はじめての構造主義 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784061488984

感想・レビュー・書評

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  • 構造主義については100分de名著で扱われてから気になっていた学問。それを、こんな私にも理解しやすい言葉で表現してくれる学者だな、と思っていた橋爪大三郎が解説。やはり分かりやすかった。構造主義のプリコラージュについては、大きく言及されてなかった(理解が及ばなかった)から、もうちょっと調べたい。神話の章は、再読したい。親族に関する内容はかなり興味深かった。
    最後の章に言及されていた"日本的"という部分、もう少し突き詰めて考えてみたい。日本は思想を輸入しては分かった気になっているだけなのかも。
    思想と宗教に関して、もう少し詳しく勉強しないと、やはりスッキリしない。自分のモノになった感じが、まだしない。

  • ◯事前知識
    ・構造主義
    人間やイデオロギーなどあらゆる現象を細分化し、客観的で普遍な構造を追求
    例:人間(男と女)

    ◯1章:構造主義とは何か
    ・火付け役(構造主義の四天王)
    クロード・レビィ=ストロース -> サルトル(マルクス主義)と論争
    ラカン
    フーコー
    アルチュセール

    ・構造主義とは何か
    歴史や西欧的な人類学を否定し、もう一度位置づけ直す。

    現代思想(ポスト構造主義を含む)は構造主義を通ってきている
    《マルクス主義→構造主義→ポスト工場主義》

    ◯2章:レビィ=ストロース
    ・レビィ=ストロースに生い立ち
    ベルギー生まれ
    哲学を学ぶ
    人類学に転向、3年間ブラジルに渡る(よくフィールド調査をする)
    戦争の後、アメリカへ亡命
    言語学者ローマン・ヤーコブソンと出会う

    ・レビィ=ストロースが長年抱いていた疑問
    「機能主義人類学のように親族を捉えていくだけでは、少しも原住民の魂に迫ったことにならない。」
    機能主義人類学:全て機能で説明しようとする。AがBのために役に立ち、BがCのために役にたつという様に目的/手段の連鎖が一列に並んでいる考え方。
    近親相姦や親族呼称など機能主義人類学では説明できない謎がある。

    ・ヤーコブソンによる解答(解決方法)
    ソシュールの言語思想

    言語学者ソシュール
      印欧祖語の母音の研究で有名
      しかし、言語の歴史的研究ではなく、人間と言語の深いつながりの秘密を明らかにしようとした
      言語はまず体型(日本語、英語など)があり、音(シニフィアン)と意味内容(シニフィエ)で成り立つ
      言葉が指すものは、世界の中にある実物ではなく、社会・文化的に決められているだけである

    ・レビィ=ストロースはソシュールの言語思想の中の音韻論を人類学に応用
    「親族の基本構造」という書物を出版。
    内容は「親族は女性を交換するためにある」という仮説を実証するもの。
    モースの考えに影響される→近親相姦など「交換するからタブーである」(社会関係が関係する)
    交換すること、言葉を話すことが「人間らしさ」
    論文集「構造人類学」を出版
    これが人類学だけにはとどまらず、大きな影響を与えて「構造主義」が知られるようになる
    〜ここからは「後期のレビィ=ストロース」といわれる
    神話学に没頭
    人間精神の隠された<構造>を研究
    神話学とテキスト(聖書など)を代数学的操作をすることで解体して、本来テキストが言いたいこと(神のお告げ)ではなく、本当の<構造>を探った
    マルクス主義も「資本論」や「共産党宣言」などのテキストがあることから、なしくずしに成立しなくなる
    これによって近代ヨーロッパの知の伝統を支配した、主体の形而上学がいよいよ解体していく
    では神話学の<構造>とはなにを指すのか→3章へ

    人類学者モース
      「価値があるから交換する」のではなくて「交換するから価値がある」

    音韻論とは
      言語学・・・音韻論、統語論、意味論に分けられる
      音韻論・・・音韻音は言語がどんな音から成り立っているのかを明らかにするもの
      統語論・・・文法
      意味論・・・意味

      音素・・・日本語をローマ字にした時に一文字にあたる
      音(素)が似ているからといって、意味が似ている訳ではない(例:inuとisu)
      どういう音からできているかではなく、人々がどう区別しているかが大切

    ◯3章:構造主義のルーツ
    ・構造主義に至るまでの思想上の系譜
    遠近法と構造主義を結ぶものが数学
    遠近法→射影幾何学→ヒルベルトの形式主義→ブルバギ(数学者グループ)の<構造>→レビィ=ストロースの<構造>
    遠近法は見る場所・時間によって物体が違って見える
    射影幾何学とは図形がスクリーン上にどのように表れるかを研究する学問
    視点を移動すると、図形は別の形に変化する。それでも変化しないような性質のものを<構造>とよぶ。
    <構造>は図形の本質のようなもので目に視えず抽象的なものである。

    ・神話学の<構造>
    <構造>と(数学的な)変換とは、裏腹の関係にある。
    だから、神話に<構造>があると考えるのと、神話はつぎつぎ変換されていくものだと考えるのとは、一緒のことである。
    レビィ=ストロースは主体の思考(ひとりひとりが責任を持つ、リセ的で自覚的な思考)の手の届かない彼方に、それを包む、集合的な思考(大勢の人々をとらえる無自覚な思考)の領域が存在することを示した。それが神話である。神話は、行っての秩序 - ここの神話の間の変換関係にともなう<構造> - をもっている。この<構造>は、主体の思考によって直接捉えられないもの、「不可視」のものだ。

    ◯4章:構造主義に関わる人々
    ミシェル・フーコー(1926-1984):哲学者。レビィ=ストロースの構造主義に、歴史を持つ社会に対しての説明を付加した
    ルイ・アルチュセール (1918-1990):フランスの共産党員。マルクス主義の資本論を構造主義の手法で読んだ
    ロラン・バルド(1915-1980):フランスの記号論の草分けのひとり
    ジャック・ラカン(1901-1981):フランスの精神分析学者
    ジュリア・クリステヴァ(1941-)
    ジャック・デリダ(1930-):ポスト構造主義

    ◯5章:おわりに
    構造主義とは・・・自文化を相対化し、異文化を深く理解する方法

  •  
    ── 橋爪 大三郎《はじめての構造主義 19880518 講談社現代新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4061488988
     
     Hashimoto, Daisaburou 社会学 19481021 神奈川 /東京工業大学名誉教授
    https://booklog.jp/search?keyword=%E6%A9%8B%E7%88%AA%E5%A4%A7%E4%B8%89%E9%83%8E&service_id=1&index=Books
     
    …… (19681021)20歳の誕生日に全共闘と共に新宿駅のターミナルを
    通過する貨物列車襲撃を起こしたためマイ・シティビルの東口にあった
    窓から逃げれたものの仲間のように逮捕されかけた。日本福音ルーテル
    教会の教会員(信者・クリスチャン)。(Wikipedia)
     
    …… 主体はサブジェクトの語義からわかるように、神の下に置かれて
    いたが、ルネサンスの人文主義のもと、文字通り「主体」としての地位
    を獲得する。
    https://blogs.yahoo.co.jp/soko821/9810561.html
     
    …… 自然は円筒形と球形と円錐形によって扱い、総てを遠近法のなか
    に入れなさい(セザンヌの言葉)。出典未詳
    https://blogs.yahoo.co.jp/haru21012000/11328867.html
     
    〔序〕 近代以前 ~ 印象派の出現は、芸術の“絶対性”を主張した ~
    〔破〕 セザンヌの静物画 ~ 歴史を変えた四つのリンゴ ~
    〔急〕 他律から自律へ ~ 高校文芸部の後輩に教わったこと ~
    http://q.hatena.ne.jp/1526133650#a1267526(No.1 20180514 14:00:31)
     
    http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/search?idst=87518&key=%B1%F3%B6%E1%CB%A1
     遠近法
    https://twilog.org/awalibrary/search?word=%E9%81%A0%E8%BF%91%E6%B3%95&ao=a
     
    (20180515)
     

  • 軽やかな語り口で構造主義が分かる。
    この手の入門書は「一冊読めば分かる!」みたいな顔をするが、この本はレヴィ=ストロースに多くを割くなど、自覚的に入門書たろうとしており、多くの本が紹介され今後の学習につながるよう工夫されているのに好感が持てる。

  • 構造主義とは以前から名前だけ聞いていたが、つかめていなかった。池田清彦など構造主義生物学なるものもあって関心があった。歴史からの解放こそ現代的な思想ということだろうか。そもそもそれ以前の思想には生物学由来の進化論の影響が大きいわけだが、生物学は今も進化論が基本になっている。構造主義生物学が何を言いたいのかはなんとなく想像ができるようになった。
    古代ギリシャ哲学に少し触れて感動していたが、現代にはやはり現代思想こそふさわしいのは当然で、時間はかかるだろうが学んでいきたい。

  • レヴィストロースの親族、神話研究の概要が理解できた。構造とは 視点を変えても 変わらない本質。視点を変えて 見て、視点の差異を無視することで 構造が浮かび上がる

    構造は目に見えない抽象的なもの 。数学の話が 構造主義の理解に役立った。少し 構造主義が見えてきた

    未開の地の親族の基本構造について、結婚は交換であり、近親相姦が否定されて 初めて社会が広がる という文章には 驚いたが、未開社会の集団思考の自然調和から 見出されたシステム と理解した。利害や必要に基づくシステムではなく、交換のための交換に基づくシステム。

  • 『デリダ』を読む前に前段階として読みました。

    そうした「おさらい」で読むには、ちょっともったいない内容で、構造主義というよりもレヴィ=ストロース入門といった感じでしょうか。新書でここまでできるのであれば、分厚い本って何だろうという感じがしないでもない。

    ぼんやりしていた理解度が一気に高まる。素晴らしい。

  • 覚悟していたよりは易しく書かれていてほっとしたけれど、やはりさっぱりわからなかった。が、構造主義の、この字くらいはぼんやり見えたような。 未開の部族でも現代人も思考が進化したというより、共通した構造があるということ?え?違う?

  • ・宇宙論か仏教関係の本を読んでいて勉強しようと思ったが、何も覚えてないので難しかったんだと思う、二度目読書中。1回目読んだときに響かなかったところが、2回目読むとかなり異なる気づきを得られることが多い。(この本だけではないが)、ただ、結局構造主義がなんであるか理解できるレベルにはならなかった。
    ・西欧近代は、知らず知らずのうちに、東洋やいわゆる「未開」の社会を、劣ったもの、自分たちより遅れたものとみなしてきた。それがどんなに根拠のないことか、はっきり示せるのが構造主義である。
    ・人間の人間らしいあり方は、これまで西欧近代が考えてきたより、もっとずっと広いのだ。今まで片隅に追いやられ、正当な光の当たらなかったところにも、いくらも人間的な文化のしるしを見つけ出すことができるのだ。こう、構造主義は主張する。
    ・日本人はふつう、世界が「山」や「水」や「ナイフ」や「犬」や…からできあがっていると信じている。しかし、それは、日本語を使うからそう見える、ということにすぎないらしい。英語だとか、他の言語を使って生きてみると、世界は別な風に区別され、体験されることになるだろう。つまり、世界のあり方は、言語と無関係ではなく、どうしても言語に依存してしまうのである。われわれはちう、言語と無関係に、世界ははじめから個々の事物(言語の指示対象)に区分されているもの、とおもいがちだ。ところが、そんなことはないので、言語が異なれば、世界の区切り方も当然異なるのだ。
    ・シーニュ(記号)=シニフィエ:「犬」という記号が言わんとする意味内容+シニフィアン:「犬」という記号を成り立たせる音のイメージ(ソシュール)
    ・三すくみ(じゃんけん)の関係は、変換の一種である同型写像によって保存される、<構造>だ。ここでも、写像と<構造>とは、やっぱり裏腹の関係になっている。このように考えると、ジャンケンの仕組みを理解するのに、「紙が石をつつむから、パーの勝ち」というような説明は、あまり関係ないことがわかる。三すくみということだけが大切で、「紙が石をつつむ」とか「キツネが庄屋を化かす」とかいうのは、ことがらの表層(<構造>に関係ない、どうでもいいこと)にすぎない。そういう表層にとらわれないで、いろんなジャンケンのの間の変換関係を調べ、その<構造>をとりだすのが大切である。
    ・ゲーデルの不完全性定理:数学が完全であることを、その数学自身によって示すことはできない
    ・要するに、オーストラリアの原住民の結婚のルールは、抽象代数学の、群の構造とまったく同じものなのだ。
    ヨーロッパ世界が、えっちらおっちら数学をやって、「クラインの四元群」にたどりつくまでに、短くみても二千年かかった。つい最近まで、誰もそんなもの、知らなかったのである。ところが、オーストラリアの原住民の人々は、誰にも教わらないでも、ちゃんとそれと同じやり方で、大昔から自分たちの社会を運営している。先端的な現代数学の成果と見えたものが、なんのことはない、「未開」と見下していた人々の思考に、咳回りされていたのだ。
    ・レヴィ・ストロースは、主体の思考(一人一人が責任をもつ、理性的で自覚的な思考)の手の届かない彼方に、それを包む、集合的な思考(大勢の人々をとらえる無自覚な思考)の領域が存在することを示した。
    ・構造主義-自文化を相対化し、異文化を深く理解する方法論-

  • 「構造主義といえばレヴィ=ストロース、レヴィ=ストロースといえば構造主義」というのは知っているけど、「じゃあ、構造主義ってなに」という素朴な疑問に応えてくれた本。〜主義って言うわりには、イデオロギー的な重さはなくて、思索の方法論のような感じがする。とはいえ、単なる思考ツールでもなく、ひとつの思想ではあるのだろう。こや構造主義に至るまでのメジャーな思想もいろいろおさらいしてくれるので有難い一冊。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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