実から逃避している。そして不安は増大する。
    生の欲望は生まれた時からみな持っているものだが、成長過程で各々変化する。赤ん坊の時は痛ければ泣く、楽しいなら笑う、というただの生き物としての生存のための行為を行う。この時期の病気も、感染症や外部からの損傷(切り傷等)といった動物と変わらないものであり、精神的な病気になることはない。精神的に病気になるのは、家庭での躾や暮らしと、外に出ることによる競争心の発達や規律などによる(学校が良い例である)。
    性格は後で変わる。変わらないのであれば神経症が治ることはない。

    不安は異物として取り除くのではなく本来存在すべきものであるので認める。例えば「話しかけられて嫌われたらどうしよう」という不安と「仲良くなりたい」という欲望は同時に生まれる。その時に不安をとるのではなく、不安を認め持ちつつも目的本意である欲望をとることが、あるがままである(と解釈した)。不安と欲望は両立する。誰しもが持っているものである。
    自分に都合が悪いことを勝手な理由付けにして自分を正当化すると、自分をさらに苦しめ、他人にも迷惑をかける。これは合理化でありはからいである。

    不安神経症の人は、生への欲望が強すぎるのである。事実をそのままの姿で認めること、自己否定的欲求をそのままにしながら自己実現的欲求を従い実行することがあるがままであり、人間が進歩し、豊かで自由に生きられる。

  • 難しそうに見えたけどとても読みやすかった。
    何かにとらわれてしまった時の日常へのアプローチの仕方がわかりやすい。
    何はともあれこの著者が素敵。

  • 良書。森田療法について書かれてある本を初めて読んだが、これは分かりやすい。というか、難しく文で書かれているとこもあるのだけれども、それがまた真理をついており、グッと心に響く。付箋を用意するか、メモ用紙を用意して読むことをお勧めする。

  • 自分がお客さんと話したり、人前で話すと顔汗が止まらないメカニズムがよくわかった。

    人には「かくあるべし」と言う強迫観念と、「かくある」と言う等身大の自分自身のギャップが過大になると「自分はダメな奴だ」と思ってしまう。

    ギャップが大きくなると、その緊張による精神交互作用のメカニズム(自分の場合発汗)が過剰になり、本来すべきこと(お客さんや聴講者に物事を伝えること)をそっちのけにして精神交互作用ばかり気にして負のスパイラルに陥り、その場から逃避する行動に出てしまう。

    これを解消するためには、自分自身の2面性を知り、精神交互作用が自分特有のことではない「あるがまま」であると理解することが重要となる。

    2面性とは、「プレゼンをうまくこなして伝えるべきことを伝えたい」と言うことと、「もし汗かいて変な目で見られたらどうしよう」と言うことである。そして、前者の方が重要であることを心から理解することが必要不可欠である。

    また、汗をかくことが普通のこととして受け入れ、前者のことに没頭すれば、人間が一方に注意を向けるならば、必ずもう一方の注意は不鮮明になると言う「注意の法則」から、負のスパイラルを何時の間にか断ち切ることができる。

    このことをある程度理解し、何度も「あるがまま」になれるように実践することが重要である。

    実際にできるようになるかまだわからないが、ここまで細かい説明を読んだことはなかった。

    今後実践してみて少しずつ改善できるように努力したい。

    以上備忘録。

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著者プロフィール

1931年、東京生まれ。上智大学卒業後、早稲田大学文学部大学院で美学を学び、さらに東京慈恵会医科大学を卒業。専攻は、精神医学、精神病理学。医学博士。1986年5月、本書の刊行直前にがんのため逝去。『立場の狂いと世代の病』(春秋社)など著書多数。

「1986年 『森田療法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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