はじめての構造主義 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061488984

感想・レビュー・書評

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  • 構造主義のこれ以上ない入門書。『寝ながら学べる構造主義』も読んだが断然こちらがオススメ。中高生のうちにこれを読んだ人が羨ましい。

    第1部はレヴィ=ストロースの伝記とソシュール一般言語学の系譜。ここは他の本と大差ない内容だが、構造人類学の方法論の記述はかなり詳しい。本書は中高生向けに特別易しく書いてあるらしいが、橋爪大三郎の文章は本当に読みやすい。

    そして本書の白眉は第2部、構造主義のルーツ。構造主義の入門書でよくあるのが、ヘーゲル→マルクス→サルトルの近代哲学の流れを概説した上で構造主義の革新性を説くもの。これも興味深いが、そもそも実存主義に至るまでの哲学の流れが非常に難解だし、ゴリゴリの哲学と言語学、人類学の対決というとどうにも話が噛み合っていない印象を受ける。本書の最もすぐれた点は、これとパラレルに展開する数学史(あるいは、西欧の知の歴史)の流れから構造主義を語るところだろう。
    ここで下手くそな要約を垂れ流すのは無意味だろうから、是非とも橋爪先生の文章で読んでいただきたい。キリスト教の凋落に伴う科学の隆盛、中高レベルの数学・物理の成立史、そしてその根本を揺るがす非ユークリッド幾何学の登場、「数学は哲学」たる所以の現代数学。一つ一つの物語それ自体が冒険活劇のように面白く、それでいて構造主義の解説としてこれ以上なくピッタリくる。久々にこんなに面白い読み物に出会った。
    すっかり説明してしまった後で「これまで構造主義を紹介した人びとは、ソシュール以来の言語学とのつながりを、少し強調しすぎていたようだ。」(185P)と締める。橋爪先生カッコよすぎます。

    あまりにも良い本すぎて、中高生のうちに読んでいればと悔しい気持ちにさえなった。良い本の証だろう。
    一方で、こんなにわかりやすく解説されてしまうと、なんだ構造主義ってたったこれだけのものなのか、という気にも。内田樹の方の本にも、そういえば現代社会で構造主義は当たり前になりすぎていてもはや意識されることは少ないとあった。
    むしろ「たったこれだけの」考え方に衝撃を受けた近代主義の方が、今となっては驚きだろう。
    橋爪先生はこういう感想までもお見通しなのか、あとがきには「もういちど近代主義にさかのぼっていくというのも、面白いんじゃないだろうか。」(230P)と。いやはや参りました。

  •  なんで読もうと思ったのか忘れてしまったが、構造主義について知りたかったのは確かだ。
     構造主義とはなにかといえば、変換を通して不変の構造を見つける方法だと言えるだろう。ただし、細かい部分は本書を読んで欲しい。
     参考図書にガードナーがピアジェとレヴィ・ストロースを並べた本が挙がっていた。ピアジェは子どもの発達を研究した心理学者だ。未開社会が文明社会に劣っていないのと同じく、子どもも大人に劣っていない。それを思うに、当時の西洋社会では権威の相対化とでも言える大きな流れがあったのだろう。他にもクライエント中心療法を研究したカウンセラーのロジャーズがいる。
     ここからは私事だが、現在、社会福祉の勉強をしている。ピアジェもロジャーズも社会福祉向けの心理学に登場する人物だ。おまけに60年代の公民権運動に端を発するエンパワメントは社会福祉の分野では重要な概念だ。しかし、人類学者レヴィ・ストロースは登場しない。上記の概念を構造主義を中心とした大きな流れとして把握せず、小手先の技術として利用しようとしたことが日本の社会福祉の低迷の一因だと思える。

  • カジュアルな文体で読みやすいが、意図的にやっているにしろ脱線が少し多いように感じた。
    構造主義への理解は深まったと思う。
    特に最後尾に記載されていた通り、思想は批判の積み上げなのだから、それ以前の思想も把握していないと完全に理解できないのに、日本においては、海外の最新の思想を「流行」として断片的に取り入れるモダニズムの延長が根付いているために、構造主義やマルクス主義といった思想について深く理解がなされない、というのは強く感じる点だった。

  • 入門書なのにわかりにくい。でも、何とか最後まで読みました。親族についての考え方が面白かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/246756

  • わかりやすいけど、マルクス主義が何かを事前知識として入れとかなきゃいけない。いわゆる歴史(ヨーロッパ史)至上主義的なのに限界を感じて生まれたのが構造主義なのか。自文化を相対化し、異文化を深く理解する方法論。これに尽きるかなと。

    橋爪さんの本ははじめてだったけど、文体に可愛げのある正直さとユーモアのある表現が隠れていて、読んでいてクスッと笑えた。ポスト構造主義と構造主義の繋がりとか、すごく言葉を噛み砕いて説明してくれるからありがたい。

  • 初めて構造主義を知るにはとてもちょうどよかった。構造主義にも、構造主義以前の思想にも、構造主義よりあとの現代思想にも、自分なりの思想を作ることにも、興味を持てるようなつくりになっていた。

  • 分かりやすいとは言っても読めばすぐ分かるものではないので、何度も読んで理解を深めたい。
    ただ構造主義を理解する上で、数学を取り入れる事はなるほどと感じた。

  • 構造主義を理解したかといえばまだそうとも言えないけれど、好奇心をくすぐられて一気に読めたのは確か。歴史や数学とのつながりはたいそう面白くかった。

  • 自分の勉強不足のため、要旨をつかめませんでした。

    いつか再読する。

  • レヴィ=ストロースおじさん

  • NDC(8版) 116.9

  • レヴィストロースのバックボーンも含めた傑解説書
    おそらくそれまでもあった、一部の人々の精緻な世界の見方を「構造主義」として体系化したことのインパクトは、今では想像できないがおそらく相当なものだったと思う

  • 馬鹿でもうっっすら分かったような..気がする..?
    言語学ぽいと→恣意的に区切った時に見つけられる二項対立の束
    数学っぽいと→置き換え可能なもの集合の中に見られる、不変の共通項

  • 構造主義とはなんだろう?という疑問を持ったので読んでみた。ざっくりと構造主義に関して骨組み的な知見が得られたように感じる。が、同時にまだまだ足りないのでやはり勉強をしなければならないな、とも思う。

  • 内田さんの方がわかりやすい。
    とりあえずレヴィ=ストロースの考え方がどのように生成されていったのか?をまとめた本。
    数学や視点の話などがあり、面白かった。

  • 読んだの10年くらい前なのに、ひっかかる各所で当時の気持ちが思い出されてすごかった。
    自分の興味はずっと、簡略化されるときにはじき出されるようなものに向けられていたのだわ。

  • 構造主義、まだよくわかりません。
    しかし構造主義について知りたいなら読んで正解だったと確信はしています。ブックリストもついてるし、何より興味を持たせるという意味で優れているなぁと。
    なんとなく腑に落ちそうなんだよな、自分の理解があと一歩な感じ。
    とにかく関連書物を読んでいこうと思います。

    次は→町田健 「ソシュールと言語学」

  • 自民族中心主義の色眼鏡があることの意識を促し、それを取り払う助けとなる思想が構造主義だと理解した。競争社会に身を置く、我々現代人にとって一読すべき価値ある本だと感じた。

  • 橋爪大三郎著「はじめての構造主義(講談社現代新書)」(講談社)
    1988.5.20発行

    2021.8.31読了
     1988年に刊行された講談社現代新書のベストセラー。ずいぶん前に買ってずっと読まずに放置していた。最近、田島列島著『水は海に向かって流れる』で、作者の田島列島さんがレヴィ=ストロースを読んでいたことを知り、家にあるそれ関係の本をひっぱり出してきて、あまり期待もなく読んでみたら、これがまた面白い! さすがに高校生には難しかろうと思うが、構造主義を知る上でまさに必読の書だと思う。

     内容はほぼ100%、構造主義の祖と言われるレヴィ=ストロースの解説で占められていて、まさに私にとって打ってつけだった。もちろん、その思想の土台部分にあるソシュールの紹介も忘れていない。意外だったのは、レヴィ=ストロースが代数学から多くの影響を受けていたという点だ。文化人類学と現代数学が影響しあっているだなんて不思議なこともあるものだ。構造主義は一種の方法論だけれども、一体何が何の分析に役立つかなんて実際試してみないと分からないものだ。この世界は意外なところで変に繋がりあっている。

     非常に有意義な読書タイムだった。

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000001923397

  • そもそも構造主義がわからないゼロからの状態だったので、全部知ったときそんなことか、と思った。
    が、言っていふことはかなり高度でこの本は構造主義がどのようにしてできたのかを詳しくのべている。
    構造主義の応用、活用というよりかは「どんなものか」が述べられている。

  • 思いがけずに本書を手にすることになってしまった。橋爪さんの本は過去に何冊か読んでいるが、どれも分かりやすく面白く解説してくれる。本書もそう。本質を理解しているからなんだろうなと思う。構造主義が西欧中心主義を否定する形で出てきたと言う下りは納得感があり、スッと入ってきた。もちろん細部は難解で一度読んで分かるものではないと思うが、こう言う思想があるんだと言う事は勉強になった。しかしフランス人は思想が好きだし、学校でも沢山勉強させられると聞いていたのでまた腑に落ちた感がした。

  • 結構面白くわかりやすい。
    レヴィストロースの、ソシュールの系譜を継ぐ部分と数学的系譜を継ぐ部分はどちらも「構造依存的である」ということを人類学(異文化の説明)に応用したのだろう。と理解している。(言語は「いす」と発音した時、おそらく発声というか音の響きとか考えると同じ「いす」ではないのに私たちはその音をいつも同じ「いす」だと認識できる。数学の方は、じゃんけんで「グーチョキパー」も「きつね庄屋猟師」でも同じルールだと発見できる。それは構造に依存しているから。)
    それで「親族の基本構造」と「神話の構造」を表した。

  • 結局、わかったような気がしたのは、西欧近代化が正とするマルクス主義に対して、「未開」と言われる地では、親族、女性の交換というか、結婚することのルールが、近代西欧が行ってきたことを、とっくにわかって実践していた。
    西欧での真理は、神の真理と数学的真理があるが、これを数学的にレヴィ・ストロースが証明した。
    そして、著者が一番言いたかったのは、日本には地に足のついたモダニズムがないところに、権力に対抗するマルクス主義が入ってきたが崩壊し、ポストモダンへと流れた。しかし、明治に輸入された日本のモダニズム(近代思想〕ではなく、日本は旧世代の思想と対決して、日本が自前で世界に通用する制度と責任の思想を考える必要がある。
    だから、異文化を深く理解する方法論として、構造主義が役に立つから、学ぶべきだ、と言いたいのだろう。

  • 言葉は知っているが、そもそも思想なのか理論なのか……。いちどゼロ地点に戻ろうと手にした本。構造主義の旗揚げとされるレヴィ=ストロースを中心に解説。神話学やら代数学やら、途中、私はなんの本を読んでいるのかと戸惑いつつ、最終ページの「自文化を相対化し、異文化を深く理解する方法論」という一文で、ゼロから一歩ほど踏み出せた気はする。新書一冊で理解できるものではないが、次に進む道しるべとしては最適に思えた。

  • 構造主義にも慣れてきたかなと思い、逆に入門書を手に取ってみた。そしてまだまだ自分は分かってなかったんだなと反省した。言語学や二項対立など既知の知識はもちろん多かったが、新たに知ったことも非常に多かった。本書は主にレヴィ・ストロースを中心に書かれており、〈構造〉とはそもそも何か、遠近法や数学との関係、構造主義に関する思想をざっと知ることができる。やはりレヴィ・ストロース解説の箇所はとても読み応えがあった。難しい箇所もあるが確かに入門者にはうってつけの著作だと思う。ボクももっと構造主義を知りたいと感じた。

  • 「はじめての構造主義」読了。
    先月「lGBTを読み解く クィアスタディーズ入門」を読んだが、LGBT(このように括ること自体が問題でもあるが)の言葉と、その「意味づけ」がどのような変遷を経て結びついたのかを知った。
    その流れで、やはりソシュールやフーコー、アルチュセールと言った人々の本は読まなければ、と思い、早速先日図書館に行き上記の著作やバルト、デリダ、ピエール・ブルデューといった人々の本を借りたが、何故か(笑)レヴィ=ストロースの本だけ手が伸びず、(なぜかはわからないが、デュルケムの本でかなり頭が疲れた経験が妨げた可能性もある笑) 、でも彼の議論がわからないと他の人の議論もわからないかもなぁ、そうしたら本著が構造主義の草分けである彼にフォーカスしているということで拝読した。

    完全に備忘録になるが、この本によるとレヴィ=ストロースの功績は、単純な進化論に立つ西洋思想への批判と同時に未開社会が「非理性的」であるというレッテルがはられつつも、その背後には極めて高度な関係性の婚姻があることを発見したことが一つ。そしてもう一つが神話学の研究を経て、テキストの背後に構造というものが存在すること、つまりテキスト自体が「読む」ものにしてしまったことである。つまり、真理なるものがはじめから存在しない、ということである。

    このように簡潔にまとめてしまったけれど、人間の「主体性」とか「真理の追求」を信じていた人からすると、レヴィ=ストロースの議論がいかに衝撃的だったのかは想像を絶する。頑張って梯子を登っていたけどいきなり風で梯子ごと落ちるみたいな。

    いま、フーコーの本も同時的に読んでいるけれども、ソシュール・レヴィ=ストロース・フーコーの流れを考えると先ほど申し上げた「LGBTを読み解く」の言っている意味が腹落ちする、

    と言った意味で非常に面白かった。

    はじめての構造主義 (講談社現代新書)

  • 思想の本。

    なぜ読んだ?:「リベラルアーツガイド」というHPをサーフィンしていた時に、構造主義の記事を見つけて興味を持って。

    感想:言語学から人類学への思考法の適用!西洋に根付いていた実存主義と対立!真理なんてない、全ては制度だ!物事の裏に隠れた、それを生み出す"構造"を見つける!といった内容に惹かれた。
    進化学や進化心理学的な考え方を学び、自分は少し機能主義的に考えていた部分があったかも。
    この本を読んだのち『ミッドサマー』を見に行って、レヴィ=ストロースの『構造人類学』のインセストタブーの話や、唯ひとつの真理なんぞなくて真理は“制度”であって可変であるみたいな話との関連性を考えられたのが面白かった。
    構造主義のルーツに遠近法や群論があるという説、他分野とのコラボって感じがして好き。ある地域の神話の全体を変換群とみなして、変換しても不変なものを<構造>として取り出す。
    自分が好きな、「ある分野の思考法・手法を他分野に適用して新たな視点・知見を得る」ということ(要はアナロジー)の実践の様子が沢山見れて面白かった。

    今後の展望:構造言語学や音韻論についてより詳しく知りたい。ソシュールの一般言語学。記号論も。あと、ついでにチョムスキーの生成文法についても興味が出てきた。そのため、言語学のそれぞれの分野がどんなことをやっているのかという言語学概論的な本が読みたい。

  • 構造主義の背景にあるもの。
    歴史の変化、相対化。
    現代数学の発展。
    よく分かった。

    近代思想に対する強烈なカウンターパンチとしての構造主義。
    市民から思想を立ち上げることができるか。

  • 構造主義、レヴィストロース、という言葉や人物くらいは知ってるけど、そういや構造主義が何なのか全くわからない…というような私のような人が最初に読むのにいい本。
    堅そうななりをしてすごくわかりやすい。わかりやすいがでは構造主義とは何か、と聞かれても説明が難しい。中世近世と切り口を変えた比較論から導きだされる、人間の主体性の否定?何か違う。
    構造主義を説くには構造主義だけを語ることはできず、というわけで中世思想からの流れも説明されているが、これもよかった。先に読んだデカルトもあり、こういう思想に沿ってるのか!と納得。これを踏まえて方法序説を再読しようかな。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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