言葉と無意識 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061488717

作品紹介・あらすじ

現代思想の問いは、言葉の問題に収斂する。世界を分節し、文化を形成する「言葉」は無意識の深みで、どのように流動しているのか?光の輝きと闇の豊饒が混交する無限の領域を探照する知的冒険の書。

感想・レビュー・書評

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  • p28 「読む」ことはまた「創る」ことであり〜アルキメデスが〜比重の原理を発見したのではなく創った〜ロゴスにもとづく理論は〜壮大な虚構の想像なのである。
    p72 〜語の反復可能性故に対象や意味の自己同一性が錯視されるのである。〜自存的・超越的<意味>の否定〜<意味>とは〜辞項間の<差異>からしか析出されない、〜テクストのなかにおいてのみ生ずる〜
    p74 〜ラング化される前のランガージュは象徴作用が生ずる現場の〜そこで絶えずゆれ動く差異は〜既成の観念や事物の代行・再現物ではない。
    p135 私はもう一人の他者である〜<我思う>と言うのは誤っている。<非人称の誰かが私において考える>〜
    p140 「ノーマルな人間は主語の〜、古論理的思考を行う精神分裂病者は、述語の同一性にもとづいて同一性を受け入れる」〜イエスと葉巻の箱とセックスの同一視〜
    p231 いかなる現象にも<意味>を探そうとする表層のロゴスは、人びとを真面目にさせ息詰まらせる。まじめな人間は事物の背後にありもしない宝探しに血道をあげて、文化という美しい虚構を楽しむことを知らない。

  • 『ソシュールの思想』など日本のソシュール研究のたぶん第一人者である丸山圭三郎が「言葉」と「無意識」について切り込んだもの。1987年の著作なので、ずいぶんと古いが、非常に魅力的なテーマのように思えたので読む。

    だが、やや期待外れ。たとえばソシュールのアナグラムを高く評価するが、共感できない。ラカンの「言葉こそが無意識の条件である。言葉が無意識を作り出すのだ」という言葉を紹介しているが、その主題となるべき無意識のテーマへの切り込みが浅いという印象を受ける。最近読んだジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』にも通底するような無意識に関する新しい視点が得られるかもなという期待もあったのだが、少なくともその点はダメだった。

  • 多くの引用と共に、自分の考えが述べられているようである。
    言分けという概念が、見分けという概念の対立概念として出てくるが、その定義が書いていない。言分けがもたらした文化の説明、言分けの説明に便利な逆ホメオスタシスの説明はあるが、その説明のどの部分が言分けであるかの説明がない。

    また、多くのフランス語やドイツ語などカタカナで書かれた語が出てくる、著者の博学ぶりが伝わる書き方がされているが、著者の言いたいことは伝わってこない。エピステーメーとして、ある分野においてははっきりと定義され共通認識がある語として確立しているからこそ、カタカナで示しているのだと思うが、哲学や精神分析学の門外漢たる私には、意味が分からない。ちゃんと説明をしてほしい。
    同様にたくさんの論者を引用していて、多くの学者・哲学者・精神分析者・臨床心理学者の支持が得られる主張をしていることが分かる。ただ、それらの論者が、言葉を同じ意味で使っているのかについて、読者には知るよしもない。原著にあたってみないといけないだろう。彼らが何を根拠にそのような主張をしたのかについて、私はまったく知らないため、名前のすごそうな感じによって誤魔化されるか、あるいは、一旦根拠のない主張として受け取っておくしかない。根拠について語られることは、本書においては、ない。
    著者は、本書のテーマとなっている無意識という語をフロイトの用いたそれとは違う意味で扱うことを宣言していて、それには定義や説明をしっかりとしている(だから、無意識について書かれている本として本書を手に取った人にとっては驚き、だまされたと感じることもあるだろう)。精神分析の立場で書かれた文章を引用するならば、それはかなり慎重を期さねばならなかっただろう。そうしているのだろうとは思うので、それは信用するしかない。

    多くの引用が在り、たくさんのタームあるいはジャーゴンによって論が構成され、知的に深いレベルの議論がなされていることが感じられる。だが、それが人の生き方や考え方というレベルへと下りてくることが非常に希である。人が使う言葉と人の無意識についての議論がされているはずなのだが、それは言葉の上で示されるに留まることが多い。流動的に姿を変える、分節化しにくい私たちの一面を説明しているはずなのだが、言葉のみが上滑りしている印象を受ける。ロゴスにより表層構造をなぞるだけの本書は、深層構造にある分節化される以前の私たち人の本質に迫れているのだろうか。
    「一般的に人は」と書かれる内容、著者の友人である会社経営者の言葉は、どれだけの人を納得させられるものなのかは分からないが、少なくとも私にとっては実感のない事例となった。そして、一般人に対する著者の理解は、確かめようと思えば確かめられることでありのだが(心理学の領域ではそれをしないで語ることは許されない)、確かめることはない。

    ただ、ソシュールの人生の足跡と業績について書いた部分はすごく面白くて、ソシュールについてもっと知りたいと思わせる魅力があった。

    以上を総括すると、新書として出すべき内容とは言えない。単体ではほとんど意味が分からないので、評価できない。被引用者について知っていないと、そもそもの主張を理解しがたいし、都合良くつまみ食いして自分の主張を裏付けている可能性を排除できない。ラカンやドゥルーズ、ソシュール、クリステヴァ、バフチン、フロイト、ユングといった大物をちゃんと理解している人が、丸山氏の一連の著作との関係において読むのが楽しみ方であろう。

  • 「言葉はどうやって習得されるのか」この本を読んで、改めて考えさせられた。
    概念説明などはやや専門的でわかりにくいところもあるが、筆者が遭遇した電車内での子どものエピソードは実に微笑ましい。「ママ、デンシャって人間?お人形?」

    こんな素朴な質問が言葉の概念の真髄を言い得ているのではないだろうか。「人間=動く、やわらかい」「人形=動かない、固い」、じゃ「動く&固い デンシャはどっち?」 という質問になるわけだ。幼い子どもの質問を意味のないこととしてしまうのは簡単だが、新しいカテゴリーの理解に困難を伴うというプロセスは語学習得を考える上で、必要な観点だと思う。

  • 読む前は4章「無意識の復権」に興味があったが、ラカンに絡めての説明のため、挫折気味になりつつなんとか読み進めた感じ。
    動物と人間の差異を知ることによって何が明らかになるのかどうかは自分はよくわからないが、どうもにもうまく理解できなかった。

    最終章は新書らしくてよかった。

  • 第一章が難しかったけれど第二章からついていけました。なんとか。総じて、この本は言語学者で構造主義の父と呼ばれるソシュールを中心にした言語論です。それもチョムスキーなどが扱う表層の言語論ではなくて、言葉の生まれる深淵までをも覗きみるタイプの言語学のやり方です。無意識の言語化っていう話が本書の結論部分にでてきますが、ぼくも数年前にユングを読んでそこに気づいていて、あらためてこの考えを深める契機となりました。無意識を意識化していくことによって、日常生活や幼少期に受けてきた抑圧から、自らを解放することができるのではないか、という考えです。そうすることで、ストレスなどの多い現代において、精神面で病んでしまうことが減るように、もっと言えば、病んでしまった心が癒えるように、とする考えです。

  • 【2020年度「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
    森田英章先生の推薦図書です。

    <推薦理由>
    言語とはなにか、という問題を正面から扱っています。私の講義を受講された学生さんには「耳にタコ」の「言語運用」という概念の基盤をなすものです。私も大きな影響を受けました。

    図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
    https://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00058551

  • ソシュールのアナグラム研究と無意識の繋がり

  • ――ランガージュ[言語活動]は、ラング以前の象徴性の活動として、音声言語に先立つアルシ・エクリチュール(音声の代理ではない根源的文字、トーテム記号など)やコードなき舞踏としての身振りとも深く関わっている。(中略)そしてアルシ・エクリチュールと同様に、身振りは、象徴作用が生ずるプロセスの形とともにリズムを示していて、観念の代行・再現物ではない。文字も身振りも、ともにランガージュとしての、一切の指向対象をもたない<差異>なのである。(『言葉と無意識』丸山圭三郎)

  • 難しかった。
    もう少し歳を重ねたら、また読んでみたい。

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